図書部17
作:尾瀬駆





 夏の射すような日差しを受け、蝉の声を聞きながら、まずは駅に向かう。
 学校は最寄の駅から10駅くらいでかなり遠い。
 時間にして30分も電車に乗らなければならない。
 が、それもクラブのためだと思えば何の苦にもならなかった。
 夏休みも半分を過ぎ、大分肌の焼けた人が増えてきている。
 私はもちろん日焼け止めクリームを塗っているので元の白いままだ。
 学校に着くと、まずは図書室に向かった。図書室は少しクーラーがかかっていて涼しかった。一回りしてみたが、岩崎も知加子先輩も見当たらない。
 私は読みたい本を一冊借り部室に向かうことにした。
 知加子先輩には終業式の時にスペアキーを渡してあったからだ。
 部室の戸を開けると中から風が吹いてきた。どこか人工的な感じがして、すぐに扇風機だと分かった。
「ここにいたんですか。知加子先輩」
「どうしたの?もしかして、探した?」
「だって、いつもは図書室にいるじゃないですか」
「たまにはクーラーなしもいいかなと思って。それに岩崎君がこんなもの持ってきたから」
 先輩はそう言って、扇風機を指差した。
「岩崎のやついつ来たんですか?」
「えっとね。確か、昨日あたりだったと思うよ」
「またもや、会えなかったか残念」
 そう、夏休みに勝手に集まるだろうと思っていたものの今までは全然だった。
 うまいように旅行に行ってたり、このように一日ずれたりで、なかなか会えない。
「まぁ、まだ半分もあるから大丈夫よ。それに岩崎君、明後日にまた来るって言ってたから、明日、香奈ちゃんが来れれば集まれるよ」
「そうですか。私はたぶんいけると思います」
「じゃあ、明日は久しぶりに全員集合だね。3人だけだけど」
「ところで、先輩。宿題考えてます?」
「宿題って夏休みの?」
 私が首を振ると、先輩は思い出したように、
「あぁ、あれね。図書室利用者倍増計画」
「そうですよ。もうっ」
「はは、ごめんね。でも、実際のとこあんまし考えてないのよ」
「実は私もなんです」
「本嫌いな人に図書室に来てもらって、ましてや本を借りていってもらうなんてかなりきついよね」
「そうなんですよ。色々考えてみてもどれもありきたりで、それでいてあんまし利用者が増えなさそうだし・・・」
「「はぁ」」
 二人で同時に溜息が出る。
 普段なら笑えるかもしれないが、状況が状況だけに笑えなかった。
「こうなったら、岩崎君にかけるよりないか」
 ぼそっと先輩が言った。
「それしかないですね。可能性はかなり低そうですけど」
「まぁ、それは言えてるかもね。でも、意外といいアイデア出してくるかもよ」
「そう期待したいんですが・・・。なんせあいつは『水着で貸し出し係』と『裸エプロンで貸し出し係』のアイデアを出した奴ですから・・・」
「あの時はかなりびっくりしたわよね。やっぱ、男の子って感じで」
「だから、それを考慮してあいつのアイデアを想像すると頭が痛くて」
「裸で貸し出し係しろとか言いそうね」
 先輩は楽しそうに笑った。
「岩崎ならほんと言いかねなさそう・・・」
 先輩は冗談で言ったつもりだろうが私にはそう思えなかった。
 やがて暗い雰囲気が二人を包んだ。
「じゃあ、そろそろ帰りますね。勉強の邪魔しちゃ悪いし」
「あ、うん。じゃあ、また、明日ね」
「また明日」
 私は部室を後にした。
 外は相変わらず、蒸し暑かった。
 それに五月蝿いくらいの蝉の声。
 今が夏真っ只中だということを感じさせる。
 駅まで歩くだけでも、汗がにじみ出ているのが分かる。
 電車の中。
 外と違って今度は涼しい。
 汗も引いて少し寒いくらいだった。
 そして、家に到着。
 その間中、あの宿題のことで頭がいっぱいだった。
 自分の出した宿題なのに回答を用意できないのが悔しかった。
「明日かぁ・・・」
 私は意味もなくそうつぶやいた。















あとがき

 明けましておめでとうございます。
 遅くなってすいません。
 もうちょっと早いペースで書きたいけど、気分が乗らないときが多かったり・・・。
 真中さんやひなぎくさんを見習わなくては!
 では