やっぱり富士が見られない!!  第一話
作:大谷 時江美






楽屋落ちコメディシナリオ:「やっぱり富士が見られない!!」パート1
           出演   主人公 :じぇみ
                副主人公:砂時
                脇役1  :しんじ
                脇役2 :エミリア
                脇役3 :アザゼル
                脇役4 :芹沢
                脇役5 :清文
                (エントリー順)


歌     : うちの道場〜♪いそうろう♪
しんじの修行〜♪じゅせんきょう♪
水をかぶると〜 男になっちゃうふざけた体質!!
堕天使アザゼルの目の前に現れた雪女砂時♪
悲しい嬉しい物語〜♪


『水をかぶったアザゼルの目の前にじぇみが現れて・・・!?』

(という文字が画面一杯に現れる。その文字が消えて行くと……)

ナレーション:時は一九九九年七月。
その日、空からアンドラゴラスの大王が舞い降りた。
……それ以来、人類は時空のゆがみに巻き込まれ、コータムリープと呼ばれる
不可思議な現象が地球のあちこちで見られるようになった。

しんじ   :(周りは雪) うーぶるぶるぶる。こんな薄着してくるんじゃなかった。
芹沢    :ぶわかもん! 修行のためじゃ、根性で我慢じゃっ、こんじょーでっ!
       (杖をびしばし当てる)
しんじ   :かんべんしてくださいよ(泣)
芹沢    :おぬしはそれがパターンじゃの! まだまだ根性が足りぬわっ(びしっばしっ)
しんじ   :おれ、会社じゃカリスマ社員として鳴らしてるのに……
       これもみな、コータムリープのせいだっ! コータムが悪いっ!
芹沢    :(あわてて)その名を言ってはならぬっ。
しんじ   :なーんでだよぉ〜? 事実じゃねーかぁ〜。
芹沢    :と、ともかくじゃっ、この山の頂上にある、じゅせんきょーまで登りつづけるのじゃっ。
しんじ   :せめてスーツじゃなく登山用のかっこうしてくればよかったよお。おいおい(泣)。

ナレーション:スーツを着たしんじのずた袋からは二本のストラップが出ている。カリスマ社員としては巨体だが、すでに洋裁の心得があった。しかし彼は、その洋裁で生活をするつもりはなかった。彼らは秘境の中の秘境、ティルス・センターにあるというBlack Sheepを探していたのである。ちなみに麻薬をやり取りする喫茶店の名前ではない。

アザゼル  :(絶壁の上から二人を覗き見て)エモノめーっけ(はあと)

しんじ   :ねーねーねー。ちょっと休憩しよう、ね?
芹沢    :ダメじゃいっ! こんなところで休憩したら、命はないっ
しんじ   :うーん、ねむい〜
芹沢    :寝るなっ寝るんじゃないっ!

アザゼル  :八甲田山ごっこだぁ(はあと)

ナレーション:一方、じゅせんきょーのティルス・センター。じぇみ、砂時、エミリアの三人が見つめる水晶に、しんじと芹沢の姿が映っている。

エミリア  :おねえさん、なんとか助けてあげて……
砂時    :優しいのねエミリア。ここへ来るまでが修行の一つ。助けてあげたら意味がないわ。
じぇみ   :エミリア、砂時、おかーさんに任せなさい。(と言うと、いきなり重機関銃を取り出す)
エミリア  :ママ! あの人を、殺さないで!
砂時    :まさか、エミリア! しんじを好きになったんじゃ……?
じぇみ   :まだ四歳なのに?
砂時    :だめよエミリア! 好きになっちゃダメ!
じぇみ   :だから、四歳だってば。

水晶    :(ビー!)警告します。女が一人、男と一緒にコータム空間から出現。

じぇみ   :だー。まーたあいつらだ……

ナレーション:男と女が何かわめきながら、雪山を走り回っている。ずぐん、ずぐん、ずぐん!
 「ルガーモデルP90DC」と「SIGモデルP210」が火を噴いている。

(効果音) :どどどーーー……

ナレーション:その音は、じぇみたちが観察している山のセンターからもはっきり聞こえてくる。そして、眠りそうになっている芹沢たちの耳にも。

芹沢    :んんん? なだれ……?
しんじ   :かんべんしてくださいよ(泣)
(崖の上で)
アザゼル  :ちゃーんすっ! (ばさっ! 翼を広げて降りて行く)

女     :やっぱり、お腹の子共々、私を消そうって腹ね!
男     :お前が抜いたから俺は咄嗟に・・・
女     :説明しようとしたら左手、ポケットへ入れようとしたじゃないのっ!
男     :それは武器じゃなくて・・・
女     :愛しているのに!!

ナレーション:センターの西にあるアイリッシュの塔から、男女は互いに体をそらしながら、トリガーを連打している。ソニック・ブームめいた音が雪山をとどろき渡る。なんと、男女はなだれの上を巨大なゴキブリで滑り落ちて行く。ゴキブリが雪の中でぎしぎしと鳴いている。生きているのだ。

しんじ   :うわわわ。なんて無茶するんだ。
芹沢    :なにを慌てておるっ。平常心でおれ! (びしばし!)
しんじ   :は、は、はやくここを脱出しましょう!

ナレーション:二人は近くの洞窟に入り込んだ。

しんじ   :クソッ。どうしてコータムリープなんかにコソコソしなけりゃならねえんだ。
芹沢    :お、強気の発言。おぬし、呪われておりながらよくそんなことがいえるものじゃのー

ナレーション:そのとき、洞窟の奥から声がした。

アザゼル  :(にこっ)ティルス・センターにようこそ(はあと)

芹沢    :おお、おぬしは「堕ちし者」。
しんじ   :(頭を抱える)また変なのが出てきたぁ……
エミリア  :アザゼルねーさん! わたしもお迎え〜(はあと)
アザゼル  :うーん。なんかフクザツ……
エミリア  :え?!
アザゼル  :いや、こっちの話(はあと) さあ、芹沢さん、しんじさん、こちらへどーぞ。
エミリア  :こちらへどーぞ(きゃはっ)

ナレーション:芹沢としんじは、二人ともティルス・センターの内部に入り込んでいった。まわりは黄色や青や赤のキューブ型コンピュータが静かに光を放っている。真中に水晶の置かれたカウンター、その奥には大きな地球儀がくるくる回っている。帯がついていて、「ティルス・センター」。USJのパクリであることは明白である。って、ナレーションで言わせるなよな作者さんよ。

じぇみ   :(重機関銃を構えたまま)ようこそティルス・センターへ。

ナレーション:二人の目に映った四人の姿は、アザゼルの黒い翼とじぇみの重機関銃を別にすれば、なんの変哲もないただの「センター研究員」のように見える。エミリアの制服姿はとてもかわいい。その一方で、言い争う男女二人が突然コータム空間から現れる。

男     :お前こそ俺を殺すつもりだろうが! 俺を愛していないのか?
女     :お腹の子供を守るためよ
男     :俺を殺さなくたって子供の命は守られる
女     :詭弁ね!!

(効果音) :びしっばしっばりばり!
ナレーション:カウンターのそばでルガーが火を噴く。対戦車用だけあって、センターはアナボコだらけだ。
(効果音) :がちゃーん!
ナレーション:カウンターが砕け散り、水晶が破裂した。

じぇみ   :あああ!! コータムクリスタルがっ!
砂時    :お母さん! 《空間歪曲の式》が暴走するわ!
エミリア  :(おびえる)おねえさん……わたしたち、死んじゃうの……?
じぇみ   :大丈夫。予備があるわ。でもこれだけではパワー不足……
《双子のクリスタル》を探すのよ。切り裂きジャックに先を越される前に!
砂時    :倫敦にいるという……あの?
じぇみ   :そこにいるアルって記者から情報を手に入れれば……
芹沢    :そこには、Black Sheepがあるのかえ?
じぇみ   :水晶があれば、どんなものでも手に入るわ。
しんじ   :どんなものでも……?
       女の子も?
       カネも?
       Black Sheepも?
芹沢    :(がばっ!)しんじっ! 協力しようではないか!
しんじ   :(独白)うっしっし。クリスタルさえあれば、BlackSheepは取り放題。
       (じぇみに)よし、俺も手伝ってやる!
砂時    :しんじさん、これから大変ですよ。大丈夫ですか。
じぇみ   :優しいのね砂時。でも芹沢仙人、あなたにクリスタルは渡せないわ。あなたたちの野望は知っているのよ
芹沢    :ふっ。そういうことなら仕方がない。われらが先にクリスタルを奪い、望みのものを手に入れてみせるわ!
しんじ   :さすが仙人様!
芹沢    :おだててもむだじゃいっ。おぬしなんぞにクリスタルを渡すものか。あれはわしだけのものじゃ。
じぇみ   :なにをいうの! あれはここにないと地球はコータム空間に飲み込まれるわ!
芹沢    :ふぉっふぉっふぉっふぉっ。地球がどうなろうと知ったことではないわ。
しんじ   :仙人様、かっこいい!
芹沢    :だまっておれっ。おだてておいてあとで盗もうという腹は、もう読めておるわ。あれはわしのものじゃ、誰にも渡さぬ!
アザゼル  :クリスタル争奪戦〜♪
じぇみ   :うるっさい。じゅせんきょーに行って風呂でも浴びてきなさい。
砂時    :こんなときに……お風呂……
じぇみ   :コータムリープをごまかすためよ。しかたがないわ。
アザゼル  :はーい、わかりました〜ご主人様〜♪
エミリア  :わたしも一緒にはいるゥ。
アザゼル  :いい子いい子(なでなで)
砂時    :(内心フクザツ)

ナレーション:アザゼルがじゅせんきょーで水を浴びたとたん、悲鳴が聞こえた。

アザゼル  :わーだーぎゃー!
じぇみ   :どうしたの!

ナレーション:じぇみが駆け寄っていくと、アザゼルは水浸しになり、なんとその黒い翼が消えて人間の男になっていた。

アザゼル  :どーしてこーなるのぉぉぉ?
芹沢    :ふぉっふぉっふぉっ、じゅせんきょーと名乗っておきながら、風呂に入るとはアサハカな。お約束どおり、その水は呪われておるのじゃ〜!
じぇみ   :そのかわり、コータム空間が安定し始めたわ。

(効果音) :ずぎゅーん! どかーん! ずどーん!

ナレーション:なおも名の知らぬ男女が撃ち合いをし続けているが、アザゼルが水からあがったとたん、二人はコータム空間のかなたに消えていってしまった。

じぇみ   :ご都合主義。

ナレーション:悪かったねっ!

しんじ   :そんなところで仲間割れしてないで、とにかく倫敦まで行こうよ。
じぇみ   :そうね、それじゃ倫敦に行くためのコータム空間を越えなくちゃ。
       アザゼルや。もう一度風呂に入りなさい。
アザゼル  :やだっ。
じぇみ   :ぬわんですってぇ。
アザゼル  :……は、はいらせていただきます……

ナレーション:再び風呂にアザゼルが入ったとたん、別のコータム空間が出現した。

じぇみ   :さあ、この隙に!
砂時    :エミリア、いくわよ!
エミリア  :はいっおねーちゃん!

ナレーション:こうして一行は、一路倫敦へ向かうことになった。登場人物たちがどんどんコータム空間に入っていくのを、アザゼルは風呂の中から眺めている。
しんじ   :(コータム空間の向こうで)待ってくださいよぉぉぉぉ、仙人さまぁぁ〜
清文    :はあっはあっはあ、やっとたどりついた……ぼくにもBlack Sheepください……
       あり? だれもいないぞ?
アザゼル  :へ、へっくしょん。
ナレーション:ハクション大魔王は出てこないので念のため。
清文    :(携帯型対地空ミサイルを構え)誰だっ!
アザゼル  :あー、ご予約の方ですね〜ん? もう、みんな倫敦に行っちゃったよん?
清文    :キーッ(アタマかきむしる)それじゃ、追っかけるぞ!
アザゼル  :よぉーしっ。追っかけるぞ〜♪ (二人、コータム空間に飛び込んでいく)

ナレーション:はたして倫敦では何が起こるのか? そこでは富士が見えるのか? やっぱり富士は見られないのか? 数々の疑問を抱えたまま、第一話は終了するのであった。

砂時    :なんか今回、異様に私の出番が少ないみたいなんですけど……
芹沢    :ゴジラになったしんじと戦うんじゃなかったのか?
しんじ   :かんべんしてくださいよ(泣)

じぇみ   :さーて次回の「ヤバ富士」は?

ナレーション:
死んだはずの恋人切り裂きジャックが実は生きていた?
世紀末覇王ゴーントは一縷の希望と強敵(とも)たちの哀しみを胸に、かつての生みの親である砂時に挑む!!
次回「スピンよ永遠に...」
砂時「来週は24時間テレビのためあたしの声は宇多田ヒカルが担当するわよ!」