図書部11
作:尾瀬 駆




 香奈は早足で図書室へ向かっていた。
 もちろんこの知らせを敬太と知加子に知らせるためだ。
 今にも叫びたくなるのを我慢して、足をもう少し早めた。
「ねぇ、あのね。驚かずに聞いてよ」
 香奈は図書室のドアをガラッと開けると息もつかずにそこまで言って固まった。
 みなさんの視線が痛い。
 敬太と知加子が顔を手で覆っている。
 香奈はごまかし笑いを周りに振りまきながら、敬太達のそばに座った。
「で、あのね。大変なことになったのよ」
「大変なこと?」
「何それ?」
 敬太も知加子もわけが分からない。
「図書部が部として認められたのよ!」
 香奈は興奮しつつもなるべく小さな声で言った。
 その瞬間、いきなり二人は立ち上がった。
「「ええぇぇっ!!!!」」
 図書室に二人の声がこだまする。
 またまた、みなさんの冷たい視線が集まった。
 謝りながら席に着く二人。
「ほ、ほんとかよ?」
 未だに信じられない敬太はもう一度確かめた。
「ええ、本当よ」
 きっぱりと返した。
「それどころか、部室までもらえるのよ。しかも、顧問は校長!」
「部室かぁ。やっと念願の部屋がもらえるのか・・・」
「そうよ。明日から使っていいって」
「それに、顧問が校長ってのは頼もしいな。なんでもできそうな気がするぞ」
「でしょ。ほら、先輩も喜んで下さい♪」
 香奈は知加子の方を振り向いた。
 そこにはあまりの出来事にそのまま気絶している知加子の姿が。
「せ、先輩!?しっかりして下さい!」
「ん?あ、はいはい」
 何でもないような感じで返事するが、やはり少しぎこちなかった。
「で?何の話してたっけ?」
 というかばればれだった。
「しっかりして下さいよ。先輩」
 と、敬太。
「あのですね。先輩。実は部室ももらえたんです。しかも、顧問が校長なんですよ!」
「へぇ。よく先生たちが認めてくれたね〜」
「はい、教師側からも図書室の活性化の案が出ていたらしいんですよ」
「そいつはちょうどよかった。私たちは運がいいんだな」
 知加子は喜びを奥底に隠しながら言った。
 ただ、口元は隠し切れなかった喜びでにんまりしている。
「お取り込み中悪いんだが、勉強の方はいいのか?もう1週間切ってんだぜ?」
 敬太は机の上のノートから視線を上げた。
「あんたほどやばくないから大丈夫よ。ご心配ありがとう♪」
 少し嫌味ったらしく言う香奈。
 こういう関係を見て知加子はいつも思っていた。
 うらやましいと。
「と、そろそろ下校時刻じゃないの?もう5時20分だよ?」
 知加子に言われ、敬太は時計を探した。
 柱にかかっている時計を見つけ、時刻を見る。
 すでに5時22分くらいを指していた。
「げ、やばい。帰る用意しなきゃなんねー。にしても、5時30分完全下校って早いよな」
「仕方ないでしょ。ここは夜間もやってるんだから。ほら、いくよ」
 支度を整えた香奈は先に席を立った。
 知加子もそのすぐ後を追う。
 まだ、敬太はばたばたしていた。
「もう。ほって帰るよ。どっちにしても図書室出たところで別れるけど」
「ほいほい。あと少しあと少し」
 かばんの中に教科書やノートを雑に突っ込んだ。
「よし!行こうか」
 香奈たちは図書室を後にし、それぞれの家に帰っていった。
 突然の部の認定。
 あまりに突然で都合が良すぎて怖いくらいだと内心少し不安に思う。
 でも、たぶん、突然の喜びに慣れなくてそう感じるだけなんだと思う。
 テストまでは後6日。
 今回もがんばらなきゃ。
 香奈は帰り道をスキップに近いステップで帰っていった。
 そうして、テスト当日を迎える―。















あとがき

 次に繋ぐような終わり方にしてみました。
 でも、なんか慣れないなぁ。
 まぁ、がんばります。では。