二月だからってはしゃぎスギ 作:清水ひかり



 人類は狙われている? かもしんない。

「ぐんそぉぉぉっっっッ!! ペテロパッテ軍曹。大変でありまブッ!」
「落ち着けよ〜、噛むなよ〜、ツバとぶんだよ〜」
「大変って、大変なんだって、大変なんでありますって」
「何ぃッ! もしかしなくとも非常事態のコトか?」
「いや、それほどのことではありませんが」
「そっかぁ……。じゃあ、まあ、とりあえず話せ」
「景気の停滞していた人類の市場で、突然に購買意欲が活性化したんであります」
「むぅ……。確かに妙だ」
「それも、同じ商品ばかりが売れているのであります」
「妙すぎ。一体何が出回ってるんだ?」
「名称は不明でありますが、形状は主に板状。色は茶褐色。硬度は鋼や木材にははるかに劣り、耐熱性も極めて低い固形物質であります」
「ふむ、装甲としては全く役にはたたんようだな。戦の準備ではないようだ。不可思議ここに極まれっ!」
「……。で、まあ、それはともかく、小生も変だと思いまして調査したところ、驚くべき事実が浮かび上がってきたのです」
「言ってみ」
「何と、何と、な〜んと☆ その板は我らが同胞で作られているのでありますッ!」
「マジで!」
「熱帯に居住する同胞の一部をもぎ取り、焼き、すり潰し、なぞの薬品と雑ぜ繰り固めているようであります」
「ノォー! 残虐極まりない!」
「同感であります。例の切って縛るハナタバとか言う処刑法といい、人類は残酷すぎますでありますです」
「確かにそうだ。このままでは、我々は虐げられたままだ。おちおち根から水も吸い取れない」
「軍曹! 今こそ戦いのときです」
「うむ。いいこと言った。まずは、手初めにこの島国から落としてやろう」
「ううっ。感激です。僕、武者震いがしてきました」
「我輩もら〜」

 まあ、そんなこんなで、地球に住む某植物たちが震えて、その花粉を落とし始める。花粉症の原因が、二月に大量に出回ったチョコレートのせいだとは、あまり知られていない。



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