Survivor
作:tsukikasa





scene1:現在〜終わりない狙撃〜

 地面の振動から数キロ先を移動する小隊の存在を察知すると、身体は淀みない動きで自然に片膝を着いた射撃姿勢を取った。その動きを見ている誰かがもし居たとしても、それを防衛本能と呼ぶ事には躊躇うだろう。生物的な匂いの一切排されたその精密な動きは……きっと自動化された機械を思わせる。
 目標と自分の位置する平地に、枯れかけた潅木の点在していることは望ましい狙撃条件の一つではあったが、それも今の自分にとっては副次的な情報に過ぎなかった。
 ……全ては一方的に行われる。
 弾丸は対象の知覚の外側から、圧倒的な精密度を持って放たれるだろう。今の僕にはそれができた。
 ……今は考えるときじゃない。ただ引き金を引くときだ。
 自分自身へと言い含める必要があるのは、僕がまだ心を完全に失ってはいないということに他ならない。例え、その葛藤が身体の安定を1ミリたりとも損なう事がなかったとしても。
 目の前にしている相手、奴らにも心と呼べるものがあるのか。ゲームマスターと名乗った彼に尋ねた事がある。
「持っているとも。君とは構造の異なる心を。……この情報を君がどう判断するかは自由だし、どう罪悪感の低減に使おうと私は関知しないがね」それが答え。
 太陽が金属質のボディをじりじりと焦がす。狙いを定める。息を詰まらせるような停滞と、精神的な空隙にできる一瞬の静寂。
 そして出し抜けに、銃口から――右腕そのものの銃砲から弾丸を撃ち放つ。頭の中でロックしていたターゲットの位置に沿って、続けざまに行なわれる狙撃。……まるで全てが計算し尽くされた結果であったかのように、弾丸はその全てを狙い違わず撃ち抜いた。
 そして孔を穿たれた標的が次々と地面に倒れ伏すのを確認した時には、僕はまた周囲十数キロにも及ぶ孤独を手にしていた。
 幾度となく繰り返され、そしてこれからも繰り返されるであろう狩りの光景。それは、確実に僕の心を蝕んでいく。
 あとどれだけ撃ち抜けば辿り着けるのだろうか。自分の望む終着など本当にあるのだろうか。……疑念は途切れる事なく後から湧いてくる。
 叫び声を上げて、這い寄る停滞感を振り払って、何もかもを投げ出し忘れる事が出来たなら……それはどれだけ甘美な誘惑だろう。
 だが僕は、その全てを行なう代わりに考える。何の為に僕は戻ってきたのか。そしてもう一度自分を奮い立たせる。
 そう、戦う事は自分で選んだんだ。


scene2:回想〜GMの語る世界の仕組み〜

 ……鮮明に思い出せる。ゲームマスターに会った時の事は。
「ゲームオーバーだ、キーメル君」
 全身黒尽くめの道化師。奴はそんな外装をしていた。
 滔々と僕に語りかけるGM。まるでそこで初めて人生の電源が入ったように、唐突にその状況から記憶のシーンは始まった。……正確には僕の人生はそこで一度終わった、ということになるらしいが。
「さぁ、スコアの清算だ」
 GMは嬉しそうな素振りを隠そうともせず一方的に話を進める。
「まず君はクランAのスナイパータイプ、元値は100スヘンだ」
 聞き慣れない言葉に、僕は混乱と戸惑いを隠せない。
「クランAって何ですか?」
「クランAのものはクランBのものと殺しあう。以上。ほかに質問は?」
「……あなたは誰?」
「私はこの世界のゲームマスター。法であり、神であり、絶対の審判者」
 自分が今、今まで生きてきた世界の仕組みの一端を告げられている事実をおぼろげに認識しながらも、頭の奥底は麻酔を掛けられたようにくらくらと痺れていた。
 世界についてあまりにも僕は知らない事が多すぎた。
「100スヘンってのは……どういう意味ですか?」
「まぁ、要するにゲームポイントだよ。全てのプレイヤーのボディはタイプによって、スヘンが決められている。当然強いほどスヘンの値が大きい。そして、スヘンは他のキャラの命を奪うことによって手に入る」
 ゲーム、命、その言葉の対比だけが妙に重く感じられた。
「清算の話をしよう。清算ではスヘンの収支が何よりも重要となる。全てのプレイヤーには予め100スヘンの貸付がしてある。だから、生存中に最低一人殺すことが義務な訳だ。……そして収支の結果によるプレイヤーの行く末は三つ」
 GMは言いながら指を一つ立てる。相変わらず人を食った調子だったが、その目にはさっきまではなかったギラギラとした不穏な輝きが見て取れた。
「まず最初のケース。収支がプラスで終わったものの選択肢は二つある。エデンと呼ばれる楽園へ導かれ、そこで等価の幸いを得るか、手に入れたスヘンと引き換えにそれに見合った新しいボディを手に入れ、またゲームに戻るかだ」
 GMが二本目の指を立てる。
「二つ目のケース。収支が0だったもの。こいつも選択は二つ。一つは無に帰す事。全ての束縛からの永久の解放であり、存在の消滅。もう一つは、100スヘンの貸付と共にもう一度ゲームをやり直すこと。……100スヘンだけは常に無条件で借りられる」
 いよいよ目の輝きを妖しくさせながらGMが3本目の指を立てる。
「そして最後のケース。収支がマイナスのまま終わりを迎えたものには選択肢がない。再生が許されず、等価の苦痛の中に落とされる。アビスと呼ばれる闇への半永久的な幽閉、それだけが末路」
 そこでGMは大仰に一息を付く。告げられるその声はまさに絶対の審判だった。
「……おめでとう、と言うべきかなキーメル君。君は100スヘンのボディを一体仕留めている……つまり収支はゼロ。選択の余地がある」
 僕はそこで喜ぶべきだっただろうか。
 理不尽な世界の理を一方的に押し付けられて、それを受け入れる事で満足できただろうか。
 安堵感を一瞬でも覚えなかったと言えば嘘になる。それでも、僕は自分の信じる選択がしたかった。
「その100スヘンを人に譲る事はできませんか?」
 突然の提案にGMは興味深そうに僕の顔を一瞥した。何を馬鹿な事を……そう思っているに違いない。
「そして、どんな形でもいい。僕をもう1度あの世界に戻してください」
 笑っているのか、憐れんでいるのか……GMは目を細めたがそこから感情を正確に読み取る事はできない。
「一応、相手の名前を聞いておこう」
 GMが冷徹に問う。その態度は僕に吐き気のような感情を催させた。
「ハッシュ、それが彼の名です」


scene3:回想〜ハッシュと居た世界〜

 結局のところ、僕がこの世界で生を受けて過ごした時間のほとんどは彼と共にあった。彼の方がこの世界の先輩で、僕らはお互いが生き抜くために助け合った。
 ゲーム、ということになるのだろう。結局その全ての日々も。
 世界には確かに対立する二つのクランがあって、僕らはいつでも命を狙われていた。生き延びるために、僕らはいつでも逃げ続けていた。
 その日、僕らは新しい住処を探していた。今まで拠点にしていた森の周囲の勢力図が変わり、安全とは言えなくなった為だ。
「ここらは前居た森と違って随分と乾燥しているな。地面も、空気も」
 前を歩くハッシュが呟く。
「そうだね。でも、乾燥してたら何か不味い事あるかな」
「いや、索敵には却って好都合なぐらいだ」
 ハッシュは索敵やトラップの探知に僕より数段長けていた。能力から察するに、僕のボディがスナイパータイプで彼はレンジャータイプと言った所だろう。
「……ところで、森での戦闘を覚えているか? お前が敵を仕留めた」
「忘れないよ。ハッシュが囮になって敵の気を引き付けてくれてなければ、あの結果はなかった」
「追い詰められた末の苦肉の策だったけどな」
「ハッシュは……なんで、あの時進んで囮に……」
 僕は今まで心に引っかかっていた事を思い切って尋ねる。
 ハッシュは大きく溜息をついてみせると、
「俺のほうが早く動ける。お前の方が上手く撃てる。それだけの事さ。難しく考えるなよ」
 そう事も無げに言ってのけた。こんな時、僕は本当に彼には敵わないと思う。
「それに、確かに危険だったが、おかげで俺達でも敵を倒せると知る事が出来た」
 前を歩くハッシュの表情は伺えなかったが、その声にはいつになく力が入っていた。
「キーメル、俺達は今までずっと逃げてきた。本当は力があったのに。世界の理不尽さに流されるばかりで抗う事もしなかった」
「そうだね……でもやっぱり、戦うのは怖いよ。逃げだしたくなるし。殺す事だって、きっと慣れる事はない」
「確かに、殺す側になっても殺される側になっても、それで特別な何かを得られるとは思わない。それでも……」
 ハッシュは言い掛けて途中で口を噤む。
「……今まで言う事もなかったが、最初にお前に会った時――廃墟の街で立ち尽くしてるお前と初めて言葉を交わした時、俺は自分の中に今まで見つけることのできなかった新しい何かが生まれるのを感じたんだ。……ずっと探してきたものを見付けた気がした。追い立てられる獣のように、一人で生きてきた時には決して見付ける事の出来なかった何かを……」
 彼の瞳は静かに遠くを見ていた。
「二人になって、確かに俺の世界は変わった。……だが、生き方を変える事はできなかった。相変わらず俺は逃げ続けていた。……キーメル、生き延びる事にだけ執着して死んでいくのなら、それが早いか遅いかに俺は価値を見出さない。だから……状況が要請するのなら、俺は選ぼうと思ったんだ。戦う事、自分の信じる事を」
 僕は彼の言葉に黙って耳を傾け、その一つ一つの言葉を噛み締めた。僕は彼のことを知っているようで知らない。
「悪いな、感傷的になっちまった」
 深刻な気配は消え、そう謝る様子は既にいつものハッシュだった。
「キーメル、分かるか? 前方に町がある」
 言われて視線を送ると、荒野の向こう、岩肌を晒す隆起した山脈の手前に確かに建物の影を確認できた。
「今のところ動くものは感知できないな……行ってみよう」
 それから徐々に建物の近くまで歩を進め、慎重に町に踏み入れる。軒を連ねる建物はどれも役割を継続してるようには見えない。こういった使われない人工の建造物は今までも各地にあった。当然その存在を疑問に思う事もあったが、今にして思えばそれはただ舞台としてそこにあっただけなのだ。
「まだ安全だと断言はできないが、今日はここで過ごす事になりそうだな。辺りの見晴らしも悪くない。……あとは町の向こう側の様子次第か」
 町の向こう側は、切り立った岩山が町の外壁に沿って水平方向にずっと続いているのがここからでも確認できた。
「キーメル、適当な建物の上階で見張りを頼む」
 そう言い残すと、ハッシュは単身岩山付近の調査に向かって行く。
 それから僕は言われた通り比較的背の高い建物を選んで見張りに立ち、ハッシュの戻ってきたのは日の暮れかけた頃だった。
 ハッシュの話では、岩山の切れ目に森へ抜ける一本道があるらしい。調査は明日する事に決め、今夜は交代で見張りをしながら夜を明かす事になった。……そう、一夜を明かす程度の安全は手に入れたつもりでいた。
「くそっ、キーメル窓から飛び降りるぞ!」
 唐突にハッシュがそう叫んだのは夜番を始めてから二、三時間もした頃だった。
 ドゴッ! ガラガラガラガラ。
 反射的に宙へ身を躍らせた直後、何かが衝突する轟音と共に建物が倒壊していく。
「ハッシュ! これは……」
 土煙と建造材の破片が舞う中、地面を転がりながら呼びかける。ハッシュも同じようにして近くの地面に膝を突いていた。
「どうやら夜までは完全に活動を停止するタイプの敵だったらしい。ずっと荒野の砂の中に潜ませていたんだ……あの巨体をな」
 瓦礫を押しのけて、そこから平板で光沢のあるボディが姿を現す。巨大な蠍のようなフォルムをしている。恐らくこちらの数倍の体重はあるだろう。
「厳しいね……」
 僕らはお互い一瞬視線を合わせると、路地に向かって同時に走り出した。
 ザザザザッザザザッ!
 すぐ後ろを砂を巻き上げて進む音が猛追する。
「ちっ、どうやって走ってやがるんだあいつは!」
 入り組んだ路地を選んでジグザグに走るが、追跡者は建物の壁をバキバキと壊しながらどこまでも構わず突進してくる。
「こっちだ」
 何度目かの角を曲がった直後、突然ハッシュが僕を細い路地裏に引き入れる。
 この路からは町を出られないんじゃ……そう言いかけた僕の口をハッシュが塞ぐ。
「静かに……」
 ズドッ!
 突然、町の向こう側で衝撃音が響く。
「建物の一つにトラップを仕掛けておいた……壁が内側に向かって崩壊するようにだ。それを起動させた。……あの様子じゃトラップそのものを仕掛けても倒せそうにないからな」
 ザザザザッ!
 隠れている路地の横を、囮の衝撃音に導かれて奴が通り過ぎていく。
「今のうちに逃げるぞ。岩山の切れ目を行く道がある」
 蠍の怪物が十分に行き過ぎるのを待って走り出すが、怪物はすぐに気づいたらしく再びこちらに進路を変える。
 建物が途切れると、岩肌に挟まれた道が遠目に見える。背後からの壁を壊す音と砂を掻き揚げる音は徐々に距離を狭め、近付いてくる。
「途中で道が一度二つに分岐する。二手に分かれて撹乱するんだ。あとで合流しよう」
 有無を言わせぬ調子で言うと、ハッシュは僕の肩を軽く左へ突き放し、自分は右の壁面に沿って走り出す。僕も必死で走った。考える余裕はない。
 やがて言葉通り、分岐した道が目に入る。
「見つけるんだ、お前もな」
 その道へ飛び込む直前ハッシュが呟く。何の事か理解できない。ただ、この場に似つかわしくないほど優しい声だけが印象に残った。――この言葉の意味を、未だに僕は正確に知る事ができない。
 一人になってからも、僕は走り続けた。だが頭の中はひどく混乱していた。
 道はやがて合流する。それだけを信じようとした。そして待った。いつ右側の壁面が途切れ、そこからハッシュが現れるのかと。
 だが、合流する道が現れる事はいつまでもなく、どこまで走っても一本道が続いた。巨大蠍が追ってくる様子もない。
 やがて岩肌を抜け視界が開けると、橋の袂に辿り着いた。深い峡谷を渡るように賭けられた橋で、見渡した限りでは橋はそれ一つしか見当たらない。向こう岸は森のようだった。
 僕は橋を渡ると、木陰に身を潜めてハッシュが来るのを待った。……やり場のない不安と疑問が豪雨のように頭の中に降り注ぐ。
 彼は僕なんかよりずっと足が速いんだ……逃げ切れたはずだ。そう信じたかった。
 もしかしたら僕より先にこの森についているかもしれない。もう少し奥まったところに入って、僕が追いつくのを待っているかもしれない。
 ……だが、頭の中にもう一つの否定的な声が響く。
 待てよ、お前は合流する道があるのを見なかったんだぞ。橋は一つしか掛かっていないんだ。……当然の矛盾が頭の中で渦巻く。
 平静を失ったままふらふらと森へ足を踏み入れたその時、ピンッと足元で何かが弾ける音がした。ワイヤートラップ。しまったと思った時には全てが遅かった。
 爆発が、意識を吹き飛ばす。
 結局その場所は既に敵の勢力範囲だったのだ。


scene4:回想〜GMとの取り引き〜

「そんな提案が通ると思っているのかね」
 答えはあまりに素っ気無いものだった。だが僕はGMを真っ直ぐ見つめて言葉を返す。
「都合のいい頼みだということは分かっています。でも僕はお願いする事しかしません」
 GMがしばし無言になる。
「私が怖くはないかね」
「正直に言えば、恐れはあります。でも、自分に対して絶対的な存在に怯えるのは無意味でしょう。あなたがその気になれば最初から僕をどうとでもできるんですから。……以前ならこんな割り切った考え方はできなかったかもしれませんが」
 萎縮しないように、僕は続けて言葉を紡ぐ。さらけ出す、ただ自分の言葉にできる全てを。
「あなたは神様かもしれない。けど、今も僕は一つだけ、自分の心だけは自分のものだと信じています。心さえもあなたがコントロールしているのだとしても、僕には自分を信じる事しかできない。今僕が価値を見出せるのは自分で選ぶことだけなんです。……それがあなたにとってどれだけ愚かしく見えたとしても」
 GMはまた一際目を細める。何度目かの静寂が訪れたが、心は不思議とさっきより平静だった。
「君にとってその男の存在は?」
 僕は質問の答えをゆっくりと考えた。その答えはもしかしたら僕自身が探していたものかもしれない。
「僕は、彼がいるから生きていました。それが全てです」
 あの時、ハッシュが進んだもう一つの道は袋小路だった。今なら分かる。彼は知りながら道を選んだ。僕らを追いかけてきたあいつもその事を知っていたから迷わずハッシュを捕まえに行ったんだ。そう、ハッシュは知っていた。二人一緒に逃げたなら、僕が絶対に逃げ切れなかったことも……。
「なるほど、実に興味深い。気に入ったよ。チャンスを与えよう。……後悔するためのチャンスになるかもしれないがね」
 GMの口の端が、一瞬嫌らしく歪んだ気がした。
「君は私と賭けをするんだ。まずは君を新しいボディと共に転生させてやろう。そして同時に莫大なスヘンの負債を負ってもらう。額は明かさない。私が相応しいと思っただけを課す。それが現実的に返せる額かどうかも君に知る術はない。そしてもし全ての返済が終わったなら、100スヘンは彼に与えよう。だが、それ以上の干渉はしない。再会を取り計らうつもりもないし、彼が転生したとしても君に会える保障などない。そう、これだけが私が君に与えうるチャンスだ」
 言いようのない予感に、身震いを覚えた。
「フフフ……こう見えても私は寛大でね。全く見込みのない無理難題を吹っかけるつもりはないさ。相応しいボディをやろう……この長い旅路に」


scene5:現在〜そして〜

 砂塵の舞う平野。空気は乾いていた。いつかと同じように。
 視界に入ったのは近接戦闘を主体とするラビットタイプが二体。大した敵じゃない。仕留められる相手だ、今までそうしてきたように。
 幾度となく繰り返される場景は、既視感を通り越して日常になる。日常は正否の判断を麻痺させる。それでも……。
 狙いを定める。機械のように淀みのない動きで。
 この長い道程にいつか躓いて、自分がアビスに落とされる事への恐怖は確かにあった。
 それに……、時々思う。賽の川原で石を積み続けるように、いつ終わるとも知れない債務を果たし続けるこの世界こそが最果てなんじゃないかって。
 それでも、立ち止まるつもりはなかった。
 問題が避けられない時、選択は必ず必要になる。学んだ考えはまだ変わっていない。
 ……もしも世界に「尊い心」や「拙い心」というものが存在したとしても、それを持つものは自分でそれを見付ける事はできないだろう。それは他人の中にだけ、きっと見付ける事が出来る。恐らくは他の多くの事柄も。
 僕はずっと探している。色々な答えを。
 自分の中に、答えを見つけてくれる存在を。
 ――そして引き金を引く。