EX el 〜『輝かざる者』〜 1
作:緑





「シナリオライター」




 そのシナリオを書いた男だけは許せなかった。
 最低のシナリオだと思った。
 ――さんざん彼女に苦しみや、悲しみを背負わせた。
 彼女は多くの者の悩みを、無理矢理背負わされ、共に悩み、共に病んでいった。
 たった一人の悩みではない為に、結果、彼女が最も心を病まされた。
 彼女は友人に男と別れたくないと言われた。
 ろくでもない男だとは思ったが、彼女もその男に頭を下げた。
 彼女の友人の男は、妹をレイプされ発狂しそうになった。
 彼女は彼に自分の体を差し出してその怒りを静めた。
 彼女の友人の父の医者は、彼女に彼女が妊娠していると告げた。
 それは全て虚偽だったが、彼女は居る筈も無かった子供の為に胸を痛めた。
 それら全ては、彼女の最も愛する男に知られた。
 彼女の愛する男は、何も言わなかった。
 カウンセラーのような仕事をしていた彼女は自分自身が病んでいく事を知った。
 けれど、彼女は誠心誠意愛する男と話し、その仕事を辞める事にした。
 そして彼女はその晩、初めて愛する者に抱かれた。
 
 
 
 
 
            これでやっとしあわせになれたのに
      彼女は
                  十と
    『彼女の叫びが聞こえた』        
  モウバラバラダ                            六の
            細切れの
                  これでやっとしあわせになれたのに
           DEAD        『彼女はある意味で僕の子供だった』   
    肉隗に
 されて
            カレハドウナッタ?   
            しまった
 PAIN
                   アンナニシンジンブカカッタノニ
 『僕と同じ姿かたちを持っていた』
 
 これでやっとしあわせになれたのに
 
 イタイ                     愛する男は
       発狂した
          
 
         チョットダケキモチイイ
        
『精神同調』
  MAD
                 ムカエガコナイ
         これでやっとしあわせになれたのに
    彼女の
          ワタシハナニ?
 
  『遺志』           死は
 
 アタマモカラダモイタイ
         これでやっとしあわせになれたのに      
                 『いつも考えた』            
 彼女が
   彼女自身よりも
                   重い
               と
   
            『僕が始めて命を与えた人だった』                   
 これでやっとしあわせになれたのに       
               セイシャクシャヲ     
 思っていた
       者さえ
                  『何もかもが壊れた』  
  深い
           絶望の
 コロセ
         『このままでいることに疑問を感じた』
  ドウシテ
           ワタシダケガ
                             底に
    コンナメニ
  叩き落した
 
 
 
 
 
 ――彼女の『ジンセイ』とは一体なんだったのかと思う。
 自分がそれを見てまずはじめに考えた事だ。
 本当に最低のシナリオだと思った。
 
          そしてその晩から。
 
 すべての予定運命の製作者たる『神』を殺す為に――。
 
 自分は、ルシフェルという名を捨て、堕天使ルシファーと名乗った。