消え行く夕日 1
作:えくすとら





「へー。さすがは、コーストだな。カトプレパスを倒すとは」
「なあに。お前さんが以前使ったテを思い出しただけの事さ」
 と、コーストは苦笑して言った。
 コーストの姿は、二十歳後半辺で。紫色の髪はとがった耳元を越え肩まで伸びており、容貌(ようぼう)は瞳孔が立てに割れ、まばゆいのをたたえる肌の色と、鮮麗された顔立ち。緑色の色彩模様ケープにミスリルの服と青いズボンとブーツを着ている。
「奴に、鏡を見せるテか? あれは、傑作だね。奴メ、自分の石化魔法で石になる瞬間が大爆笑モノだったな」
 それから、しばし彼は私に素晴らしい限りの冒険話を語ってくれた。
 私は幼い頃、エルフである彼は当時、見た目は十代後半辺りなのにすでに歳は三十を超えていた。
 コーストが語る冒険はとても最高である。辛い話でもあった。
 実際、自分が冒険に出てみると出会いや別れなど。もっとも、酷く精神的に痛めつけられた事もあった。
「それじゃ、僕はこの辺で失礼するよ」
「ああ。また会おうぜ」
 と、言って私はコーストが出行く瞬間は見ずに窓の方へと振り向いた。 
 ドアの閉まる音が聞こえ、そこをみると私だけが部屋に取り残された。
 部屋を見ると、そこは説明するのもバカらしいとある魔導病院の個室だった。
 ほとんどが、白一色に装飾されたあきやすい部屋だ。
 ゆいつ、変わるのは私の孫娘が持って来る花瓶に飾られた花だった。
 回りをカスミの花で囲み。赤、黄のチューリップが四、五本、ホトケノザが数本サブメインに立ち。私の大好きなアジサイの花がいつもメインになっていた。
 その飾り方は、上出来とは言えなかった。だが、毎回孫娘が来るたびバリエーションの飾り方が変わって来る。
 前は、黄色いパンジーの花数本とか、その前は球根の赤いチューリップ一本。ナンって事もあった。
 私は、机の上に置かれたオレンジ・ジュースを軽くノドに流し込んだ。
 コップをもとに戻し、右手を枕代わりにした。本当なら、両手を枕にしたいが……まあ今はしかたないな。
「しばらく。寝るか……」
 本当に、しばらく寝るだけだから。今は……

 朝日に照らされる木々の葉が、突如(とつじょ)ざわめいた。
 私は、街道に佇み林の向こうにいる相手の気配を探った。
「ひょっとして、またあいつなの?」
 と、言ったのはコーネリア=シェルブールだった。
 歳の頃は、十七歳。淡い緑色の長髪。容貌は、可愛い美少女でスタイルも申し分なく。黒い外套(マント)に蒼(あお)い魔導士スタイルの服を着ている。
「おまえさんは、コーネリアをカバーしろっ!」  
 魔導型・ショットガンを構え、コーストが私に言い放つ。
 周囲には、異様な殺気が満ち溢(あふ)れていた。
 向こうは、メインで残りは雑魚(ざこ)ばかりだろう。しかし、いくら雑魚でも決して油断はできない。
 どぅっ、ぐおぉぉぉぉぉぉんんっ!
 雄叫(おたけ)びを上げ、右側の茂(しげ)みからレッサー・デーモンが、一匹飛び出した。
 コーストは即座に、レッサー・デーモンに弾丸を二発ほど打ち込んだ。
 デーモンは、激しく体を揺らし、粉々に砕け散った。
 更に、反対側からは死霊騎士(デュラハン)が、数十匹出現した。
 それらは、いっせいに周囲を囲み。辺りに殺気を生み始めた。

                         <つづく>