神聖戦記ジャスティネイザー 第二幕 |
作:盆暗 |
神聖戦記ジャスティネイザー
今年で高校を卒業するごくふつーの高校三年生、三剣マモル。
朝目覚めたら体が虫になっていた、という人がかつていた。
しかし、彼に言わせればそれに匹敵するぐらいの事が彼の身に起きていて、
気がついたら、どこかの砂浜で倒れていた。
等価値ではない、と思う。
第二幕「再会」
あの薬を飲んだ後、景色が歪んだ。風呂上りにクラっとくることはよくあるが、今回のような感触は初めてだった。
もしかしたらあれは強いドラッグだったのではないだろうか。
そして自分は今『天国』にいる。
プッと吹き出した。
マモルの目の前にはただひたすら汚い海が飽きるほどに広がっていて、マリオ3みたいな太陽がギラギラと照りつけている。
これが天国?天使もいなければ、神様もいない。
暑い。太陽の高さからいくと、おそらく真っ昼間。
海からは強烈な異臭が放たれていた。低い空を飛んでいるカモメはそれぞれ違う形をしており、羽の形もまちまちだ。
「環境汚染・・・」
太陽光線により、熱くなった学生服を脱ぎすてた。
記憶に支障がないのだとしたら、今の季節はたしかに冬だったはず。
だったらここはどこだ?
海外旅行に行きたいと思うことはなかったが、もしかしたらここはフィリピンで臓器の一つや二つ売り飛ばされているかもしれない。
携帯持ってくるべきだった・・・。
せめて県外かどうかぐらい知れば何かの足しになったと思う。
暑さで物事を正常に考える機能が失われている気がする。
ここはどこなのか?その事を考えようとする彼の思考を太陽の光が焼き尽くした。
とにかく、動こう。
マモルは、立ち上がった。
「?」
ポケットから何か落ちた。
「これ・・・」
あの日、家に届いていたのと同じ黒い封筒だった。中には手紙とどこかの地図が入っていた。
手紙の方を読み上げる。
〜ようこそ、私たちの世界へ!〜
出だしにかなり大きな字で書いてあった。続きを読む。
〜君は私が送った薬の作用により、前に君がいた次元を飛び越え、そして今君がいるこの次元にやってきた。
君の優秀な頭脳なら理解できるはず。そう、ここは平行宇宙の中の一つの世界。一般的にはパラレルワールドといわれているものだ。
君をこの世界に呼びだした理由は二つ。
一つは君を君の父親に会わせるため。偽善的か?
まあ、君がどう思うかは君の自由だ。
そしてもう一つ。それは、君にある仕事をしてもらいたいからだ。
その仕事のことを話す前に君にあることを教えないといけない。
この世界では、ある国とある国がある理由で戦争している。
一つはラクロア、もう一つはエリアルという国だ。
君のお父さんはエリアル軍で科学者として働いている。もちろん無事だ。
君に迎えを派遣している。地図を同封しておいた。とりあえずそこに向かってくれ。
なお、この手紙は、読み終わり次第すぐに消滅する〜
と、読み終えたところで手紙が勢いよく燃え始め、消えた。
結論。
かなり胡散臭い。
もしかしたら自分はどこかの宗教団体に巻き込まれているのかもしれない。父さんも同様に。
別次元。ありえない話ではない、が、あんな薬一粒で飛び越えられるほど次元の壁というのは低いものだったのか?
とりあえず、父さんをそいつらから奪還しなければならない。
ここがどこかを知ってから。
カサカサ。
砂浜から拾い上げたそれはペラ紙一枚のかなりアバウトな地図で、自分の今いる場所と目的地しか記されていなかった。
「自分が今ここにいるから・・・・」
マモルは数分後、自分が進むべき道を導き出し、立ち上がった。
海の反対の数キロ先には街と思われる建物が建ち並んでいる。
「いくか」
物分りよく、マモルは歩き出した。
「はぁ、はぁ、何で、ふぅ、ここは、へぇ、こんんんんんなに、はぁ、あついんだっ!」
マモルは、活字にすると表示しにくい擬音を口にしながら歩いていた。
蝉がうるさいぐらいに鳴いている。発見した。
「怒るとさらに暑い・・・」
マモルはぶつぶつ文句を言った。
目覚めたとき、荷物が何もなかった。飲み物のひとつでもあればかなり楽になっただろうか。
そこにはきちんと道路があり、車が通っていない点を除けばちゃんとした道だった。
気温は今何度だろう?
異常気象といえるぐらいに暑い。
違う次元に来てしまったというのは本当らしい。
あぁ暑い暑い暑い&暑い暑い?暑い暑い暑い!暑い。暑い。暑い。暑い、暑い。
頭が馬鹿になってくる。
今だったら小学校一年生のガキにも負けるかもしれない。
さらに歩き、やっと街と思われる場所に到着した。
「・・・・・」
民家の屋根の下にドサっと倒れこんだ。。
「あちぃよ・・・・・」
そのとき彼の目に信じられないものが飛び込んできた。
銀色のそれ、日光を反射しているそれ。
銀色・・・・水・・・・・冷たい・・・・
無意味な連想ゲームを続けていた彼も、やっと我に返った。
そして獲物に飛びかかる獣と同様に、蛇口に飛びついた。
蛇口を上に向け、蛇口をひねりながら口を付ける。
「・・・」
しかし、そこからでてきたものは、期待していた冷たい水ではなく、鉄の味がする暖かい泥水だった。
少し飲み込んだとたん、体が拒否反応を示し、吐いた。前食べた物が逆流する。
しばらく彼は動けなかった。
吐き気がいくらか過ぎ去り、落ち着いた後、家の戸をたたく。
「誰か、誰かいませんかぁ・・・」
いくらたたいても応答はなく、誰もでてこなかった。
ほかの民家を回ってみても、結果は同じで、一つの結論に思い当たった。
「戦争でここが危なくなって逃げたのか・・・」
マモルは落胆した。
が、すぐに気を取り直し、また歩き出した。
彼は自分は立ち直りが早い方だと思っている。
一つの街を越え、さらに歩いているが、次の街はまだ見えない。
まだ荒れていないアスファルトを、マモルは歩く。
「さっきの街、そんなに日本と変わらなかった・・・」
もしかしたらこの世界と僕がいた世界の次元は結構近い位置にあったのかもしれない。
そしたら、僕の親戚みたいな人もいるかもしれない。
マモルは少し安心したが、その安心もさっきから憎らしいぐらいに照りつける太陽に焼き尽くされていた。
汗が止めどもなく噴き出る。マモルはこの道が永遠に続くような錯覚にとらわれていた。
そのときだった。
「街だ・・・」
マモルは数キロ先に見えた景色に感動した。
あと少し、あと少しだ・・・
マモルは、もう疲れて動けないと悲鳴を上げている体にムチを入れ、さらに歩いた。
再び民家の屋根の下に転がり込む。
「・・・・ゎ」
そして数時間前と同じものが目に飛び込んできた。
「蛇口・・・・」
ほとんど這っているような状態で彼は蛇口に近づき、おそるおそる蛇口をひねった。
気持ちのいい水音と同時に、透明な液体が飛び出した。
もちろん、彼がそれを心ゆくまでそれを飲んだことは説明するまでもない。
もう一歩も歩けない・・・歩いたら足の骨が折れる。
彼はそう心に言い聞かせ、疲れた体を休めていた。
自分のいる位置から見える、おそらく電波塔と思われるもの。地図によるとあれが僕の迎えがいるところらしい。
この街にも人の気配はないみたいだ。
あと少しで父さんにあえるかもしれない。
しかし、動こうとしても体、というより自分自身の心がそれを拒絶した。
あと少しだけ、あと少しだけ休んだら行こう・・・
知らぬ間に、マモルは深い眠りに落ちていた。
「・・・・・・・・むあああぁ!」
彼は再び活字にすると表現しにくい言語を放ち、飛び起きた
「ね、寝ちゃったのか」
太陽はもう沈みかけている。少し日焼けしたマモルの顔がオレンジ色に染まっている
気温は少し下がり、疲れも少しは残っているものの、歩くことはできそうだった。
彼は、また立ち上がり歩き出した。
そして不思議なことに気がついた。
建物が、少しだけ溶けている。
マモルは、一つの結果にた行き着いた。
「酸性雨・・・」
この世界は、かなり環境汚染が進んでいるらしい。さっきの海、奇形のカモメ、泥の水、そしてこの溶けた建物・・・
もしかしたら、ここは近い未来の地球なのかもしれない・・・
そう思うと、少し悲しくなった。
地図によればあと2キロぐらい。
周りの景色が、次第にビル群に変わり、15メートルぐらいの高さのビルが増えてきた。
さっきまでかなり遠くに見えた電波塔も、かなり近くなってきている。
近くでみると、結構小さい。
マモルは、歩き続けた。
大きな交差点に出た。
もちろん人はいない。沈みかけた夕日があたりを照らしている。
誰もいないのに交差点があり、車がないのに道路がある。マモルは少し不思議な感じがした。
「ここを抜ければ、あとちょっと・・・」
彼は、渡る必要がないのに歩道橋をわたっていた。
習慣って怖い。
ちょうど橋の真ん中に差し掛かったところだった。
「・・・・?」
何か耳鳴りのような音が聞こえた。マモルは周りを見回した。
夕日を背に受けて、何かが低空で進んできている。
戦闘機?いや、違う。あれは・・・・
夕日を背に浴びて、こっちに向かってくるそれは、周りのビルと同じぐらいの大きさ。
浮かび上がる人型のシルエット。
そして、この距離。飛来音。
それは、間違いなく巨大な、
「・・・・・・!!」
逃げようと思っても足が言う事を聞かなかった。
ゆっくりと、近づいてくるそれを特等席で見ることになった。
ライブでいうならアリーナ。
巨大な機械の物体が、目の前で滞空した。
「民間人!おい、ここから早く逃げろ!」
人の声だ。あれには人が乗っている。このロボットには人が乗っている。
「ここは戦闘区域だ!危険、」
そして転がるように階段を下りた。
「☆◎⇔√"!$Wーーーー!う、ぬ、ふぁ、げふ!」
いや、半分転がっていた。
とにかく逃げた。必死で逃げた。だばだばにげた。
逃げながらも、建物の陰に隠れた。
夕日を浴びて輝いているメタリックな赤と黒の装甲、右手に装備している銃らしきもの、デカさ。
それはしばらく逃げる自分を見ていたようだが、やがてもとの方向に向き直った。
マザー2のモンスターのようにゴミ箱を被る。
そんなもので身を守れるとは考えてはいなかったが、いかんせん彼は気が動転していた。
彼の格好はかなり情けなかった。まあ見ている人はいないが。
巨大ロボは、背中のジェット噴射を徐々に弱め、ゆっくりと地面に着地した。
そして遠くを見ている(ように見える)。
突然、ロボが銃を前方に構えた!
緊張が走る。
何を・・・何を狙ってるんだ・・・・
ロボットが何を狙っているのか見に行く勇気は彼にはなかった。
それからどれぐらいたっただろうか。
マモルにとっては、その時間が数十分、いや、数時間にも感じられた。
機体を照らしていた夕日が沈む。
同時に、銃口が火を噴いた。
量産型人型汎用要人兵器、ジャスティネイザー。
エリアル軍の兵器に対抗するために、ラクロア軍が昔戦争で使っていたのを再生産した兵器。
それに今、パイロットスーツを着た男が乗っている。
男の名は、ミゲル・アルバート。ラクロア軍第11小隊所属、自称エースパイロットである。
ただいまラクロア軍領地の護衛中。逃げ遅れたと思われる(信じられないことだが)民間人を発見。後、逃走。
沈みかけた夕日が照らしている、誰もいない街を見て、彼は言った。
「誰もいない街ってのは、あんまり気分がいいもんじゃねえな。まったく、電磁フィールドに頼りすぎてっからこんなことに・・・」
その時、レーダーに赤色の点が一瞬だけ映った。彼の目はそれを見逃さなかった。
「こいつは・・・おい!聞こえるか!」
オペレーターが答えた。
「ええ、きこえるわ。なにかあったの?」
「敵を発見。反応は薄いが、おそらく隠れているとおもわれる。」
「了解。増援を送るからそこでしばらく待機・・・・」
「バカいってんじゃねえ!そんなことしてたら逃げられちまう。ヒジリは!」
モニターに青年の姿がうつった。
「ミゲル!悪いが、こちらも交戦中だ!」
「ちっ、なら俺一人で行くぜ!」
そう言い放ち、回線を切った。
「ソナーは反応ありか・・・」
彼はブーストの出力を最小限に抑え、交差点の真ん中に着地し、銃を構えた。
赤色の点が、少しずつ、近づいてくる。
いいぞ・・・もっと、もっとだ・・・・
ミゲルは、グリップを強く握った。
大丈夫。自分の存在は気づかれてはいない。大丈夫だ・・・
夕日が、沈んだ。
発射と同時に、轟音が鳴り響き、辺りいったいのガラスがいっせいに割れた。
「うわああっ!!」
遠くで建物が破壊された音が聞こえる。
とっさにマモルはゴミ箱を被り、ガラス破片の直撃を免れた。
ゴミ箱が役に立った。
そして音がやむのを待ち、恐る恐るゴミ箱をはずす。
そこには前と変わらず、ロボットがいた。
「やっつけた、のか?」
相変わらず、ロボットは微動だにしない。
その時、マモルの目が建物の隙間を移動するもう一体のロボットの姿を捉えた。
瞬間、ロボットが向きを変え、再び光弾が発射された!
「デコイかっ!くそっ!」
弾は外れた。おそらく相手は俺を狙っている!
その時、ビルとビルの隙間を動くものが見えた。
「くらえっ!!」
再び光弾が発射されるが、反応が遅れたため敵には当たらない。
敵が完全に遮蔽物に隠れた瞬間、そこから飛んでくる物体があった。
それを彼の目が確認するのと、すばやくブーストを使い、横に飛び跳ねるのはほぼ同時だった。
「こ、今度はなんだよ?」
今この状況を三択で説明できる方法があるとすれば、
@「夢」
A「ドッキリ」
B「敵ロボットの出現」
マモルは出来たら1か2であって欲しいと思ったが、どうやら3らしい。
マモルは立ち上がり逃げ出そうとした。
その時、彼の目が上空から飛来してくる球体の物体を捕らえた。
「あれは・・・・」
この状況で使われる武器として有効だと思われる武器。
「まじで・・・?」
彼が理解するのとグレネードが地面に着弾するのは同時だった。
爆風、そして衝撃。
マモルの体は、人形のように吹き飛び、空気の抜けたゴムボールのようなバウンドをした。
真っ白な痛みが彼を襲った。
・・・・・・・例の・・・・・・
・・・・・・の情報は本当・・・・・・
・・・・・からは・・・・・・なにも・・・・・・・
マモルは自分の寝ているベッドと、扉が一つしかない部屋で目覚めた。
「うわっ、うわっ、なんだよここ!全然わけわかんねえよ!」
彼はあわてふためいた。
彼は混乱している頭を落ち着かせ、体の無事を確かめた。
とりあえず、外傷はない。
冷静に今までの出来事を思い出してみる。
確か僕は、異世界にきて、父さんを探していて・・・・
泥水を飲んで吐いたことや、思わず寝てしまったことなど、全然関係ないことばかり思い出される。
違う・・・・・その後・・・・・そうだ!ロボットだ!グレネードで吹っ飛ばされて・・
・・・どうなったんだっけ?
記憶はそこで途切れていた。信じられないことだが、無傷だ。
「ここは、どこ・・・・ん!?」
彼はやっと、自分がすっ裸でいることに気づいた。
誰にみられているのでも無いのに、とりあえず前を隠した。
「うう、寒い・・・・」
その部屋の室温はかなり低かった。思わず震える。
とにかくこの部屋から出て自分がどこにいるのかを確かめようと、彼は扉まで前かがみで走っていった。
しかしその扉は取っ手がない。自動ドアならすぐに開くはずなのに、うんともすんともいわない。
「くそっ!」
今まで全くそのことに気づかなかった彼だったが、やっと事態が飲み込めた。
「監禁された?」
捕まったのがエリアル軍ならいいのだが、いや、それも安心できない。
彼は必死でドアをたたいた。
強くたたいた。
一生懸命にたたいた。
体当たりした。
にらんでみた。
ひいてみた。
弱くたたいてみた。
張り付いてみた。
馬鹿にしてみた。
くすぐってみた。
ベッドに隠れてみた。
数分間ドアと格闘した彼であったが、無情にもドアが勝利した。
「はぁはぁ・・・・どうやったら開くんだ・・・・?」
力無く部屋の壁を伝ってほかの出口がないかを調べる。
「あ、あれ」
マモルは、天井にあるダクトを発見した。しかし天井が高すぎて届かない。彼は自分の寝かされていたベッドを使ってよじ登ることにした。
そのとき、彼はベッドの下に何かあることに気がついた。
「なにこれ?」
それは、ゴムのような素材でできた、全身タイツのようなものだった。
彼はしばらくそれを見つめていたが、思い切って着ることにした。
溺れる者はわらをも掴む、といったところだろうか?
「お、」
キュッという音が鳴り、全身にしっかりフィット。
しかも暖かい。
「ラッキー!ってなんかちがうような気もするけど・・・・まあいいか」
マモルは、ベッドをずりずりダクトの真下まで運び、ベッドにのぼった。
「よいしょ・・・と」
上半身は乗るのだが、下半身がついていかない。
扉の方から、シュッと扉が開く音がしたが、彼は気づいていなかった。
思い切ってベッドからジャンプしようとした、時。
「う、うわあ!!」
誰かが彼の足を引っ張った。
上に飛び上がるはずの彼の体は落下し、ベッドに背中から着地した。
僕は、足を引っ張った人物とすぐに対面した。
「お目覚め?ミツルギマモル君?」
自分を捕まえてここに閉じこめたのであろう人物・・・・とは考えにくい女性が、僕を見ていた。
着ている服にはしっかりとエリアルの文字が刻まれていた。 (日本語表記でないからね)
「いや、ミツルギマモル・・・隊員。おはようございます」
その人が、僕に向かって敬礼した。
「はぁ?・・・・あ!」
「私の名前はニーナ・グレイス、エリアル軍DEALSの専属オペレーターです。よろしくね」
僕はそういわれてやっと思い出した。あの手紙に書かれていた文章を。
〜君にエリアルの味方になってほしい〜
やっとすべての事態が把握できた。つまり自分がエリアルの軍に入れということだ。
僕はとりあえず一番気になっている事を聞いた。
「父さんは、父さんは無事ですか!?」
ニーナと名乗ったその女は、答えた。
「もちろん。今からあってもらいます。その後司令にあって説明を受けて下さい」
「説明?司令?」
「逃げないで、ついてきてね。あと、質問はいっさい受け付けませんので」
彼女は振り返り、扉に向かい歩き出した。
僕は、言われるがままについていった。
彼女がドアの前に来ると、ドアが開いた。僕のときは開かなかったのに人体通電技術の応用だろうか?
後ろから続いていく。
部屋から出ると、そこから通路が続いており、道が二つに分かれている。
彼女の通ったとおり、右に曲がったが、さらに道が分かれている。
こりゃあ置いてかれたら迷いそうだな・・・・
どれぐらい歩いただろうか?何個もエレベーターを乗り継ぎ、あの部屋を出発してからおそらく十五分ぐらいはたっていた。
「まだですか?」
「質問禁止!・・・・・もうちょっと、なんだけどなぁ・・・・」
そういって歩いている背中は頼りなさげだ。
「まさか・・・・迷ったんですか?」
「そんなわけない、って、あ!質問禁止って言ってるでしょ!・・・・ついた!」
Y−36と書かれた扉が開き、通路に風が流れ込んだ。ここはかなり広い部屋らしい。
しかしその部屋の中は何も見えなかった。
「さ、中に入って」
「・・・・」
僕がその部屋に一歩足を踏み入れた途端、背中を蹴っ飛ばされた。
「げふ!」
前のめりに倒れこむ。また閉じこめられた!
「ニーナさん!あけてください!」と一通り喚き扉をたたく。
しかし、応答はなく、沈黙がひたすら続いた。
「マモル・・・・」
懐かしい声が聞こえた。
「・・・・・久しぶりだな」
僕がその声の持ち主を、間違うはずがなかった。
間違いなく、その声は父さんのものだった。
「父さん!」
少々、涙が出た。
「今までどこいってたのさ!なにしてたんさ!」
感動で胸がいっぱいになり、言葉も少々おかしく。
「心配かけて悪かった。俺は無事だ。ただ、おまえにはここにきてほしくはなかった」
「え?」
ガシャン、という音がして、部屋、というよりもかなり広い空間の明かりが一斉についた。
「うわっ!!」
明るさに耐えきれず思わず目をつぶる。
しばらくしてから、僕はゆっくりと、目を開いた。
視界が回復して、今まで暗くて見えなかったそれが、暗闇という布を捨て去り、その姿を徐々に現してゆく。
青と白の装甲の間から所々透けているクリスタル状の物が見える。
少し上を向いて固定されているロボットがいた。
「これは・・・・さっきのロボット?」
どうやらここは広い格納庫だったようだ。目の前にロボットが直立して制止している。
「それは前世紀までの単なる『ロボット』ではない」
父さんの声ではないほかの人の声が聞こえた。頭上で僕を見下ろしている人物がいる。
そこに父さんもいた。
「それは対ジャスティネイザー用要人戦闘兵器、通称ジャスティネイザーTだ!」
「司令、さん・・・ですか?」
「私の名前はガイゼル・グロウ。エリアル軍総司令官だ。君に私の手伝いをしてほしい」
「手伝い?」
「君に、これに乗ってある場所を守ってほしい」
はっきり言って信じられることではない。いきなり拉致ってしかもすぐに戦えだなんて。
本気でいっているとは思えない。
「マモル、これは冗談なんかじゃないんだ」
父さんがいった。
「おまえをここに来させたくなかったのはそのせいだ。この兵器はおまえしか乗れない。いや、兵器がおまえを選んだんだから」
いきなり衝撃の事実を知らされ、数秒の間思考が停止した。
「はぁ?」
しかしすぐに我に返り質問する。
「何で、何で僕なのさ?しかもどうやってそのロボットが、違う世界にいた僕を選んだの?」
「それはわからない。ただ、次元と次元を自由に行き来できる人間がおまえをここに連れてきたのは確かだ。そいつからこの
ジャスティネイザーTに乗れるパイロットの情報を買っていたんだが、まさか、マモルだとは・・・・」
その後、ガイゼルと名乗った男が僕に向かっていった。
「今、ラクロア軍の機が軍の重要施設に向かっている。君に出動願いたい」
もちろん、合意するはずがない。
「いやだ。あんなのと戦うなんて絶対いやだ。第一僕がいったところですぐにやられるにきまってるじゃないか!それに何で僕がいかなきゃならないんだ」
ガイゼルは、やはり無表情でいった。
「君しか乗れないからだ。さっきもいっただろう。これが君を選んだと」
「だからといって僕が乗る理由はない!」
「それで君の大事な家族が死ぬとしても?」
ガイゼルは、父さんの頭に向かい銃を構えた。
「・・・・・きたねぇ・・・!!」
体の底からわき上がる激しい憎悪を感じた。
そいつはうっすらとほほえみを浮かべているように見えた。
「マモル」
父さんがいった。
これから映画のワンシーンのように「俺にかまわず逃げろ」みたいなことをいうのかと思っていたが、現実はそう甘くはなかった。
「ここから逃げ出すことはできない。頼むから、命令に従ってくれ」
「そんな・・・」
追い打ちをかけるように、ガイゼルがいった。
「と、いうわけだ。説明をうけてすぐに出撃したまえ」
「こんのやろぉ・・・!!」
「この戦争に負けることは許されんのだよ」
続く
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NEXT TIME OF JUSTINEITHER
閃光、衝撃、爆風。
高校生三年生三剣マモルの前に立ちはだかるラクロア軍のジャスティネイザー。
マモルは相手を倒すことができるのか?
次回、神聖戦記ジャスティネイザー 第三幕
「First Attack」
あとがき
いいわけです。ここはあとがきという名のいいわけスペースです。はい。
SFです。SF小説ですよこれ。そのうち恋愛小説にも変わってくると思います。
・・・・・本当に小説家目指してますよ!
最近は演劇部が楽しすぎて執筆活動進んでませんが(エー
明日のサハラ砂漠の天気予報
晴れ