僕は昔の友達の事を思い出すといつも無性に悲しくなる。……今はもうお互いの存在を確かめられない友達の話だ。
誰でもきっと子供の頃には自分しか知らない空想の友達が居たはずだ。大人になったら大抵は忘れてしまうのだけれども……。
それはふと、こういう友達が居たらと考えてしまうような存在かもしれないし、いつのまにか心に住みついていた物語の登場人物かもしれない。自分と変わりない子供の姿をしているかもしれないし、常に優しく助言をくれる大人の姿かもしれない。
大事なのは、かつては僕達は当たり前にお互いの姿を見る事ができたし、話す事も出来たという事だ。
眠る時だって、ベッドに入って目を瞑っても自分の呼吸を感じなくなるまでお互いの存在を感じていられた……。
大人になる事は一つずつ賢くなる事で、大人になる事はみんなが知ってる事を一つずつ学ぶ事で、大人になる事は常に正しくて、生きてればみんな絶対に大人になる。
だから、みんなの知らないものなんて存在しないし、自分一人だけの友達なんて必要ない。大人になる事で無くしてしまうものがあるなんて疑いもしない。
空気中の塵に青い光が撥ね返るから空の色は青い。
日が沈めば、その距離が長くなるから空の色は赤みがかる。
大人に教えられた理屈があれば、それは特別なものなんかじゃないんだと納得してしまう。秘密をなくしたものたちに対して知らず知らずに無感動な所有感を抱いてしまう。
晴れた朝になれば空はいつだって青いし、自分の頭の上にあって当たり前。際限なく繰り返すんだから、何度通りすぎたって自分は何にも失わない。
……そう思った時点でもう失ってしまっているのに。
きっと明日空が晴れても、青くても、あの日空を見て感動した時の気持ちは取り戻せないんじゃないかな。
純粋でいる事は難しい。一つの事を心に留め続ける事も。
君は、昔僕という友達が居た事なんてもう忘れてしまったよね?
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