図書部13
作:尾瀬 駆




「ねぇ、どうだった?」
 図書部の面々は新部室に集まっていた。
「う〜ん。前と同じくらいかな」
「それって、やばいんじゃないの?」
 その中でいつもの敬太と香奈の漫才?が始まっていた。
「大丈夫。留年しなかったらいいんだって」
「それは1年生の間の言い分でしょ。2年生はそんなこと言ってられないよ。もう来年は受験なんだから。ねぇ、先輩?」
 いきなり話を振られ、知加子はびくっとした。
「どうしたんですか?考え事でも?」
 心配そうに尋ねる香奈。
「ん?大丈夫。ちょっと、テストでまずったとこ思い出してたの」
 うらやましいと思って見てたなんて知加子は言えなかった。
今まででもそんなに友達が多い方ではなかったし、ましてや、男子と友達になるなんてもってのほかだった。
 ずっと、絵を描いたりして物静かな少女。
 それがこれまでの知加子だった。
 いや、たぶんこれからも。
 だから、自分には決してこのような笑いあって話す機会はないだろう。
 それは、昔から分かっていたことだった。
 でも、最近それをしたいと思う。
 みんなと馬鹿やって、騒いで怒られて、また笑いあって。
 そんな日常にいれたらいいのにと。
「先輩ってやっぱ優等生だなぁ。俺なんかテスト終わったら、全部忘れちゃいますよ。今ごろ、何考えたってもう終わっちゃったんだから」
「そういえば、そうだね。よし、私も全部忘れちゃお」
 知加子は笑った。
 少し吹っ切れたようなそんな感じがした。
「さて、テストの話題はこれまでにして本題に移りましょうか」 
 香奈は二人がこっちを向くのを確認する。
「今日はですね、夏休みのクラブについて決めたいと思います。それと、図書室活性化についてもね」
「クラブって言っても、先輩は受験じゃんか。あんまり、頻繁には行えないだろう?」
「あのね。前から言おうと思ってたんだけど、私のこと、先輩先輩言うの止めて欲しいんだけど。別に知加子でいいよ。まぁ、呼びにくかったらいいけどね」
 知加子の精一杯の勇気だった。
 今までほとんど自分の気持ちを言うなんてことはなかった。
 だけど、しなければならない気がした。
「それと、私、塾に行ってないから、予定ないんだ。だから、一応いつでもいけるよ。勉強はしなきゃなんないけど。でも、みんな結局集まるんじゃない?図書の貸し出しで何回かは来るでしょ?」
「まぁ、そうですね。私も週2・3回は来ると思います」
「そうだな。俺でも、1・2回は来るかな」
「なら、別に集まる日なんて決めなくていいんじゃない?」
「私は先輩、じゃなくて知加子先輩に賛成だな」
「賛成だなって、お前が部長なんだから、決定はお前に任せるよ。まぁ、俺も反対しないけどさ」
「じゃあ、夏休みは勝手に集まろうということで―。それと、図書室活性化についてなんだけど、今ここじゃ決めにくいと思うから、夏休みの宿題ということで」
「げ〜。宿題増えんのやだよ〜」
 敬太は嫌さを顔中にだしている。
「なら、いい案ある?」
 香奈が意地悪そうに聞いた。
「別にあるんなら、いいんだけどね〜」
「ぐっ」
 敬太は黙り込んでしまう。
「じゃあ、今日はこれくらいにして、帰りましょうか。知加子先輩」
「そうね。敬太君なんかほっといて帰りましょう」
 かばんに手をかけて、部室を出ようとした時、
「待て待て。いい案を思いついた」
 不意に敬太が声をかけた。
 顔が真剣である。
 もしかしたら、本当にいい案を思いついたのかもしれない。
「どんなの?」
 内心期待しながら香奈は尋ねた。
「まず、お前と知加子先輩が水着で図書の貸し出し当番を・・・」
 ばきっ!
 香奈の鉄拳が飛んだ。
「わかった。わかった。今度こそ真面目だから」
「何?」
 すでに臨戦体勢である。
「お前と知加子先輩が裸エプロンで・・・」
 べきっ!ばき!
 今度は鉄拳どころか後回し蹴りまで入った。
「さぁ、行きましょう。知加子先輩」
「う、うん」
 あそこまでやらなくていいんじゃないかなぁ・・・。
 知加子は敬太を振り向く。
 そこには倒れている敬太の姿が。
 実は香奈も内心やりすぎたと思ってたりして・・・。












あとがき

 今回は知加子の心理描写を。
 今のところ、香奈と敬太の過去は不明。
 この次からの3作は夏休みということもあり、
 それぞれの一日の生活を追ってみたいと思います。
 よろしく!