失われし刻 モノローグ |
作:SHION |
幼い頃から他人から干渉されることが嫌いだった。
傷を舐め合うように群れる同世代を見るのも嫌気がさした。
まして共に行動しようとでもすれば吐き気がした。
誰かが側にいてくれないと生きられない。
そんな甘いことを言う人間はわたしの理解の域を越えていた。
自分以外は他人だ。
両親や兄でさえも他人だと感じた。
幼少の頃兄とわたしは遊戯施設で大怪我をしたことがあった。
その時流れたわたしの血はわたしだけのもであり、兄とは違うものだった。
つまりたとえ同じ血が流れていようとも別物であり他人だということだ。
何の気の迷いか、魔が差したのか・・・。
こんな暗い考えを持ち周りとの関係を遮断していたわたしを好きだという男が現れた。
誰かも知らない、話したこともない男は懲りずに何度も告白をした。
あまりのしつこさに付き合いを承諾してしまったのはまだわたしも幼かったからか。
しかし当然のように長くは続かなかった。
わたしの心に他人が侵入することなんて到底無理なことなのだ。
この世界に産まれてきたのは何の為なのだろう?
理由があってわたしはここに存在しているのだろうか?
幸せになるために産まれてきた。
ある人はそう言った。
では幸せとは何なのだろう?わたしの幸せとは何なのだろう?
誰かを愛するために産まれてきた。
ある人はそう言った。
誰かを愛する?それが産まれてきた意味であり目的であるというのだろうか?
それならばわたしは存在することを拒絶しよう。
わたしは幸せになりたいとも、誰かを愛したいとも思わない。
脆弱な人であるがゆえの他人への依存はいらない。
わたしは死に場所を探している。
きっとそれがわたしの存在する意味であり意義なのだ。
わたしの名は、未来(みく)
未来を望まないわたしにとっては
皮肉な名前・・・。