アレルギー 作:さくら



 突然、私のもとに転がり込んできた彼は、この世のものとは思えぬ美しさと、野蛮さを瞳に宿していた。
 彼は、おいしい食事と十分な睡眠があればいつも上機嫌で、私に甘えてくれた。仕事で疲れきった心に、彼が水を注いでくれた。


 夜、目を覚ますと、彼は必ず私のそばにいてくれた。ベッドから抜け出して、水を飲みに行こうとすると、彼は律儀に起きて、しなやかに体をよじった。
「また怖い夢でも見たの?」
 そう言いたげな、心配と迷惑の中間の顔。
「大丈夫。のどが渇いただけ。」
 私は、小さくつぶやいて、コップ一杯の冷たい水を飲み干した。


 私は、よく眠る。とにかくたくさん眠る。夢をたくさん見る、浅い眠り方しかできなくて、とても体がだるいから。
 綿の寝巻きを着て、昔は必ず白い粒をかじってから寝ていた。
 彼が来てからの三週間、そういえば、あの粒は、二つしか減っていなかった。
 それなのに!


 今朝、彼はあっさりと私を捨てた。来た時と同じように、何も持たずにあっさりと。
 少し寂しいけれど、今日は恋人が来る日だ。彼のことは、きっとすぐに忘れてしまうだろう。


 私は、窓を開けた。夜になるまで一日中、よく換気をして、念入りに部屋の掃除をしよう。


 だって、私の恋人は、ネコアレルギー。



(510字)