太刀
作:砂時





 0
「そこのお主……生きておるのか?」
 女の声に顔を上げてみれば、十数人の従者に護られた輿の窓から少女が顔を覗かせ、心配そうな眼差しでこちらを見つめていた。
 艶やかな黒髪。すらりと整った面立ち。やや高めの鼻や勝気そうな瞳はどこか意思の強さを感じさせたが、それは決して不愉快なものではなかった。
「……まだ生きてはいるさ」
 輿の豪華さや従者の数を見ると、どうやらかなり有力な豪族の娘であるらしい。
 お嬢様の気紛れか。男は皮肉っぽく苦笑すると、血に濡れた左腕を指差した。
「この通り、重傷だがな」
「あ……これはすまぬことを聞いた。これ、誰かあの者に手当てをしてやっておくれ」
 女の言葉に、従者たちは困惑した表情で顔を見合わせた。
「姫様。この様な下賎の者と口を利いてはなりませぬ」
「本日はめでたき輿入れの日。お戯れは御遠慮くだされ」
「ええい。私の言うことが聞けないと申すか?」
 従者たちは口々に制止するが、女は一向に耳を傾けようとしない。
 やがて女は意外と身軽な動作で輿から飛び降りると、真っ白い足袋が汚れることも気にせずに男の元まで駆け寄り、傷ついていない右腕を掴んだ。
「さあ、私と共に来るのじゃ」
 柔らかな手の感触。かすかに匂う麝香の香り。
「……なぜ、俺を助ける?」
「なぜじゃと……死にそうなお主を放っておくわけにはいかぬであろうが」
 漆黒の瞳は、ただまっすぐに男を見つめている。
 嘘や悪意、打算の欠片も感じさせない言葉が、荒んだ世界で生きてきた男の耳にはひどく心地がよかった。
 まったく、たいしたお嬢様だ。
 この御時勢に、死にそうだから助ける、なんてのたまう奴がいるなんてな。
 世間知らずもいいところだぜ。
 だが。
 こういうのも悪くはない、な……
「あんたの名前は?」
「私か。私の名前は、躑躅じゃ」
「躑躅様……拙者の名は、朽葉と申します」
 姿勢を正し、朽葉は腰に差した太刀を鞘ごと引き抜くと躑躅の目の前に差し出した。戸惑うように太刀を受け取る彼女に、朽葉は深々と頭を下げる。
「今日よりこの身は貴女に差し上げます。さすれば、拙者は貴女のために一振りの太刀となり、この命の尽きる限り忠節を尽くす所存にございます」
 朽葉の態度の豹変振りに、躑躅は戸惑いの表情を浮かべて手の中の太刀を見つめる。
「……それは、私と共に来るということか?」
「躑躅様が行く場所ならば、何処へなりとも」
「そうか。私はこれより他家へ嫁ぐ身。お主のような男が一人でもいてくれれば心強いというものじゃ」
 どこか寂しげな笑みを浮かべ、躑躅は太刀を返すと朽葉の手に自分の手を添えた。
 細い指先から伝わる柔らかな温もり。風に揺れた髪が、心地よい香りと共に朽葉の頬をそっと撫でる。
「頼りにしておるぞ、朽葉よ」
「御意」
 躑躅様。この身はあんたに捧げた。
 俺は一振りの太刀となってあんたを守ってみせよう。
 いつかこの命が潰えるまで。
 この刃が折れ砕けるその時まで。

 1
 雑兵たちの一群が、喚声を上げながら前線へと押し出していく。
 刀槍を打ち合わせる音や弓弦の響きは絶えることがなく、地面に横たわる遺骸の数は増えていくばかりだった。濃密に漂う血の臭い。華美な鎧を身に纏った武者が泥まみれの雑兵たちに馬から突き落とされ、主を失った馬はとぼとぼと戦場を彷徨い歩く。長槍を揃えた兵士たちを前に敵方の兵士の一人が背中を見せると、その仲間たちもまた一斉に逃げ出した。味方の一角が崩れたのを見て、他の兵士たちもまた重い鎧や武器を捨てて逃げ出していく。
 小高い丘の上に築かれた本陣からはそんな戦場の様子を一望することができた。敵軍の劣勢をじっと見つめていた武将の一人がが采を振るうと、それに応えて騎馬武者の一群が地響きを立てながら戦場へと疾駆していく。
「どうやら勝負あったみたいだねぇ」
「ああ……」
 戦場に似合わない間延びした声を上げる同僚に、朽葉は無愛想にうなずく。
 敵の数は味方より多かったが、戦場に慣れている朽葉の目からすれば敵将の指揮は劣悪で兵の戦意も低く、勝敗の行方はほとんど明らかに見えた。
「このまま出番なしで終わるかな?」
「いや、まだだ」
 味方の戦線の一部が崩れ、そこから敵の一群が怒涛のようにこちらに押し寄せてくる。
 戦場において自らの功績を認めてもらうことは武士の本懐であり、指揮官としては彼らの活躍を見ていることを示すためにも目立つ場所に本陣を置かねばならない。だが、劣勢を覆そうとする相手にとって敵将のいる本陣は絶好の狙いになりうる場所でもあった。
 勝利の予感にやや緩んでいた本陣の雰囲気が、一瞬にして引き締まる。前線に兵力を投入しすぎたため、本陣を守る兵力はそう多くはない。味方を呼び戻そうにも、敵はもうすぐ近くにまで迫っている。
「やるねぇ。敵にも将はいるみたいだよ」
「ああ。だが、殿を討たせるわけにはいかぬ……行くぞ、浅葱」
「もちろん。それが僕らの主の願いならば」
 足元に置かれていた槍を手に取り、二人は騒然とした本陣の奥へと駆け出していく。
 敵兵の一部は既に本陣に突入しており、先ほどまで床几に座って戦線を見やっていた武将たちさえも太刀を取って戦わねばならなかった。半農民の雑兵たちの首とは違い、華美な鎧を身に纏った武将の首は大きな恩賞となる。それが大将首であれば、一城を得ることでさえ夢ではない。いかに戦慣れした武将たちでも、恩賞目当てに飢狼のように襲い掛かってくる敵兵に苦戦を免れなかった。
 赤を基調とした最も華美な鎧を身に纏い、遠目でも目立つ日輪飾りの兜をかぶった大将とおぼしき人物もまた味方と共に太刀を振るって奮戦していたが、大将首を狙う敵兵はあまりに獰猛であり、味方の兵は次々と傷つき倒れていく。
 本陣中を囲む家紋入りの幕を斬り裂いて二人が到着したときには、大将は味方と分断されて数人の雑兵たちと対峙していた。味方の兵や武将たちは目の前の敵を倒すのに精一杯で、大将の危機を知りつつも助けることができない。
 二人は混戦の中を飛ぶように駆け抜けると、それを静止しようとする敵兵の追撃を軽く振りきって今まさに大将に斬りかかろうとしていた雑兵の背中をそれぞれ刺し貫いた。短い悲鳴を上げて倒れる雑兵の背中から無理に槍を引き抜くようなことはせず、二人は腰の太刀を抜いて敵中へと身を躍らせる。
 突然の加勢に、雑兵たちは明らかに動揺していた。
「おおっ!」
 腹の底から声を絞り出しながら、朽葉は雑兵の振り下ろした太刀を力任せに払い、その喉に太刀を深々と突き刺す。
 噴水のように血を噴き出させ、雑兵は声もなく絶命した。
 返り血を浴びながら朽葉は雑兵の腹を蹴り押して太刀を引き抜くと、倒した敵には目もくれずに苦戦している大将の元へと急ぐ。
 朽葉たちの加勢によって雑兵たちはそのほとんどが逃げ腰となっていた。だが、大将と刃を交えているその男は執拗に大将を狙い続けている。身につけた鎧からすると、どうやらかなり名のある武将らしい。
「下がれ、下郎!」
 朽葉が迫ってくるのを見て、男は横薙ぎに槍を振るった。
 当たれば鎧の上からでも骨が砕けそうなほどの一撃ではあったが、朽葉はこれを後ろに跳んでかわした。素早く懐に飛び込んで太刀を振るうが、敵も即座に槍をかえし、朽葉の太刀を弾き返す。
 この隙に浅葱は大将の元に駆け寄り、彼を後方へと移動させていた。大将を狙っていた男はその後を追おうとしたが、朽葉はその進路を阻んで通さない。
 焦燥とともに繰り出された槍先は鋭いながらも明らかに大振りであった。朽葉は太刀を斜めにそらせてこれを受け流し、体勢を低くして再び懐へと飛び込む。
 雑兵のものとは違い、武将たちが身に纏う鎧は重厚であり刀槍はそう簡単には通らない。となれば露出している顔面や喉元、脇の下などを狙うしかないが、敵は歴戦の勇者らしく致命傷になり得る部分は完全に防御している。
 そういう鎧武者を相手にする方法を、朽葉はよく承知していた。
 太刀を振り上げるように見せて下段に走らせる。狙ったのは鎧などに覆われていない膝。刃は男の袴とともにその膝頭を斬り裂いていた。激痛のあまり体勢を大きく崩した男に、朽葉は間髪入れずに体当たりし、押し倒す。
 太刀を投げ捨て、懐刀を握り締める。組み討ちともなれば長い武器はもはや用はなさない。朽葉の下に組み敷かれた男は必死に抵抗するが、出血のためか朽葉を押し返すことができない。朽葉は何度も男の身体を殴りつけ、その急所に刃を突き入れようと奮戦する。
 男はかっと目を剥くと渾身の力を込めて朽葉の首を両手で締め上げた。空いた脇の下に朽葉は懐刀を突き立てたが、男の力はまったく弱まらない。どうにか手を振りほどこうとしても、男の手は万力のように朽葉の首を離さない。
 薄れていく意識の中で、朽葉は一人の女性の姿を見ていた。
 それは彼が忠誠を誓った女性。この世界でただ一人、太刀を捧げた女性。
 こんなところで俺は死ねん。
 こんな奴に殺されてやるわけにはいかん。
 俺の命は躑躅様と共にある。
 こんなところで死んでは、躑躅様に申し訳が立たぬ。
 男の身体に突き刺した懐刀を引き抜き、朽葉は全力を込めて男の喉を刺し貫く。
 確かな手ごたえと共に、男の両腕から力が失われていく。それでも男は朽葉を振り放そうと抵抗したが、もはや朽葉の優勢を覆すことはできない。
 血走った男の目から光が薄れていくのを見つめながら、朽葉は己の勝利を確信した。


「その方、よくぞわしの危機を救ってくれた。頭を上げよ」
 大将の言葉に、地面に平伏していた朽葉はゆっくりと顔を上げた。
 まだ三十にも達していないだろう若大将は満面の笑顔を浮かべていた。修復された本陣の周囲では戦勝に浮かれた将兵たちが宴を楽しみ、その笑い声がここまで聞こえてくる。大将の後ろには数多くの首が並べられており、そのほとんどが名のある武将らしく小姓たちの手によって死に化粧が施されていた。
「朽葉と申したな。その方の太刀筋、見事であったぞ」
「は……光栄に存じます」
「うむ。そこで褒美を授けたいが、その前にその方を私の馬廻り衆に迎えたい。どうか?」
 大将の言葉に、控えていた武将たちから驚きの声が上がった。
 馬廻り衆とは武将たちの子息や武勇に優れた者たちを集めた一種の親衛隊で、出世の糸口でもあった。この地位を望み、また息子や弟を推薦しようとする者の数は多い。
 だが、羨望と嫉妬の視線を一身に集めながらも朽葉はただ首を横に振った。
「お断り致します。私には、すでに主がおりまする故に」
「む……そうか。では、褒美をとらせようぞ」
「褒美もいりませぬ。ただ、一つだけ殿に願いたきことがございます」
「ほう。申してみよ」
「この戦が終わり次第、我が主である躑躅様に真っ先にお会いくださりませ」
 予想外の望みに大将はおろか武将たちもまた呆然としてしばらく言葉を失った。だが、朽葉の眼差しは真剣そのものであり、大将もこれを笑って流すようなことはできなかった。
「あい分かった。そちの願い、必ずや叶えようぞ」
「あっ。ありがたき幸せに存じます」
「だが、その前に私の子供たちに会うことは許してもらいたい。父として、私の安否を待っている子供たちに会ってやりたいのだ。わかってくれるな?」
 朽葉は一瞬不満そうな表情を浮かべたが、情理を尽くした大将の言葉に正面から反論するようなことはできなかった。
「御意……」
 諦めたように溜め息をつき、平伏する。その姿を、本陣の隅から浅葱が心配そうに見つめていた。

 2
「何ゆえ……何ゆえ、殿は私の屋敷に来てくださらないのじゃ」
 憤怒のあまり白い頬を真っ赤に染め、躑躅は手にした扇子を畳に叩きつけた。それだけでは飽き足らず、何度も何度も扇子を踏みつけ、ついには部屋の隅へと蹴り飛ばす。
 数十畳ほどの広間には数人の女中たちが平伏し、女主の怒りが自分に向かないようにと視線を落としていた。この場で唯一の男性である朽葉は彼女たちからやや離れた場所に座っていたが、躑躅の怒りが落ち着くと彼女の目の前で方膝をついて頭を下げた。
「拙者の力及ばず、申し訳ありませぬ」
「……朽葉のせいではあるまい。朽葉は殿を護ってくれたし、私の願いも殿に伝えてくれたのであろう?」
「はい。殿は子供たちと会ってから、拙者の願いを叶えると」
「子供に会うということはその母にも会うということであろう。あの女……」
 漆黒の瞳に嫉妬の炎が燃え上がる。朽葉は伝えるべき言葉を持たず、ただ沈黙を保つしかなかった。
 躑躅が嫁いだ先には既に正室がいた。それは躑躅も承知の上であったし、女性の意思よりも政略が優先される時代においては女性自身が婚姻に反対することなどできはしない。
 躑躅にとって不幸だったのは、彼女の婿になる男が血生臭い時代には珍しく正室を愛していたことと、躑躅がそんな彼を愛してしまったことだった。
 若く武勇に優れた武将。性格は戦場では苛烈でありながら平時は穏やかであり、容姿もまた貴公子然としている。躑躅の好みそのものを具現化した存在である彼であったが、正室を愛するあまり側室である躑躅にはほとんど想いを向けられなかったようだ。
 側室の実家が有力であれば嫌でも愛情を向けねばならなかったろう。だが、躑躅の家はむしろ彼の家に従属しており、娘が冷遇されていたとて文句を言える立場でもない。躑躅もまた武家の娘として、泣き言は決して口には出さなかった。
 そのような強さがあるからこそ、情念はより強く燃え盛る。
「まあ、よい。殿には殿の考えがあるのじゃろう。子供には父親が必要であるしな」
「御意……」
「そういえば、このたびの戦でお主は戦神もかくやというほどの活躍をしたそうじゃな。奥でも有名になっておるぞ」
「お戯れを」
「ふふ……近くに寄れ。戦場の話を聞かせてほしい」
「はっ」
 躑躅の願いに応え、朽葉は戦場の物語を紡ぐ。躑躅の愛する大将に焦点を当て、できる限り面白く、醜い話は舌の奥に隠して。無骨な朽葉には女性が喜ぶような話し方は難しいものであったが、躑躅を喜ばせるためならば苦労する価値は十分にあるように思えた。機知に富んだ浅葱から話し方を教わっていたこともあって、躑躅は終始御機嫌であった。
「そうか。殿自らが刀を握って戦われたのか?」
「はい。本陣に押し寄せる敵を前に、殿は旗本を率いて応戦。大将首を狙った雑兵を馬上からわずか一太刀で斬り捨てました」
「さすがは殿じゃ。雄雄しいことよな」
「古今に名将猛将は多くとも、大将としての統率力と武者としての武勇を兼ね揃えた大将は殿以外にそうはおりませぬ」
「うむ。うむ」
 満足そうにうなずく躑躅。女中たちも朽葉の話に耳を澄ませ、ときどき小さな笑い声や悲鳴を漏らす。
「この勝利により敵は人質を差し出して和議を請うて参りました。これで、しばらくは平穏な暮らしが続きましょうぞ」
「人質とな……それは、殿の側室となるのではないのか?」
「はっ?」
「ああ。奥の噂じゃ。気にすることはない」
 躑躅は手を振って先を促したが、朽葉はその瞳に浮かんだ暗い影を見落とさなかった。
「人質が女性とは聞いておりませぬが?」
「城の西に屋敷が建てられておる。あの造りは側室を囲うためのものぞ」
「ですが、その者が殿の元に嫁ぐとは限りませぬぞ。一族のどなたかが迎えられるやもしれませぬ」
「だから奥の噂だと言ったのじゃ。気にするでない。それよりも、話の続きを頼むぞ」
「はっ」
 続きを促され朽葉は素直にうなずいたが、朽葉はどうしても躑躅が一瞬浮かべた悲しそうな眼差しを忘れることができなかった。
 正直なところ、正室を溺愛する殿が側室を望んでいるとは思えない。
 周囲がそれを望んだとしても、殿の愛情がその側室に向かうことはないだろう。
 だが、新たな側室が加われば躑躅様の立場は確実に悪くなる。
 殿が躑躅様の元を訪れる夜もまた、少なくなるだろう。
 そんな状況を躑躅様が望んでいるわけは……あるまい。
「朽葉。どうかしたのか?」
「いえ……」
 躑躅様の立場をこれ以上揺るがすわけにはいかぬ。
 躑躅様を悲しませる要素はたとえ些細なことであっても排除しなければならん。
 俺は躑躅様の太刀。
 躑躅様が望むのであれば、たとえ殿の側室となる方でさえ、容赦はしない。

 3
 闇の中に、松明の灯が揺らめいている。
 人気のない街道を、十数人の従者に護られて一台の籠が運ばれていく。途中の宿場町で確認したところ、籠の中にいるのは朽葉の属する国に敵対する国家の姫君であり、嫁ぎ先はどうやら彼の主君のようだ。奥の噂とやらがどこまであてになるのか朽葉も半信半疑ではあったが、正しい噂であったらしい。
 黒装束を身に纏った朽葉は、街道からある程度の距離をとりながら木々を縫うように籠の後を追う。
 こんな夜中に彼らが出立したのは朽葉にとってまさに僥倖であった。さすがの朽葉も人の多い宿場町で仕掛けるほど己に自惚れてはいないし、日中では正体が見破られる可能性を否定できない。証拠を残さず行動するためには、最低でも闇を味方にし、人目を最小限に留めなければならなかった。
 夜空を見上げれば、星の一つさえ見えないまったくの闇。
 罠ではないだろうか。あまりの条件のよさに朽葉は警戒心をかきたてられたが、この絶好の機会を逃すわけにはいかなかった。
 籠は緩やかな坂を上っていく。道は細く、人がやっと二人並べる程度だ。仕掛けるのに、これ以上に適した場所はない。
 全速力でもって行列の前方へと先回りし、草陰に身を潜めると、音を立てずに刀を抜く。
 刀身はわずかな星明りさえも反射しないように黒塗りにされていた。掌に伝わる柄の感触が、朽葉からすべての迷いを払拭していく。
 俺は躑躅様の太刀だ。
 あの方の幸せのために、立ちはだかるものすべてを断つ太刀だ。
 情けなどいらぬ。迷いなどいらぬ。
 ただ、躑躅様の望むがままに刃を振り下ろすのみ。
 草陰から飛び出しながら、朽葉は左手で懐から手裏剣を抜き、籠を持つ4人の従者へと立て続けに投げつける。
 悲鳴が上がり、籠が地面へと落ちる。さらに手裏剣を投げながら朽葉は籠へと駆け出し、松明を手に動揺している従者二人を斬り捨てると、さらに籠の前で刀を構えていた男の首筋に太刀を叩き込んだ。
 吹き上がる鮮血。それにやや遅れて、地面に倒れこむ男の遺骸。
「……御免」
 籠の戸を開けると、姫君とおぼしき華美な衣装を身に纏った少女は化け物を見るような視線を彼に向けた。震えるその手には懐剣が握られ、刃先は彼女の喉笛に向けられている。
 朽葉があと一歩踏み込めば少女は自らの喉を刃で貫くだろう。辱めを受けるようであれば命を絶つのが武家の娘の教えであり、少女もまた幼いながらも武家の娘に違いなかった。
 少女を主君の側室としないことが朽葉の目的であるのだから、彼女がこのまま自害してくれればそれで構わないはずだった。だが、朽葉はなぜか一歩を踏み込むことができず、刃を少女に向けることもできなかった。
「待て……下郎」
 背後から、か細くも憤怒に満ちた声が上がる。
 振り返れば、そこには腹部からおびただしい血を流した若武者が刀を杖にして立ち上がっていた。もはや刀を振り上げる余力さえないようではあったが、それでも朽葉を見つめる目は憤怒に燃え上がっていた。
「姫に手を出す者は……この、俺が、許さぬ……」
「そうか……」
 思わず天を仰ぎ、朽葉は重い息をついた。
 刃を返し、若武者の首筋を打ち据える。若武者が崩れ落ちるのと同時に少女の手から懐剣を叩き落し、小さな悲鳴を上げる彼女の華奢な身体を脇に抱えた。そして、彼の目の前に立ちふさがった従者を蹴散らしつつ木々の中へと駆け込む。
 従者たちもまた森の中へと駆け込んできたが、根や枝に邪魔をされて朽葉に追いつくことができなかった。少女は必死に暴れるが、鍛え上げた朽葉の腕は少女の腰を抱えて離さない。
 悲鳴や怒声がやや遠ざかると、朽葉は少女を地面へと下ろした。必死に逃げようとする彼女の襟首を掴み、刃でもって腰帯を両断すると無理やりその衣装を引き千切った。
 白い肌が闇の中に露出し、女としての最悪の事態を予感した少女がこれまでになく大きな悲鳴を上げる。だが、朽葉にはこれ以上どうしようという気はなかった。
 がたがたと震える少女に背を向け、朽葉は闇の中へ身を躍らせる。
 これであの娘が側室になることはないだろう。
 野盗に一時とはいえ略奪された娘を、そのまま送り届けようとする馬鹿はいない。
 これからあの娘がどうなるかどうかはわからん。
 もはや縁談に恵まれぬかもしれないし、髪を下ろして尼となるかもしれない。
 だが。
 どんなことがあっても、あの若武者は娘を見捨てないだろう。
 あれほどの深手を負ってさえ立ち上がったあの若武者ならば。
 生き延びることができれば、どんな形であれ必ずあの娘を守ろうとするだろう。
 この俺が、躑躅様にすべてを捧げているように。
 草をかき分け、木の根を飛び越えながら朽葉は天を見上げる。
 夜空には、いつしか朧月が浮かび上がっていた。

 4
 側室の件が破談になったことで、建てられるはずであった屋敷の建造は取り止められた。
 障子や家具などはまだ整えられていなかったものの、既に畳は敷き詰められ、やや風通しがよすぎるものの住み心地はそうは悪くなかった。特に大広間などは、目の前が開け放たれているおかげで城下町が見渡せる特等席となっている。
「これで綺麗なお姉さんがいれば最高なんだけどねぇ」
「……生憎と、ここの主は側室になるのが嫌で国に逃げ帰っちまったからな」
「それは残念。あの国、お姫様はもちろん侍女も美人揃いと評判だったのに」
「そうだな……まあ、おかげで俺たちの主の機嫌が悪くならずに済むというものだ」
「同感だね」
 浅葱は正室の護衛として国許から従ってきた従者の一人であった。
 彼がどういう理由で従者としてここにいるのか、詳しい理由を朽葉は知らない。ただ、どこかとらえどころのない性格と確かな剣の腕。そして自らの主のために忠誠を尽くす姿勢は朽葉にとって不快なものではなかった。
 大広間の真ん中に胡坐をかいて酒を酌み交わしながら、朽葉と浅葱は城下町の方に視線を向ける。
 街の各所から上がる炊事の煙。一日の労働を終え、酒屋へと向かう人足たち。道の真ん中を這うように進む手押し車の脇を、家路を急ぐ子供達が抜き去っていく。
「お前のところのお姫様、かなり機嫌がいいらしいな」
「なぜだい?」
「お前の持ってきた酒がうますぎる」
「なるほど……まあ、その通りだよ」
 まだ十分に重い酒甕をたぷたぷと揺らしながら、浅葱は朽葉の杯に酒を注ぐ。
「新しい側室が来たら、殿がこっちに来る日も減るわけだからねぇ。何があったかは知らないけどうちのお姫様は大喜び。僕もこうしてその恩恵を受けているというわけさ」
「恩恵、か……」
 ほのかな胸の痛み。それを押し殺すかのように、朽葉は酒を一息に喉へ流し込む。
 一人の姫君の人生と引き換えに得たものは、ほっとしたような躑躅の表情と浅葱が持ってきた酒。それが等価であったのか、それとも高すぎたのだろうか。
 今の朽葉には、自信を持って答えを出すことはできなかった。
「君の方のお姫様も、今回のことが嬉しくないわけじゃないだろう?」
「まあな……好きな男を取る相手が減るというのは、嬉しいことなんだろう」
「同感だ。そして、好きな男に女は二人もいらない」
 浅葱の言葉に、朽葉は黙って手にしていた杯を置いた。
 張り詰めた空気が、大広間の中に充満していく。
「……それはお前のお姫様の言葉か?」
「口には出していないけど、ね」
 小さく溜め息をつき、浅葱は肩をすくめた。
「今まではうまくやってきたはず。なぜ、今さら?」
「失うことの怖さを知ってしまったのかもしれないね。君のお姫様はうちのお姫様に何かと気を遣ってくれていたから、殿がいない日もそれほど機嫌は悪くなかったんだ。ところが、例のお姫様がこの屋敷に来ると聞いてからはそうはいかなくなってしまった」
「俺の主の気持ちも知らずに我が侭なことだ」
「そうかもしれないね……だけど、僕の主の意向とあってはどうしようもないさ」
「ああ……だが、一つだけ言っておく」
 杯を再び手に取り、朽葉は浅葱に鋭い視線を向ける。
「もしも俺の主に危害が及ぶようであれば、俺は誰に対しても容赦はしない」
「ならば僕も答えよう。たとえいかなる理由があろうとも、僕の主に刃を向ける者には情けはかけない」
「……上等だ」
 口元に笑みを浮かべ、朽葉は浅葱の杯に酒を注ぐ。
 それを一息に飲み干し、浅葱は声を上げずに笑った。

 5
 躑躅がその書状を手にしてから、一刻ほどの時間が流れただろうか。
 書状に目を落としたまま、躑躅は凍りついたかのように身動き一つしようとはしなかった。不気味な沈黙に耐え切れず、侍女たちはいつしか大広間から消えてしまっている。残っているのは、躑躅の目の前でただ頭を垂れる朽葉だけだ。
「なぜじゃ……」
 弱々しい、呻くような声を上げる躑躅の表情はまるで両親を見失った子供のように頼りなく、朽葉はその姿を正視することができなかった。
 朽葉の目の前に、躑躅が手にしていた書状が投げ出される。
 そこには、躑躅の実家が当家の敵対国と手を組んだために主従関係を解消すること。それに伴い躑躅を実家へと返還するということが書かれていた。その書類の端には、この書状を書き記したのがこの家の当主であることを示す家紋が押されていた。
 離合集散は戦国のならい。
 昨日の敵が今日の敵となることなど珍しくもない。婚姻関係とても相手を繋ぎとめておくための紐のようなものに過ぎず、場合によってはいつでも引き千切られる。
 残された姫はたいていの場合処断されているのだが、直筆で実家へと返還すると明記されているのは側室に対する最後の思いやりなのだろうと朽葉は安堵の溜め息をついた。
「朽葉。私はいったいどうすればよいのじゃ?」
「これは躑躅様が家の重大事。ならば是非もありますまい」
「この書状の通りに従えと、申すか?」
「御意」
「嫌じゃ!」
 引きつった叫び声を上げ、躑躅は手元に置かれた扇子を力いっぱい畳に叩きつけた。
「嫌じゃ。私は、ただ殿のお傍にいたいだけなのじゃ……」
「躑躅様……」
「それに父が何の理由もなく殿に謀反するとは思えぬ。これは……これはあの女の仕業に違いあるまい。そうであろう?」
 懇願するような躑躅の問いかけに、朽葉は何も答えなかった。
 ほとんど錯乱しかけている躑躅の言葉が正しいとは思えなかったし、躑躅を除くためにこれほどの陰謀を仕掛ける必要があるとは思えない。もしも正室が躑躅を邪魔だと思っているのなら、もっと穏便に城から追放する方法はそれこそいくらでもある。
 顔を上げ、朽葉は怒りに身を震わせている躑躅を見つめる。
 躑躅が正室から受けた嫌がらせや非難中傷の類はほとんどなかったはずだった。だが、それは躑躅が側室であることを自覚して控えめに振舞っていたからで、愛しい人を正室に奪われている苦痛を常に与えられていたことを朽葉は知っていた。
「躑躅様。ここに至ってはもはや我々の手の及ぶ事態ではありませぬ。この家のため、御実家のため、書状には従わねばなりますまい」
「もしも断れば、どうなる?」
「さらなる恥辱を味わうのみで、結果は変わらぬかと」
「もはやどうにもならぬというのか……」
 口惜しげに両手を握り締める躑躅の瞳から、涙が伝い落ちる。
 一滴、また一滴。
 畳の上に零れ落ちていく涙を見て、朽葉は心の中で何かが断ち切れる音が響くのを感じていた。
「躑躅様。正室殿に恨みはございますか?」
「当然じゃ! あの女さえいなければ、私は……」
「ならば、その恨みを私が晴らして御覧にいれましょうぞ」
「朽葉、お主……」
「躑躅様が望むとあらば、私はどのようなことも成し遂げてみせまする」
 凛とした言葉を放つ朽葉を前に、躑躅は声を出せずにただ彼を見つめるばかりだった。
 二人以外誰もいない大広間を、深い沈黙が包み込む。
 風に揺れる障子の音。
 蝋燭の火の揺らめき。
 着物が畳を擦る音が、朽葉の元に近づいてくる。
「朽葉……我が侭とは承知しておるが、頼む」
「御意」
「ただし、きっと生きて帰るのじゃ。あの女の命とてお主の命と引き換えには安すぎる。生きて帰れ。これは命令じゃ、必ずじゃぞ」
「……はっ」
 顔を上げ、朽葉はすぐ目の前にまで近づいていた躑躅に一礼する。
「必ずや、躑躅様の命に応えてみせましょう」
 その言葉に、一片の迷いさえなかった。


 6
「ねえ朽葉。この世で女のために道を誤った男って、どのくらいいるんだろうね?」
「……あまりに多すぎて、数える気にもならんな」
「まったくだよ。とある国の王は一人の美女のために人民から財産を巻き上げ、諌める忠臣を殺し、政務を放り出して快楽を求めたらしい。そしてついに臣下の一人が反旗を掲げ、暴君を打倒。国は滅びてしまったそうだよ」
「何が言いたい?」
「それだけ女というものが危険だということさ」
 乾いた笑みを浮かべ、浅葱は目の前に垂れる柳の枝を軽く撫でた。
「その気になれば、側室の国の内外を扇動して、主君を変えさせるなどわけもない」
「……まさかとは思ったが、あれがお前の姫君の仕業だったとはな」
 刀を抜き、朽葉は柳の枝を弄ぶ浅葱を見据えた。
 銀色の刀身に映るものは、上弦の月。
 正室の屋敷の中、人気のない庭で二人は対峙していた。主が城に出かけているのか、屋敷の中に人気は感じられない。周囲には灯り一つなかったが、月明かりのおかげでお互いの表情くらいは判別することができる。
「君のお姫様だって、なかなかたいしたものだと思うんだけどね」
 石灯籠の表面に指を走らせながら、浅葱は肩をすくめる。
「なんでも、側室の行列を山賊に襲わせて、その側室を辱めたそうじゃないか」
「……躑躅様は山賊をけしかけてなどいない。ついでに言えば、側室の操も無事だ」
「知ってるよ。君があの行列を襲いやすくするために色々と工作したのは僕だからね」
「てめえ……」
 行列の夜中の出発。
 想像より遥かに少ない護衛。
 うまく行き過ぎているとは思っていたが、そういうことだったのか。
「実は僕のお姫様もあの側室をどうにかしろと僕に命じていたのでね。君が出てきてくれて、本当に助かったよ」
「そうかい。ならば、その礼に正室様の首を頂こう」
「それは君のお姫様の意思かい?」
「無論」
「そんなことをすれば、さすがに生きてここから出ることはできないだろうに」
「そうだな……」
 浅葱のどこか哀れむような声に、朽葉は乾いた笑みを浮かべる。
「だが、俺は躑躅様の太刀なのだ。太刀は主の命のままに敵を斬るだけだ」
「……そうだね」
 刀の柄に手をかけ、浅葱は滑らかな一動作で居合いの型を取る。
大上段に刀を構え、朽葉はじりじりと浅葱との間合いを詰めていく。近づいてくる朽葉を前に浅葱は動かない。ただ、刀の柄に手をかけたまま朽葉をまっすぐに見据えていた。
「朽葉……君を友だと思って、頼みがある」
 二人の距離はほんの数歩にまで近づいていた。
 あと一歩踏み込めば、確実に相手に刃を叩き込むことのできる距離だ。
 だが、口を開きつつも浅葱の構えにまったく隙はない。踏み込むその一瞬を見出すことができず、朽葉は浅葱の言葉に耳を貸すしかなかった。
「もしも僕が死んだら、姫に手を出すことは許してほしい」
「なぜ、今さらそんなことを言う?」
「姫と約束したんだ。どんなことがあっても死ぬな。必ず生きて戻れ、とね」
「……」
「自分がここで命を落とせば姫も君に斬られるだろう。そのような二重の不忠には耐えられなくてね」
 朽葉……我が侭とは承知しておるが、頼む。
 きっと生きて帰るのじゃ。あの女の命とてお主の命と引き換えには安すぎる。
 生きて帰れ。これは命令じゃ、必ずじゃぞ。
 ……ああ、そうか。
 浅葱。お前も、俺と同じか。
「……参る」
 万感の想いをその一言に込め、朽葉は踏み込みと同時に稲妻の迅さでもって浅葱へと刀を振り下ろした。
 浅葱もまた、踏み込みつつ刀を鞘走らせる。銀光が鞘から朽葉の横腹へと弧を描いて伸びていく。
 躑躅様。この身はあんたに捧げた。
 俺は一振りの太刀となってあんたを守ってみせよう。
 いつかこの命が潰えるまで。
 この刃が折れ砕けるその時まで。


 7
「朽葉。この場所を覚えておるか?」
 輿から降り、躑躅は懐かしそうに周囲を見回しながらある木の根元を指差す。
 そこはかつて朽葉が重傷を負っていたところを躑躅によって助けられた場所であった。数年も前のことゆえ朽葉はあまりよく覚えていなかったが、躑躅はしっかりと記憶しているらしい。
「こうした形で、この場所をもう一度訪れることになるとは思わなんだが……」
 寂しそうに笑い、躑躅は後ろを振り返る。
 遠く、かつては生涯をそこで暮らすと信じていた城の天守が見える。輿を守っている者たちの大半は躑躅と共にこの地を訪れた者ばかりであり、彼らもまた感慨深げな表情を浮かべて天守を見つめている。
「朽葉。今まで、よくぞ私の我が侭を聞いてくれたな」
「我が侭などとは……」
「よいのじゃ。殿の元を離れた今、私は自分がどれほど嫌な女だったのか、わかってしまった」
「……」
「こんな私によく仕えてくれた。朽葉にはどれほど感謝をしても足りぬ。だから……」
 目を伏せ、搾り出すような声で躑躅は告げる。
「だから、お主はお主の好きにせい。お主ほどの腕があれば、どのような道を歩んでも出世できようぞ」
 手を震わせ、無理に笑顔を作ってみせる躑躅に朽葉はゆっくりと跪いた。
 そして、その震える手をその無骨な手で優しく包み込む。
「躑躅様。拙者の仕える主は、貴方様一人です」
「馬鹿を申せ……これからどうなるにせよ、私はもう日陰者の身じゃ。こんな私に仕えていては、出世などとうてい望めぬぞ」
「出世など望んではおりませぬ。私が望むことは、ただ躑躅様をお守りすること」
「朽葉……」
「お忘れですか、躑躅様?」
 朽葉は腰の太刀を鞘ごと引き抜き、躑躅の手に握らせる。
「この身は貴方に捧げました。拙者は貴女のために一振りの太刀となり、この命の尽きる限り忠節を尽くす所存にございます」
「ああ……」
 零れる涙を拭いながら、躑躅は朽葉の手を強く握り締める。
 温かい風が、二人の髪をかすかに揺らす。
「馬鹿じゃ。お主は、大馬鹿者じゃ」
 泣きじゃくる躑躅の手を握り返しながら、朽葉はふと太刀に視線を向ける。
 鞘には無数の傷がつき、刀身は何度も刃こぼれし血に汚れながらも、まだ太刀は折れ砕けてはいない。
 太刀は、その寿命が尽きる日まで持ち主を守り続けるだろう。















   〜あとがき〜

 期末試験やら就職活動やらで最近めっきりと出番が減ってしまいましたが、ゆっくりと執筆を続けている砂時です。
 忙しい時期はどうしても趣味から疎遠になってしまうものですが……しばらくするとどうしても執筆したくなる気分になってしまいます。
 前半と後半が2ヶ月も空いているせいで雰囲気は微妙に違ってしまっているかもしれませんが……最後まで読んでいただければ幸いです