THE・SHADOWS 2
作:トップシークレット





第二話・陰の実力


 とある巨大な建物の中にその謎の組織の活動拠点となる基地が存在する。それはものすごく広く、全部のフロアが地下に存在するので、まさに秘密基地といったところだろうか。・・・THE・SHADOWS本部ブリーフィングルーム(ブリーフィングルームとはいわゆる作戦会議室である。)“プシュー”その音と共に二人の人間が入ってきた。眞吾とマリアである。その部屋は大体4畳半ぐらいの部屋に、チョッと大き目の机が二列になって並んでいて、正面には大きなプラズマスクリーンがある。
「遅いですよ!ほかの隊員は既に準備に入ってますよ!」
 チョッと怒鳴り気味で二人に向かって話しかけてきたのは、各小隊に作戦を伝える係りの人間で本名、年齢不詳と不気味だが唯一分かるのは女性だということである。それにかなりの美人でよく会社社長の秘書とかにいそうな美人の人である。コールサイン(作戦活動中などに相手を呼ぶときの暗号)はビーナスである。ありきたりだが本人はかなり気に入ってるらしい。
「早く席について!今回の作戦の説明をします。」
 そうせかされて二人はチョッと豪華な椅子に腰掛けた。
「それでは今回の作戦を説明します。その前に朗報です。司令官からこの封筒を渡すように頼まれました。」
 そういうと書類を入れるような大き目の封筒が眞吾に手渡した。眞吾はかなり不思議そうに封筒を眺めている。しばらく眺めたあとに警戒しながらも封筒を開けた。そこには三つ折の極普通の便箋サイズの紙がポロリと落ちてきた。“カサ”三つ折の紙を開いてみるとそこにはこう書いてあった。
「我々陰は君の任務遂行率と正確性を慎重に慎重を極めて幹部会議を行った結果、貴殿穐山眞吾を小隊長と昇進させることを決定した。それについで貴殿の階級を伍長から少佐に昇格させることも決定した。尚、この審議結果を不服、または受理しない場合は午前00時までに森本に報告せよ。もしこの審議結果を妥当と受け取る場合は貴殿の小隊の作戦伝達係りに申し出ること。後日階級章と小隊長任命章を貴殿に贈呈する。以上。
         超極秘特殊工作部隊THE・SHADOWS司令官・幹部会議員一同
 さらにその下にはとても大きな判子が5つも押してあった。これを見たあとに眞吾は黙り込んでやっと状況を判断した。いわゆる辞令である。状況を理解したとたんに顔がにやけた。気が付くと隣にいたマリアも覗いていた。そのマリアからも
「あら、あんたやるじゃない。だけど何であんたが幹部会議の連中に認められたのかは謎だけど・・・」
 誉めているのか、いやみをいっているのか謎だったが口調からして、かなりいやみを言っていたに違いない。するとまたせかすようにビーナスがいう。
「そういうことなんだけど・・・あなたはその手紙の内容を厳粛に受け止めるの?」
 眞吾はとてもはっきりとした口調で
「もちろんです。」
「それだったらここにサインして。これを幹部会議員に提出する重要な書類だから。」
 チョッと手が震えていたが、しっかりと自分の名前を記入した。
「有難う。昇進と昇格おめでとう!穐山眞吾小隊長。」
「いやぁ〜そんなことを突然言われると照れるじゃねぇ〜かよ。」
 昇進、昇格が決まって完全に浮かれてるところにビーナスがきりりと改まって
「それでは今回の作戦の内容を説明します。」
 その言葉を聴いた瞬間マリアも眞吾もしゃきっと引き締まった顔になった。
「今回の作戦の内容は一言で言うと奪還です。」
「何を奪還するの?」
「質問はあとで受け付けます。」
 チョッとムッとした眞吾が
「どうぞ、続けてください!」
「今回奪還するものは人造軍人の細胞です。」
 突然顔が険しくなる二人。ほんの少し間をおいてマリアが
「人造軍人の細胞って1年前ぐらいに世界条約で完全破棄が決定されたんじゃないの?」
 そこに眞吾が語り口調で
「人造軍人の細胞は様々な紛争地帯で驚異的な殺傷能力を発揮したために世界戦争反対運動協議会にものすごい反感を買ったために世界各地で人造軍人を製造している国々が人造軍人細胞生産完全停止条約を締結した。この条約を締結したことにより世界各地の紛争地帯での戦死する確立が大幅に減少した。これに伴い、世界各地の紛争が減少傾向に向かっていった。そして問題の人造軍人の細胞は様々な闇組織の手に渡りその後ブラックマーケットに出回りこの世にお目にかかることはなくなった。」
 眞吾の説明が終わって話は戻った。
「その人造軍人の細胞は今、どこにあるの?」
 マリアが核心に迫る質問をする。深く深呼吸をしてビーナスが言う。
「世界的細胞研究の権威の日本遺伝子アカデミーに保管されてます。」
 二人とも驚いた顔をして尋ねる。
「どうしてそんな条約違反な物がそんな世界的に有名なところに保管されてるんだよ!その情報はデマじゃねぇのか?」
「大体、そんなものを保管してるとアカデミーのお偉いさんの誰かが気付くはずだけど?」
「どうやら、その細胞はアカデミーに勤務している研究員の手によって持ってこられたようです。それにアカデミーが使ってる遺伝子用の冷凍庫ではなく、個人の冷凍庫に保管されている模様です。」
「なるほど・・・道理であの研究所の誰もが気付かないわけだ・・・」
 少し険しい口調でマリアが聞いた。
「ところで、今回の作戦で出動する隊員は誰がいるの?」
「今回の作戦から、新しく小隊長に昇進した秋山眞吾の小隊で活動します。」
「これからどんな作戦も?」まさかと思い、マリアが聞く。「どんな作戦もです。」
 ビーナスの答えはあまりにも冷たく、単純明快なものだった。
「これからあなた達が作戦で一緒に行動する同胞を紹介します。隊長は穐山眞吾。コールサインはジャックです。それとこれからはジャック小隊と呼びます。副隊長兼隊長のサポート役に石本摩璃亞、コールサインはジュピターね。」
 するとジャックがほんのり笑顔で
「宜しく。お嬢さん」
「何言ってんのよ!まじめに聞きなさい。」
 叱られてしまった。
「それで、先攻突撃隊員として保川美紗(やすかわみさ)を配属します。」
 今度は眞吾の度肝が抜かれた。
「チョッと待ってくれ!!あの保川美紗が内の部隊に配属なんてお断りだぞ!!やつは通称連射の悪魔で悪名高いんだぞ!あいつは前にスニーキングミッション(潜入作戦)のときに敵に向かって貫通弾を装填したガトリング砲で敵にお見舞いしたんだぞ!貫通弾特有の爆音で敵がどんどん増えてガトリングでも手に負えないぐらい増えた。任務が終わってみると隊員6人で形成された部隊が甚大な被害を受けた。2人は骨折とかで一命を取り留めたけど残りの4人のうち2人は手や足に障害を負って組織を除隊されて、1人は頭と心臓に合計で19発も銃弾を受けて死亡。残った無傷の隊員が保川美紗というわけだ。それで付いたあだ名が連射の悪魔。」
「最近スニーキングミッションの訓練を強制的に行わせています。既にスニーキングミッションレベル3Sを簡単にクリアできる用にまでなりました。」
「駄目だ!やつのこの小隊への配属を認めない!」
「これからのスニーキングミッションの作戦に参加するときに誓約書を書かせました。これをあなたにお渡しします。」
 そういってジャックに紙を渡した。そこには美紗の手書きで(これからスニーキングミッションに当たるにしたがって暴走をしない、敵の戦闘に自ら積極的に加入しない。隊員が負傷しているときは真っ先に助ける。これからはこの三つを誓います。もしこの三つの誓いを破った場合は組織から脱退し、今まで自分が組織で経験してきたことや出来事を口外しないこいます。)ジャックはこの文章をみてしぶしぶ答えた。
「仕方ない。それでぇ、保川美紗のコールサインは?」
「ロケットです。次に後方援護隊員としてダニエル・アンダーソンを迎えました。」
「ダニエル・アンダーソンってグリーンベレーの後アメリカ海兵隊に所属して、イラク戦争にも出征して名誉戦傷賞など、様々な賞を受賞した後、疲れたことを理由にわずか30歳で軍を退役したあとはアラスカの山奥でひっそりと暮らしている伝説の軍人じゃないか。」
「よく伝説の軍人が重い腰を上げたわねぇ〜」
「彼には年俸49億で契約して雇いました。」
「なるほど!彼はいわゆる傭兵か。」
「そういうことです。コールサインはレジェンドです。」
「伝説ってか?やつらしいコールサインだぜ!」
「最後に現場で誘導要員として鈴盛貴章(すずもりたかあき)、25歳をあなたの部隊に加えます。彼には現場でコンピューターなどを駆使して敵の現在位置をあなた達に知らせて、あなた達を最適のルートで誘導する任務を行います。そのほかにも電子機器に関する様々な任務を彼に依頼しました。コールサインはアローです。」
「そいつもかなりの、‘オタク’だな・・・情報工学技術を得意として、今までに持っている記録として最高なのはたった2分ほどでアメリカ国防省の最高機密を管理するコンピューターにハッキングして成功した記録を持っているほどだからな。かなり内の小隊は有名人が多いなぁ。」「そういうあんたも有名人じゃない?二年前のあの事件であんたは一躍有名人なんだから・・・?」
「そんな昔の話はよしてくれよ!」
 チョッとムッとした顔でマリアに突っ込む。マリアが冷静に
「それで、今回の作戦に有名人が参加するのは分かったけど、いつ、どこで、集合して作戦を開始するの?それが分からないと、いくらなんでも参加できないわよ?」
「アカデミーの正門前に公園があります。隊員の皆さんはその公園の前のとおりに午前十二時丁度に集合してください。そこには脱出用のトレーラーを配置しておきます。アローはそこからコンピューターによる支援を行います。作戦が終了後は脱出用のトレーラーとして、レジェンドがドライバーを担当します。以上が今回の作戦の内容です。規律にもありますようにここで起きたこと国家機密です。外部に一切口外してはいけません。」
 ジャックが普段のやる気ない返事で
「はいはい。分かってますよぉ〜。」
 するとビーナスが書類がたくさん入ってるファイルを取り出してジャックに向かってこういった。「それならいつもどおりここにサインをしてください。」
 相変わらずやる気のない返事でへぇ〜〜い。そういってビーナスからボールペンを取って“サラサラ”と達筆なのかわざと汚い字で書いたのか分からない字で名前を書いた。
「それでは幸運を祈ります。」
 ビーナスの言葉を軽く受け流すように
「幸運なんて足りてますよ。」
 といって軽く笑った。そして2人はブリーフィングルームを後にした。その後、2人は自分達のロッカーに向かった。チョッと大きい錠前みたいな電子ロックを開錠して“ガチャ”という音と共にロッカーが開いた。2人のロッカーの中には様々な武器や簡易式医療用具が入っていた。しかし、何故か眞吾のロッカーには刀が何本も入っていた。なぜ刀がロッカーに入っているかは改めて説明するとしよう。二人は必要なものをロッカーから取り出して、それを特殊なスニーキング・スーツにまとめて取り付けた。(この時代の特殊なスーツは様々な有毒化学物質を通さず少しきつめに出来ている。少しきつめになることによって、各種臓器を圧迫して臓器の保護と活動の促進を図っている。さらに、各種臓器の部分には小さな針が付いていて、そこから自動行動型のナノマシンを注入する。そのナノマシンは血液中のデーターを常時計算して、出血量、酸素濃度、血液中に有毒物質が入っていないかをデーターベースに送信する。作戦が終了後に個人個人でそのデーターを分析して、次回の作戦に生かしていく。)その後、2人は家に帰宅した。眞吾が家に着くとそこには誰もいなかった。よく見ると、リビングのテーブルの上にはなにやらメモ用紙が置いてあった。眞吾がそれを手にとって目を通すとそこには(お母さんは今日から出張で一週間アメリカのニューヨークに行ってきます。お父さんは軍の関係で二週間は家に戻ることが出来ないそうです。眞吾の机の上に二万円置いておきます。それで食事を取ってください。)とのことであった。これは眞吾にとっては好都合である。この手紙をそっとテーブルの上に置くと眞吾はサッサと2階にある自分の部屋に向かっていった。軽快に階段を上って“ガチャ”と自分の部屋のドアを開けて、自分のきれいに整頓された勉強机の上を見ると、そこにはちゃんと二万円だけがおいてあった。その二万円をスット自分の財布の中にしまうとまた今度一階に戻って、薄い布団を持ってきてリビングにあるソファーで眠ってしまった。

 ―――午前十一時四十分。アカデミー正面前公園のトレーラーの中―――そのトレーラーの中には既に着替えを済ましてジャック小隊の五人が中にいた。トレーラーの中にあるコンピューターをいじっていてチョッと小柄な人間が鈴盛貴章、大柄で髪の毛が金色で目の瞳が赤い男があの伝説の傭兵の異名を持つダニエル・アンダーソンである。その隣で、とても大きなガトリング砲を整備しているのが連射の悪魔、保川美紗である。少し寝癖を立てたジャックがやる気のない声で言った。
「それじゃ作戦を開始するとしようか?」
 すごいやる気のある声で
「やってやるわよぉ〜。私のガトリングが日を含んだからぁ〜」
 と冷静な声でジャックが
「やる気は認めるがやりすぎは認めないからな!」
 とにこやかな声でアローが
「そうですよ。あなたのガトリングのせいでもう何人も被害が出てるんだから。ちゃんとしっかりやってくれないと困りますよ。」
 と、かなり深みのあるの声でレジェンドが
「火を吹かしてもいいが、俺達を巻き込むようなことだけはやめて欲しいぜ。」
 と流暢に日本語を話す。するとイラついてロケットが
「もう!!分かってますよ!ちゃんとやらないと軍から首にさせられるんだから!私だって真面目にやれば1人でこんな作戦できるんだから!」
 さらにクールな声で
「あら!SMT(スニーキング・ミッション・トレーニングの頭文字で略したもの)の3Sが簡単に出来るようになったからっていい気になってるんじゃないわよ!」
 すると過敏に反応してかなりむかついてる声で
「フン!あんたもそんな余裕でいいの!そんな身軽な装備でやられても知らないわよ!?」
 とジュピターもかなりむかついた声で
「そんな重装備で、動きづらいのも何かと思うけど!?」
「何よ!」
「何かしら!」
 とジュピターとロケットがいがみ合ってるとかなり怠けた声でジャックが
「あぁ〜、そんなにいがみ合ってないで作戦のことに集中しろ〜!そんなにやる気があるなら作戦でやる気を発揮しろよぉ〜」
 と声をかけたが完全に無視されている様子でまさに蚊帳の外といった感じである。と、呆れた様子でジャックに近づいたレジェンドはジャックに向かってこういった。
「あんたも隊長だろぉ〜。少しは‘威厳’っちゅうものを見せてみろよ。」
「そんな事言ってもなぁ〜。あの2人は元来犬猿の仲って言うしなぁ〜」
「全く。こんなのが隊長だとみんな死んじまいそうだぜ!いいか!威厳というものはこうして見せてやるんだ!」
 と2人に近づいていって自分の腰にある拳銃をスット近づけて“ガシャン”と銃弾を装填するとその音に過剰に反応した。と、ジャックが
「あっ、よけろ、レジェンド!!」
 しかし言うのが遅すぎたためにレジェンドは2人同時に放たれた左回し蹴りが同時にみぞおちに入った。その瞬間少し飛んで転がったレジェンドはその場にお腹を押さえてうなりながら転がった。かなり辛そうな声でレジェンドがジャックに向かってこういった。
「・・・確かに・・・あの2人は・・・ハァハァ・・・犬猿の仲だな・・・フゥフゥ」
「大丈夫かぁ?あの2人には近づかんほうがいいよ。」
 するとパソコンをいじってたアローが四人のほうを向いてこういった。
「それでは詳しい作戦の内容を説明しますので静かにしてください。」
 するとケンカしていた2人も収まって、アローのいる方向に目をやった。アローはとっても大きなスクリーンを引っ張り出した。そこにアカデミー全体の図と見取り図が表示された。
「それでは説明します。このアカデミーは地上4階、地下4階の合計八つのフロアで形成されています。主に地上フロアが事務処理部門。地下フロアが研究区域となっていて、特殊なIDカードを持っていないと入れません。このIDは来る前に私が既にスクってありますので、問題はありません。この地下フロアのうち下の2階が実験室。上の2階が保管庫となっています。ここに保管されている遺伝子のサンプルは大体400以上といわれています。その遺伝子は多種多様で、希少な動物から採取した遺伝子や、かの有名な日本国総理大臣の血液サンプルなどが保管されています。しかし、その遺伝子を保管庫から持ち出せるのは研究員だけで、事務処理部門の人間は保管庫に近づくことすら出来ません。保管庫の扉を開けるには研究員だけが持っているIDカード型の身分証名称とコード入力をしないと保管庫の中に入れません。さらに保管庫から遺伝子を取り出すのにもコード入力をしないといけません。」
「まさに厳重警備といったところかな?」
「それだけではありません。勤務時間以外は各階にGD−0098とGD−X0098が各二体ずつ配備されています。」
「装備はどうなっているの?」
 かなり取り繕った雰囲気でロケットが問う。
「GD−0098のほうは高性能マシンガンと簡易グレネードをあわせた改良型のマシンガンです。補助装備は暗視ゴーグルに赤外線ゴーグルの複合センサーです。さらに追加装甲で武装してあります。GD−X0098はさっきのGD−0098の装備を少し改良した装備を持ち合わせています。高性能マシンガンは20%貫通性が増加しています。簡易グレネードは普通の携帯グレネードに追尾機能を追加してあります。複合センサーはさらに感度が増加してあります。装甲は二重装甲で強度がかなり増しています。」
「統合管理システムみたいのはないの?」
「統合管理システムはありますがアンドロイドの現在位置と現在の状況を確認する程度しか機能しませんので問題はないと思います。」
 ジャックがさらに
「それじゃ、統合管理システムの現在状況はアローが管理して、少しでも変化があったら皆に報告してくれ。」
「了解しました。随時報告します。」
「それから一つ言い忘れましたが、一番最初に警備室を制圧してください。警備室に統合管理システムがあります。ハッキングを試みたのですが、外部からのアクセスを完全拒否されていますので、内部から工作して、外部にアクセスを出来るようにしてください。でないと、現在位置とかが把握できませんので宜しくお願いします。」
「了解した。よし、これから二班に分けて行動しやすくしようと思うのだが、どう思う?」
 と、唐突に聞いた。速攻でロケットが反応して
「さんせーい。そっちのほうが行動しやすいと思いまーす!」
「そうね。私もあんたみたいな後先考えないで行動する人となんか行動したくないし・・・!」「何よ!?」
「何か!?」
 またにらみ合い始めた2人にジャックが
「あぁ〜、やめろ。お前ら。二班に分けるが、一斑が俺とジュピター。二班がロケットとレジェンド。それで文句ないだろ?」
「私はそれでいいと思うわよ」
「私もそれでさんせーい!ジュピターと分かれられてよかったし!」
「フン!おこちゃまが!」
「気取り女が!」
 と冷めた様子でレジェンドが
「本当にこんなんで作戦が成功するのかね?」
 と不安そうにレジェンドが聞く。
「大丈夫だよ。こいつらはいっつもどこかでいがみ合ってるけど、いがみ合いであいつを絶対にぬくという気持ちが人一倍強いんだよ。だから意外とあいつらは気が合うんだよ。ただぁ〜、唯一の問題点はそのライバル心が人一倍強いことが玉に瑕なんだけどな!」
 とにっこりと笑う。呆れて、レジェンドが
「あいつらがいれば、この作戦は余裕で遂行できるな!」
「おう!」
 と、パソコンで準備をしていたアローが
「皆さん、準備が出来ましたよ!皆さんの現在位置と状態を表示できるようにしておきましたよ!」
 その言葉にジャックが“フゥー”と大きく深呼吸すると
「よっしゃ。それじゃ、そろそろ始めるか。準備はいいか?」
「おう!」
「そろそろショーの開幕ね!」
「準備が遅いわよ!」
 ジャックが気合を入れて
「出撃するぞ!!」
 といって一気に緊張が張り詰めた。そのままトレーラーを後にした。トレーラーを出た瞬間4人は一気に走り出した。走ってアカデミーに向かっている途中にジャックが脳内通信で
「これからは、脳内通信で交信を行う。ジャック班は屋上に脱出路の確保と脱出用器具の設置、レジェンド班は例の警備室の占拠。その後に統合管理システムの全容をリンクして送信してくれ。」
「了解!」
 そのまま走っていると、正面玄関と、警備室につながる通路の入り口につながるところに二股に分かれている。そこでジャックがレジェンドに合図を送った。するとレジェンドも合図を返してきた。そこで2人が分かれて、ジャックとジュピターは正面玄関方面へ、レジェンドとロケットたちは警備室につながる通路に向かっていった。一足早くついたジャックとジュピターは正面玄関より少し離れたところで足を止めた。そこで2人が背負っていたリュックから短い棒を取り出した。その先端には鋭利な刃物が付いている。それを腕のアタッチメントに取り付けると親指、人差し指、中指にトリガーが出てきた。そのアタッチメントを屋上の壁に狙いをつけると、2人は合図を交わして親指のトリガーを押した。すると“バシュン”という音と共に、勢い良く先端の鋭利な刃物が発射された。その後に続いてワイヤーがどんどん出て行く。しばらくすると上のほうから金属と石がぶつかったような音がかすかにする。今度はその音と共に、人差し指を押した。外側から見ると変化はないが、その鋭利な刃物は“ガシュン”と音と共に、先端が一気に鍵爪の様な形に開いた。さらに中指のトリガーを押す。今度はワイヤーが勢い良く戻ってくる。少しだけ戻ると、ワイヤーがまき戻ってこなくなった。壁に上手く鍵型の爪が引っかかった。かなり強い力で腕を引いてちゃんと引っかかっているかを確認して、足を壁につけて地面にねっころがった。もう一度中指のトリガーを押して、二人が壁をゆっくりと歩き始めた。しばらく上ると今度は壁を走り始めた。隠密行動を取る上であんまりゆっくりしていると、敵に見つかる可能性があるためである。さらにまた上ると、今度は軽く飛びながら走り始めた。かなり早いスピードで壁を登っていき、わずか3分で4階分の壁を爆走して登りきった。休む間もなく今度はリュックからかなり大きい器具を取り出した。そこにはまたかなり大きな先端のとがった刃物が付いている。今度はその大きな機械を公園にある木に向けて発射した。勢いよく飛んでいき、対面にある公園の木に深く刺さった。今度は手でワイヤーをまき戻す。まき戻している途中にジャック
「これ別に手でまき戻すのは構わないけど、最後のほうが、とても重いんだよな!。」
 と、額に汗をかきながら愚痴を言っている。確かに、この手でまき戻してするやつは最初のほうはものすごく軽く回しやすいのだが、最後のほうはものすごく力まないとまったくといっていい程回らないのである。うめき声を上げながら回して何とか固定した脱出用のアンカー接続機にすかさず、固定用の穴に特製のねじ打ちを打ち込む。するとものすごく硬いはずのコンクリートの地面をやすやすとものすごく鈍い音を立てながら貫通したのが分かった。やっと固定されて、一安心のジャックが膝に手を乗っけて息を“ゼイゼイ”といいながら前のめりになって休んでいると、ジュピターから
「何してるの?時間がないのよ?とっとと行くわよ!」
 とせかされた。さすがにジャックもこの言葉にはカチンと来たのか息を切らせながら反論をする。「はぁ・・・そんな・・・フゥ・・・こというならぁ〜・・・ふぅ、フゥ・お前が・・・やってみろよ!」
 するとがんばってジャックが今思ったことを言ったのだが、ジュピターは涼しげに
「何言ってんの?私はかよわい乙女よ!あんたはそんなかよわい乙女にこんな重労働をさせるの?あんたはそれでも健全なる赤い血が通って、涙が出る普通の人間なの?信じられない!」
 などと、罵声と文句をマシンガンのように浴びた。さすがにジャックもこたえたようで、反論が出来なかった。気合を入れなおして肩にかけているマシンガンを構えて、ジュピターと首を縦に振って合図をして一気に扉まで走っていった。扉の前で立ち止まってジャックが
「俺が扉を開けるから、お前はクリアリング(安全確認と状況報告)をしろ!文句はないだろ!?」
 さっきのお返しといわんばかりの野太い声で脳内通信経由にジュピターにたずねる。
「別にいいわよ。とっととそこの扉を開けてくれない?あけてくれないとクリアリングも減った暮れもないんだけど?」
 ジュピターのほうが一枚上手だった。するとジャックが扉の手前まで来て、ジュピターがその後ろに付く。そこでジュピターが準備よしと合図が着たのでジャックは扉をゆっくりと開けた。銃を構えていたジュピターが素早く建物の中に入っていく。それに続いてジャックも入っていく。ジャックが扉を閉めている最中もジュピターは機をぬかずに当たりの警戒を怠ってはいない。扉を閉めてジャックがロケット、レジェンドに向けて通信を入れた。相手側の呼び出し音が聞こえて少ししてから
「こちらジャック。聞こえるか?ロケット、レジェンド。」
 と、間髪をいれずにレジェンドが
「こちらレジェンド。感度良好です。」
「たった今アカデミーの最上階に侵入した。今のところは警備用アンドロイドの姿は見当たらない。そっちはどうだ?」
「こっちもあと少しで管制室にたどり着くことが出来る。こっちも今のところはアンドロイドを見ていない。」
「そうか。屋上に脱出用のアンカーワイヤーをセットしておいた。任務が完了して脱出するときは屋上に行ってそれを使う。」
「了解。ロケットにも伝えておく。」
「俺達はこれから一階に向かう。」
「分かった。気をつけろよ。」
「分かってるよ。通信終了」
 すると今度はジュピターに通信を入れた。なぜ目と鼻の先にジュピターがいるのに直接話さないのか?理由は隠密行動時に直接相手と話すと、どこかで盗聴されている恐れがあるためである。2人はそのことを心得ていたのだ。だから2人は学校にいるとき意外は脳内通信を利用するのである。
「これからひとまず一階に向かう。そこからレジェンドたちと落ち合って一緒に行動をする。」「分かったわ。」
 そういって、2人はマシンガンを構えたまま階段をゆっくりと下って行った。一方ロケットとレジェンドたちは・・・現在位置管理者用通路・・・こちらもゆっくりとクリアリングを行いながらなのでゆっくりゆっくりと前進していた。よく見るとロケットが何かを我慢している様子である。しかも少しうなり声を上げている。さすがに気になったレジェンドが聞いてみた。
「どうした?さっきからうーうーうなって?」
 と聞いても答えない。冗談のつもりで軽く笑いながら
「まさか・・・小便を我慢してるんじゃないだろうな?」
 やはり答えようとしない。
「おい、どうしたんだよ?ムスッと黙り込んでるままだったらわからんだろ?しゃべってみろよ?」
 すると硬くとても大きな扉で閉ざされた扉のように閉じていた口をゆっくりとあけていった。
「どうしてこんなところでちんたらしてないといけないの!?とっとと警備室に行って、アローに統括システムを送信して、ジャックたちに配信して、遺伝子を発見して、脱出路から脱出してとっとと家に帰って暖かい我が家の布団で寝たいの!」
 言葉のガトリング砲といっても過言ではないだろう。ものすごい速さで愚痴をこぼす。さすがにこのこともレジェンドは滑舌がいいなと感心している。
「チョッと聞いてるの?」
 とツッこまれてわれに返る。われに返ったところでレジェンドが冷静に
「んなこと言ったって無鉄砲に後先考えずに突っ込んでいって警備用アンドロイドに見つかってやられたら元もこうもないだろ?やられないためにも全神経を集中して感じるんだよ。」
 すると全く息継ぎをしていないのではないかと思わせるくらいな速さで間髪をいれずに
「私はね、こういうちんたらとした作戦がいっちばん嫌いなの!面倒くさいことはサッサと終わらせたいの!」
 チョッと圧倒されながらも
「だったらスニーキングミッションやらなければいいじゃん。嫌いならこんな危険なことやめて極普通の生活をしてればいいのに?」
 ととっても鋭いところを付く。さすがにこのツッコミは答えたようで“うっ”と言葉を詰まらせる。チョッと戸惑っているロケットの顔をチラッと見て、何を思ったのかニヤっと笑った後に
「お前がやりたくて入ったこの世界なんだ。せいぜい自分のやっていることを楽しむことだな!まぁ、命を落としたら元も子もないんだけどな!」
 本場のアメリカンジョークをかましたつもりだが、ロケットには嫌味にしか聞こえずロケットのご機嫌を損ねてしまったようだ。などとたわいもないジョークをかましていたがふとレジェンドが少し開いた扉から光が少し漏れているのに気付いた。
「オイ!あの扉の奥はどう思う?」
 今度は真剣な眼差しと本気の声でロケットに問いかけた。さすがのロケットもこれはチョッと普通じゃないという雰囲気を察知して、ロケットも臨戦態勢に入り2人の周りを取り巻く空気は一気に重く緊張を持ち始めた。改めてレジェンドとロケットは自分の装備の確認を行う。レジェンドが手信号で‘俺が突入するから、お前は扉をあけろ’とのことだ。ロケットも手信号で‘了解!抜かりなくやってね。’と合図を送る。すると鼻で笑うようにふっと笑って、緊張で硬い鋼鉄のようになっていた右の握りこぶしがあたかも紙のように柔らかくなって、グッとその右の手をかざして、ビシッと親指だけを勇ましくかざして合図を送った。すると今度はロケットも鼻で“ふっ”笑った。レジェンドがゆっくりと右の手を所持しているマシンガンのトリガー部分にゆっくりと持っていき、トリガーを握ったときには既にさっきと同じ鋼鉄のような硬い握りこぶしと化していた。2人は足音を殺してソロリソロリと光が漏れる扉に近づいていった。レジェンドが素早く扉の向こう側に陣取って中の様子を見える限りで伺った。ジーっと凝視した後、特に人がいる様子はないと判断するとロケットに首を立てに一回振って合図を送った。それは中は異常なし、突入準備よし、いつでもあけてよしという意味だということはすぐさま察知した。すると扉のすぐそばで腰を落として構えているロケットはカウント3で突入をしようと合図を送ると首を立てに一回振った。レジェンドにグーを見せる。これは突入準備という意味である。その後一呼吸を入れてから、手で3、2、1、とやって、そのかざした1の形の手を勢いよく振り下ろした。それと同時に扉の取っ手に手をかけていた左手をさらに勢いよく、引いた。間髪をいれずにものすごい速さでレジェンドが部屋の中に入る。物凄い形相でそれはもう赤鬼を髣髴とさせるほどの形相だった。だがあたりを見回して、中に人がいないことをじっくりと確認すると小さくその扉を“コン”とたたいた。だがマシンガンを下ろさなかった。続いて入ってきたロケットも同様に勢いよく入って部屋の中を見渡す。
「この部屋には俺とお前意外誰もいない。それより外側を確認しろ!」
 と小声でささやくとロケットは顔を赤くしてアタフタと部屋の外の安全確認を済ませた。その間に手際よく部屋の隅々まで安全確認を行っている。さらには奥の部屋の確認も一人で済ませてしまった。奥の部屋の鍵はこちらから鍵をかけた。もしも、敵が奥の部屋に潜んでいて一気にロケットたちをめがけて突進してくるのを防ぐ唯一の即席で簡易の防衛線を設置したようなものである。少し気持ちを休めてからレジェンドがかなり大きなコンピューターがたくさんおいてある席に“ドカッ”と座って、“シュバッ”と両手を自分の顔も前に持ってきておもむろに手を動かして“ゴキバキゴキバキメキ”と手の骨を鳴らすと「さぁて、一丁仕事をおっぱじめるか!」と独り言を小声でつぶやいた。アローには及ばないが、それなりの速さで大きなコンピューターの内容を解析していく。ある程度内容を目の前にあるモニターに表示すると、皆に通信を入れた「Legend for all Legend for all(レジェンドから全隊員へ、レジェンドから全隊員へ)聞こえるか?」
 一番最初に反応したのはアローだった。
「こちらアロー。どうですか?進入に成功しましたか?」
 その次に一呼吸おいて
「こちらジャック。取ったか?」
 どこか余裕を漂わせる口調で
「あぁ〜取ったよ〜。今からこのデカ物をアローが進入できるように細工する。それまでもう少し辛抱してくれ。」
「了解です。では宜しくお願いします。」
 とかなりドスの入った声で
「おうよ!」
 と返事をする。どことなく鼻歌混じりな気がするがどうでも良くてツッコム気にもなれなかった。するとコンピューターの独特の音が鳴る。“ピロン”と音とともになって出てきたメッセージには設定を変更しますか?と表示された。レジェンドは迷わずYESの方向にマウスを走らせて“クリック”と押した。すると今度はそのモニターから設定を変更しています。とのことだ。さらに鼻歌が、謎の曲へと変化して言った。ロケットは銃を構えたまま心の中で――何だ〜?この歌?聞いたことない?-―すると再びコンピューターの独特の音ともに設定が変更されました。と表示された。レジェンドは軽くガッツポーズをして早速アローに通信を入れた。
「こちらレジェンドだ!今しがた設定を変更した。この後の作業はお宅の仕事だ。宜しく頼むぞ!」
「ご苦労様です。もしそちらのモニターで何か異変を知らせるメッセージが表示された随時教えてください。単純な電子統合装置だとは思いますが、何らかの仕掛けがある可能性がありますので、一応用心しておかないと。」
「分かった。それぐらいはお安い御用だ」
 通信が切れた瞬間、モニターのメッセージに何者かがこのコンピューターに侵入しました。当コンピューターの対侵入者用の防衛行動を取ります。案の定というか、まさかというか・・・不安になったレジェンドは慌ててアローに通信を入れた。
「おい、アロー!なんだかまずい雰囲気だぞ!防衛行動を取りますってメッセージが表示されたぞ!まずいんじゃないのか!?」
 するとかなり余裕とクールな声でアローが反応する。
「心配ありませんよ。侵入する前に防衛行動を無力化するコンピューターウィルスを既に撒き散らせて起きましたから。心配ありませんよ。もし防衛行動がコンピューターウィルスを無力化して、僕のコンピューターを襲ってきても全部叩き落しますからご心配なく。」
 チョッと今は忙しいから話しかけないでくれというような冷静で熱のこもった怒りを感じた。彼はコンピューターに関することになると以上に人一倍誰よりもうるさくなるのが欠点である。レジェンドがはらはらしながら見守る中、アローは危なげなく統合管理システムの変更に成功。
「設定の変更を完了しました。これから皆さんのこちら側のオンライン通信用システム経由で皆さんの脳内通信機に接続します。その後は脳内通信機がマップを映し出して、リアルタイムで警備用アンドロイドの現在位置と自分の現在位置が把握できるようになります。」
 その声を聞いたジャックが胸をホッとなで下ろして様な声で
「そいつは助かる。さっきからなんかの機動音だけは聞こえるのだが、正確な位置が分からなくて困っていたところだ。よし、すぐに作業を行ってくれ。マップが表示された後は一度一階のエントランスに集合して、そこから地下構造部の研究区域の捜索を開始する。」
 するとこの通信を聞いていた残りの三人が
「了解。」
 と声をそろえた。すると、各隊員の脳内通信機にマップが表示された。さらにアローから追申の通信が来る。
「マップの中心にある青いマーカーが隊長です。その隣の黄色いマーカーがジュピターです。一階で緑色のマーカーがレジェンドで、赤いマーカーがロケットです。黒色のマーカーが敵アンドロイドです。」
 すると感嘆とした声でレジェンドが
「ほぉーう。これは相当見やすいマップだな!日本の技術もかなり進んだもんだ。これだとかなり任務の遂行が早くて済むな!」
 と自慢げにロケットが
「すごいでしょ!?これが日本の新世代電子機器技術よ!!アメリカよりも電子機器の精度が比べ物にならないんだから!!」
 この言葉は聞き捨てならないといわんばかりに
「ふん。アメリカとかユーロ連合から輸入して作ってるだけじゃないか!ただ技術が少し秀でてるだけだろ」
 嫌味をかまされて黙り込んでしまう。水をさすようにジャックが
「そこまでにしろ!俺とジャックは現在3階にいる。お前らは先にエントランスに行って待っててくれ!」
「了解した!」
 通信をきるとレジェンドはロケットに話しかけた。
「エントランスに行って先に陣取りをするぞ!」
 するとムスッとした様子でその場を動こうとしない。さすがに忍耐強いレジェンドも苛立ちを覚えて追い討ちをかけるように
「ここにスタン・グレネード(強烈な轟音とストロボライトの数十倍もの光を放ち、敵を轟音によって気絶させ、数十倍もの光によって一時的に敵の視力を奪う非殺傷兵器である。)をこの部屋に全部撒き散らして敵のアンドロイドが来るように背けてやろうか?」
 さすがにこれには背筋が寒くなったのでいそいそとレジェンドの後ろを付いていった。―――「やっぱりこういう精密でリアルタイムで現在位置が分かるレーダーって言うのは全く持って重宝するようなぁ〜」
 ジャックも関心の声を通信であげている。
「リアルタイムで警備用アンドロイドの位置がリアルタイムで分かるんだったらとっとと階段を下りてレジェンドたちと合流して例の遺伝子を探し当てて報告書をまとめてテストに向けての最終確認をしたいの!!」
 するとはじめて聞いたかのようにジャックが改めて聞いた。
「何だ?テストって?」
 少し苛立ちながら面倒くさく答えた。
「あんたねぇ〜。先生の話聞いてなかったの!?この学校の名物で毎年学年はじめに一つ前の学年の総復習テストを全学年で実施するの!」
 さすがに驚いた様子を隠せずに額のあたりに汗を浮かべて「うっ・・・そんな事も行って多様な気がする・・・」
 ジャックののうのうとした反応に呆れて
「かぁ〜・・・あんたってねぇ〜・・・何でそんなに呆けてるのよ!」
「それで、その日って弁当いるのか!?」
 無視してさらに聞いた。
「人の話を無視するんじゃない!・・・ったくもう!その日は一気に五教科やるから弁当もいるの!」
 とロケットが答えるとジャックは落胆した様子で
「そんな・・・そんな事いってなかったぞ!その話は本当か!?もし本当だとしたら当日は自分で弁当を作らないといけないはめになってしまうではないか!まずい!非常にまずいぞ!!」と銃を構えていたその両手を頭に持っていって頭を抱えながら悶えている。
「あ〜〜〜もう!うるさいわね!私はあんたと違って頭はそんなに良くないの!あんたみたいに弁当のことを気にしてる暇はないの!今日こんなミッションがなかったら寝ないで必死になって勉強してるところよ!!!」
 と怒鳴りながらジャックに言うがその当のジャックはといえばまだ
「明日の弁当のおかずは何にすればいいんだぁ〜」
 などと頭を抱えながら悶えている。
「聞けよ!」
 などとかなり重要そうで重要そうでもない他愛もない話をしながら一階につながる階段を下りていると何か機械が動くような音が当たりに響き渡る。この音を悶えながらも聞き逃さなかったジャックはすかさず頭を抱えていた手を銃に戻してすぐに警戒モードに入った。
「オイ!今の音って・・・まさか!?」
「そのまさかかもね!」
 2人は目をキッときつくしてあたりを見渡した。音を立てずにそろりと階段を下りていく。真ん中ぐらいまで階段を下りたところで再び“グーーン、グーーン”とう音が響き渡り一瞬ビクッと体が反応する。その音がどんどん大きく、感覚も短く断続的に階段に響き渡る。下に下りないといけないのに、体が、足が、手が動かない。まさかこんなところで金縛りにあうとは・・・全く付いていない。気が付くと全身が汗で全身がびっしょりになっていてまだ毛穴という毛穴から汗が噴出すのが分かる。その噴出した汗が潜入スーツに張り付いていきなんとも気持ち悪い。深く深呼吸をして改めて銃を握る手を握りなおして気合を入れなおす。先ほどよりもさらに音を立てずに階段に降りていく。一歩、また一歩と一階に近づいていく。脳内通信には黒いマーカー、つまり敵を表すようなものは存在しない。ついに一階の階段の壁まで来てしまった。ジャックが通信で
「俺が先に出て敵を始末する。俺が飛び出してしばらくしたらお前は俺の後ろを通ってレジェンドたちと合流しろ!」
「分かったわ。いざとなったら私も応戦するから。」
「頼む」
 指で3・2・1と合図をするとジャックは勢いよく壁をするりと交わしながら180度回転して銃を突き出した。
「・・・・・・・・?」
 そこには誰も何もなくただ大きな通風孔のファンの回る音だけが響いていた。一応といっては難だがあたりを警戒した。ジュピターもサイレンサーで消された銃声がしないことに不安を覚えて壁から銃を構えて飛び出してくる。するとジャックはその通風孔の扉を開けてビームライトで中を確認していた。銃を下ろしてジャックに歩み寄る。
「問題ない。ただの換気扇の起動する音だった。」
「ふぅー。全く・・・ひやひやさせられたわ。」
「あぁー。俺もだ。階段からひょっこりとアンドロイドが顔を覗かせたらどうしようかと思った。」
「本当ね。」
 ジャックが額にびっしりと付いた汗をスニーキング・スーツの裾で拭うと
「気を取り直していこうか?もうすぐで合流地点だ。」
「急ぎましょう。」
 180度方向転換して走り出した。

 第二話・陰の実力前編・完