やっぱり富士が見られない!! 第二話 |
作:大谷 時江美 |
楽屋落ちコメディシナリオ:「やっぱり富士が見られない!!」パート2
副題:「スピンよ、永遠に!」
出演 主人公 :じぇみ
副主人公:砂時
脇役1 :しんじ
脇役2 :エミリア
脇役3 :アザゼル
脇役4 :芹沢
脇役5 :清文
脇役6 :たまき
脇役7 :きぁ
(エントリー順)
(けたたましい電話の音、「真っ白に燃え尽きました〜」と叫んでつっぷす記者、そばでタバコをふかすアルフレッド。そこへ、むにょにょ〜っと黒い穴が開いて、中から大勢の人物が飛び出してくる)
じぇみ :(重機関銃をぶっぱなしてから、)ハスタ・ラビスタ、ベイビー。
砂時 :……(頭を抱えている)
ナレーション :重機関銃で穴ボコだらけになった、資料の山。幸いにもけが人はいないようだ。しかし記者たちはみな茫然としている。一人を除いて。
アルフレッド :(落ち着き払って)だれだあんたら。
アザゼル :堕天使でーす♪
芹沢 :仙人でーす♪
じぇみ :三波春夫でございます。
ナレーション :全員、しらけている。
しんじ :そのギャグ古すぎ。
じぇみ :するどい突っ込み有難う。
ナレーション :そんなふたりを完璧に無視して、新聞社内でラブ・ロマンスが。
砂時 :アル! わたしよ、判る?!
アルフレッド :アンジェラ……? 生きていたのか?!
ナレーション :ひしと抱き合う砂時とアルフレッド。その二人の間を裂くかのように、外でとどろきわたる声が一つ。
清文 :わーははははは。この世界はもらったぁ!
ナレーション :どうしたんだ、と人々が、新聞社の窓からそとを眺めると、巨大なゴリラと化した清文が胸を叩いてわめいている。その肩に乗っているのは、銀色の猫、きぁであった。
清文 :アルフレッドよ! おまえの探す切り裂きジャックは、この俺だ!
きぁ :にゃーん♪ 清文しゃん、すごく素敵だにゃん♪
エミリア :あー。きぁー。じゅせんきょーにいないと思ったら、こんなところにいたんだわ。いらっしゃい、きぁ。一緒にうちに、かえりましょ。
きぁ :やだもん! 清文さまと一緒に、世界を支配するんだもん!
芹沢 :猫に世界を支配されてたまるものかっ! しんじッ! 行くぞッ
しんじ :ど、どこへ……
芹沢 :きまっておろーが。倫敦ベーカー街B221号にある、たまきの秘密基地じゃいっ! サンダーバード1号で清文を叩きのめしてやるわい。
しんじ :サンダーバードだったら、南米のトレーシー島では……
芹沢 :だまらっしゃい。
しんじ :はい。
アルフレッド :切り裂きジャックを倒せるのなら、このオレも連れて行ってくれ。
エミリア :おじさま、あんまり無理なさらないで。
アルフレッド :お、おじさま?!
砂時 :エミリア。
アルフレッド :アンジェラ、この子は……
砂時 :あなたとの……かくし子よっ!
ナレーション :あまりの理不尽さに、一同、呆然とするのであった。
しんじ :砂時、その年齢で? ちょっと無理な設定では……
じぇみ :だまらっしゃい。
しんじ :はい。
アルフレッド :そうか……きみに似て、とても感受性が豊かな目をしてる。
アザゼル :ね、ね、あたしは? あたしは?
アルフレッド :……少年には興味はない
アザゼル :わーん(涙)。
じぇみ :大丈夫よ、水をかければ元に戻るんだから。
しんじ :堕天使に興味持つ男っているのかな?
ナレーション :外では、キングコング清文が、むなしい叫びをあげている。
清文 :おーい、だれか相手にしてくれー
きぁ :あたいがいるにゃん!
ナレーション :さて、一方ベーカー街のたまき基地。
たまき :おーほほほ。マッド・サイエンティストとお呼びッ!
ナレーション :たまきは最新の科学実験に夢中である。汚く中途半端に伸びた黒髪、うつろな目、突き出た歯、そして灰色のローブと杖。ヒヒヒっと笑うその無気味さ。それをながめている男が一人……スピンである。
スピン :教授(ドク)……大丈夫か、その実験。
たまき :おっほっほ。アンドラゴラスのタイムホールを宇宙ひもに結びつけ、加速装置で炭素粒子効果を増幅させる! これがうまくいけば、わたしの長年の疑問も解き明かせるのだ! ひひひ!
スピン :どーでもいいけど、科学用語で説明しないでくれるかなぁ、なんかしらける。
たまき :それなら、指人形で説明しようか。
スピン :いらん。
ナレーション :むにょにょ〜と黒い空間が沸きあがり、中から人々が現れた。アルフレッドをのぞくおなじみのメンバーである。ちなみにアルは、キングコングの取材に出て行ってしまったのであった。アルにはアルの世界がある。無理強いはできないと、砂時もあきらめている。
じぇみ :(コータム空間から現れ)ひとーつ、人の世の生き血をすすり。ふたーつ、不埒な悪行三昧、みーっつ、醜い浮世の鬼を、退治してくれよう、桃太郎侍!
ナレーション :そう言って、重機関銃をかざすが、さすがにたまきは落ち着き払い、
たまき :いらっしゃい。お茶がいいかね、それとも黒ビールかね? ギネスもあるぞえ。
芹沢 :たまき! 久しぶりじゃのお!
ナレーション :ふたりは手を取り合って喜んでいる。よく見ると二人とも、そっくりさんである。
しんじ :師匠が二人……
たまき :おお、芹沢はわしのクローンじゃ。
芹沢 :なにをいう、たまきがわしのクローンじゃ。
たまき :なにをいうか、芹沢にはな、オリジナルのわしにはない、蒙古斑があるのじゃ。
芹沢 :たまきにはな、オリジナルのわしにはない、もじゃもじゃの胸毛があるのじゃぞ。
じぇみ :どっちがオリジナルでもいいじゃないの。
芹沢&たまき :(同時に)よくないっ!
しんじ :し、師匠様……むなしい争いです……
スピン :ほんとほんと。
たまき :しっかし、よくここに来れたもんじゃの。昔の争いをむしかえしにきたのかえ。
芹沢 :たまき、用件をまず言っておこう。なにも言わず、サンダーバード1号を貸してほしい。
たまき :(目つきが変わる)なに、ではまた出たのかえ。
芹沢 :そのとおりじゃ。ゴーントが出現したのじゃ。
しんじ :ゴーントというのは、キングコングの専門用語です。
スピン :ほんとか?
たまき :よし、そうと聞いたらケンカはあとだ。さっそくサンダーバード1号を貸そうではないか。
じぇみ :よーしっ帰りましょう。水持ってきて!
アザゼル :やーん。また水浸し。
じぇみ :しょーがないじゃないの、呪われたあんたとコータム空間は密着してるんだからサ。
砂時 :毎回ぬれてたらかわいそうじゃないですか。みんなしてサンダーバード1号に乗ってかえればいいんじゃありません?
エミリア :ママの言うとおりだわ。
じぇみ :(ひとりごと)うーん。砂時がママで、わたしがそのママということは、わたしはグランマか………(くらっ)
しんじ :ところでサンダーバード1号、操縦はだれが……
スピン :オレがしよう。
ナレーション:こうして一行は、倫敦のキングコングと戦うことになった。しかし清文はそのころには、エネルギー切れでキングコングからゴジラに変貌を遂げていた。きぁはミニラ風の猫である。
清文 :(ゴジラのうなり声)
スピン :まずい、サンダーバード1号は原子力で動いているんだ。ゴジラは放射能を吐き散らす、危険な怪獣だ。その上に原子力攻撃では、火に油を注ぐようなものだ。
きぁ :ひれ伏すすんだにゃー! あがるんだにゃー! にゃーは世界を支配するんだにゃー!
清文 :オレにBlack Sheepをよこせ〜
スピン :Black Sheep! あの、伝説の……
しんじ :どこにあるのか、知ってるのか!
スピン :う、いや、その、あの……
しんじ :オレはおまえの作者だぞ! ちゃんと答えろ!
ナレーション :二人が言い争っている間に、サンダーバード1号は、まっしぐらにゴジラの口の中に入っていく……!
じぇみ :スピン! 早く操縦棹を戻してッ!
ナレーション :スピンは、すばやく操縦桿を握り締めた!
(効果音) :ひゅーーーー! どかーん!
ナレーション :しかし、健闘も空しく、サンダーバード1号は、ゴジラの胃の中へ……!
スピン :う、真っ暗だ……!
清文 :わーははははは……!
きぁ :これで邪魔者はいなくなりましたにゃん! 心置きなく、 Black Sheepを探せるにゃん!
ナレーション :胃の中に話を戻そう。
たまき :ほーほほほほほ。
ナレーション :みなは、絶望に狩られて窓に映る胃の粘膜を眺めている。しかしたまきは元気であった。
たまき :こういうこともあろうかと、用意していたものがあるんじゃ。
「あくびしゃっくり屁こきコントローラー」!
ナレーション :たまきがサンダーバード1号の片隅から取り出したのは、宇田多ヒカルのビデオクリップであった。たまきはそれを、再生機にかけた。
ヒカル :イッツ・オートマーティック! ドク、なにか御用ですか?
ナレーション :その声は、砂時の声であった。みなは注目した。彼女は戸惑っている。
じぇみ :まあ、今回は楽屋落ちシナリオもロング・バージョンの24時間テレビだから、特別にということで……
しんじ :意味不明。
ナレーション :じぇみがなおも言い訳しようとしたとき、ドクはすべてをヒカルに説明していた。
ヒカル :いいですわ、わたくしを胃の中の、神経筋のところに打ち込んでくだされば、あとはゴジラを思いっきりやっつけて差し上げますわ。
芹沢 :そのビデオクリップを、神経筋に打ち込む……それは、ミクロの決死圏じゃのお。生きては帰れないかもしれんのぉ。
しんじ :誰が行くか、だな。
スピン :(長い沈黙の末)、オレが行こう。
ナレーション:というわけで、スピンは宇宙服に着替え、ビデオクリップをもって準備している。
たまき :スピンよ、ほんとうに大丈夫なのだな?
スピン :大丈夫さ! ただ、神経筋にビデオクリップを打ち込むだけ! たいしたことはない。
しんじ :作者をさしおいて、なんて偉そうなんだ。
じぇみ :自分が行きたかったって?
しんじ :じょーだんでしょー。だってこのシナリオの題ってば、「スピンよ永遠に」だぜい? スピンが死ぬんだぜ。身代わりになんかなれねーよ、死にたくない。
じぇみ :手前勝手なやつ。
しんじ :ふんっ。
ナレーション :そして、スピンは胃の中の、神経筋に向かって飛んでいく。神経筋は、三つの筋が、呼び鈴の縄みたいに垂れ下がっている。その筋の集まるところに、スピンはビデオを打ち込んだ。
清文 :うぐ!
きぁ :ど、ど、どうなさったんだにゃ?!
ナレーション:胃の中でビデオが再生される。
ヒカル :イッツ・オートマーティック♪ スピンさん、まずは一番左の筋を引っ張りましょう。
スピン :うーん。これかな? (引っ張る)
清文 :ふわー(あくび)
きぁ :清文しゃま、もうすぐBlack Sheep が見えてきますよ。なに退屈してるんだにゃ?
ヒカル :スピンさん、次は真ん中を行きましょう。
スピン :よっこらせ。(引っ張る)
清文 :へっくしょん!
きぁ :……ひゃーおどろいた! ゴジラのくしゃみで、民家が吹っ飛んだにゃ。
ヒカル :スピンさん、最後に一番右を行きましょう。
スピン :なんだか楽しくなってきたな。(引っ張る)
清文 :ぶー!(屁をこく)
きぁ :うー。くさー……
スピン :(でたらめに引っ張る)
清文 :(くしゃみと屁とあくびが同時に出る)
きぁ :あーん。清文しゃま、百年の恋も醒めますわ〜。なにしてらっしゃるのぉ?
じぇみ :そろそろ、消化がはじまるわ……! スピン、早くして!
ナレーション :スピンはでたらめに引っ張り続ける。
清文 :あー、はくしょん、ぶー!
:あー、はくしょん、ぶー!
ナレーション:くしゃみのところで、胃のなかにあった宇宙船は、風に乗って飛び出していった。スピンを残して……
じぇみ :スピン……あなたのことは、忘れない……
清文 :あー、はくしょん、ぶー!
:あー、はくしょん、ぶー!
ナレーション :でたらめな清文がめちゃくちゃをするたびに、ゴジラはだんだん小さくなり、もとの清文に戻っていった。きぁも当然、猫に戻る。
きぁ :あーん、残念。世界を支配できると思ったのにぃ。
ナレーション :コータム空間が再び現れた。サンダーバード1号は、そのまま黒い空間のなかに飛び込んでいく。清文もきぁも後を追った。
清文&きぁ :Black Sheepをわたせー!
ナレーション:こうして倫敦の平和は保たれた。そう、正義のじぇみたちの活躍のおかげである。アルフレッドは、生き返ったアンジェラへの思いを胸に、今日もありがとうとつぶやくのであった。
じぇみ :さーて、次回の「ヤバ富士」は?
ナレーション:次回予告だ!!!
「ムーンミラクルパワーメイクアップ!」
そのたまきの一言でアザゼルはMrセーラームーンに変身した。
変身シーンを見ていた、タキシード仮面及びしんじは興奮しすぎて、倒れてしまった。
次回「ドカベン ネザースピリット」見てね――――見るな!!