消え行く夕日 2
作:えくすとら





「やれやれやっと見付けましたぜ。ジャックさんよ」
 と月並みのセリフを吹かせ、一人の男が声を上げ、死霊騎士(デュハラン)達の間から割って出た。
「レアル!」
 思わず僕は彼の名を叫んだ。
 レアルと名のるその男は、黒い鎧と兜を全身に装備で硬め、赤いラインのデザインが施されている。彼の顔は黒いマスクで覆われていて表情は読みとれないが、あの柔らかい目つきは楽に見てと取れる。
「それで、どうかね? コーネリアさん」と、レアルは軽い口調で言った。「俺の呪いは解けたかい」
「貴様! とっと彼女の呪いを解いてもらおうかっ!」僕は溜まりに溜まった怒りを、一気に吐き出し爆発させた。
「おいおい。そいつはできない相談だぜ」と、レアルは軽く受け流す。それが、更に僕をイライラさせた。
「もっとも、そっちの女が俺にひっついたら、の話だけどね」
「悪いけど、私は『ひっついたら、ひっついたら』って私はひっつき虫じゃないのよ!」
「彼女は、貴様の所なんかに行きたくない様だぜ」僕は、コーネリアをかばう様にして、レアルの視覚から覆い隠した。
「やれやれ、しかたないですねぇ」そう言ってレアルはわずかに口元で笑った。「でも、いつかはそうなる日が来るからね……」
 ……それが、戦いの合図となったのだ。と、最初はレアル以外そう思った。
 しかし、それは戦いの合図何かではなく。これから始まる「魔の呪い」が秒読みを始める合図だったのだから。
 
 轟く咆哮をうながし、死霊騎士たちが集団で攻め寄って来た。
 まずは、コーストの放った魔導弾丸が二発命中し、二体は散りとなったが、まだ数体いる死霊騎士たちにはまだ足りないくらいだ。
 うっおおぉぉぉっ!
 僕も彼らに負けない様に、叫び声をあげながら迫り来る死霊騎士たちを剣で牽制する。 
そして、スキができた者から魔導の力で強化した剣で切り裂いて行った。
 何も考えなしに、僕ただ熱く燃えた。コーネリアの呪いを解きたい一心で……
 ようやく、死霊騎士たちが半数以下減ってきた頃に、レアルがバスター・ソード両手に突っ込んできた。
「はい。プレゼント」言って、レアルは剣を僕の方へ放り投げた。
「……なっ!?」僕は一瞬驚愕したが、剣でそれを払いのける事にした。
「ダメだ!」コーストが叫んだ時にはもう遅かった。「さわるなっ!」僕は、すでにその時思いっきり、飛んでくる剣を薙ぎ払っていた。 
 そして、からだ全体が閃光に包まれ、視界が真っ白になった。その後すぐに、わずかだが、火事を目の前見るよりも、はるかに熱い爆炎と煙に包み込まれた。やがて僕の体は、人形よりも軽く吹き飛ばされ木の幹にたたき付けられた。
 その時までは、不思議と痛みはなかった。
 だが、すぐに激しい痛みが、僕の体を駆け巡るだけでは飽きたらず、神経に食いつきマヒをおこし始めていた。 
 ……くぅぅっ! ちくしょう!
「はっはっはっ! やはり、君は私に勝てない様だね」
 レアルの嘲笑が幽かに響く。
「最も、昔から君は『そうだった』けどね……ジャック君……」
 彼は無造作な笑みを作った。
 ……そうだ。僕は昔から……こいつにだけは……
 レアルの言葉で、僕は過去に閉じたモノ。とても重い蓋をした、腐敗物を開けさせられた……
                                             [続く]