僕だけの天使 |
作:ミント |
「HEY!!そこのお兄さん!この辺に宮沢楓って人いない?」
「それ…俺…」
やけに高いテンションの君…これが俺とひと月限りの俺の天使の出会いだった。
あれから一年が過ぎた…あの時起こった出来事はすべて水の泡のように周りからは忘れられている。
でも 俺は 決して 君を 君と過ごした 時間を 忘れない
だから俺は君と来たこの海岸線にきているのかもしれない。君を忘れるのが嫌で…夢だと思いたくなくて。弱い自分から逃げ出しているのかもしれない。けれど、あれは夢だったんだって笑い飛ばせる程俺も大人じゃない。
表情がコロコロ変わって、意地っ張りで見ててあきなかった。
おおざっぱだけど、なぜかピアスは毎日いろいろな花のピアスに変わっていて。
俺が何かある度に俺より先に笑ったり、泣いたりしてさ。。
『楓ちゃん〜』って呼びやがって…ちゃんずけすんなってあれほどいったろ…
『楓ちゃんは弱くなんかないよ…あたしより何倍も強い!!だからあたしの仕事は終了!今までありがとね。元気でね。』
そう言って君は俺の前から消えかけた。けど俺は君の腕を掴んだら、君は寂しそうに笑って俺のおでこに触るぐらいのキスをした。
そして…俺の前から姿を消した。
最初はただ呆然とするしかなかった。涙さえもでてこなかった。けど、お前が俺の机に残した手紙で俺は大声で泣いた。声が枯れるほど泣いたんだ…
『楓ちゃんへ
この手紙を読んでるってことはあたしはもう楓ちゃんの近くにいないはず…。
早いね〜1ヶ月たつのはさ。
でもね、楓ちゃんと過ごせて良かったって思えるよ。 ほんとうにありがとう。
楓ちゃんに最後のお願い。もし、あたしがまた楓ちゃんの前に現れたら
優しく抱きとめてね。
楓ちゃんの天使より』
何が“優しく抱きとめてね”だ…そんなこというなら姿現せよ。お前の好きな海にきたんだぞ!!
今俺の頬をかすめている風のように突然現れて、そして突然消える。
そんなやつだったよ…お前はさ。
「お兄ちゃん、どうして1人でいるの?」
いきなり話しかけてきた小さい男の子。
「お前こそ1人じゃん。」
「僕はお姉ちゃんときてるも〜ん。」
そう言って男の子は遠くからくる女の子を指さした。
「な〜にやってんの!すみませ…ん!?か…楓ちゃん?」
君は俺の顔を見たとたん、声を上げた。
「いや…人違いだね。あれはあたしが意識不明のときにみた夢だったんだから。」
俺の腕は無意識に君を優しく包んでいた。
「あの…ちょっと…」
「あの手紙わすれた?“優しく抱きとめてね”」
「忘れるわけないでしょ。」
君はもう儚げな天使なんかじゃない
だってこうして今“優しく抱きとめられる”から…