賭け 作:尾瀬駆




「はぁ?一目惚れ!?」
 中学からの親友は声を少し荒げて言った。私はこくりとだけ頷いた。
「あんたねぇ、もう大学生なんだよ。ガキじゃあるまいし」
 私は返答に困って下を向き、訳もなく照れた。
「まぁ、あんたらしいか。で、作戦考えたんだけど―――」

 昼休み、公園のいつものベンチに座り、本を開けた。
 そして、拾ってきた落ち葉を握りしめ、親友の作戦を反芻していた。
『いい?これは賭けよ。頭の上に落ち葉を乗せるの。それで、相手が気づいてくれたら賭け成功。分かった?で、その後は、お礼だとか言って二人きりになること。そっから先はあんたの力量だからね。がんばれ』
 私のために考えてくれたんだから、がんばらなくちゃ。
 来た!
 遠目に彼を確認すると服装を軽く直して、葉っぱを……。
 乗せようと思って恥ずかしくなって止めた。
 彼が近くに来ると、本を読むふりをして通り過ぎるのを待った。
 はぁ、だめだ。がんばらなきゃ。
 試すこと数回。失敗ばかりだったけど、何とかタイミングもつかめてきた。
 次ならいける!そう思った時。
 来た。今だ。
 えいっと葉っぱを頭に乗せると、本を読むふりをする。
 ざっざっと走り寄ってくる音が聞こえて心臓が高鳴った。
「あ、あの」
 気持ちを落ち着けて、「はい?」と彼を見あげた。
「あの、髪に、落ち葉がついてますよ」
「え?や、やだ」自分でも忘れていて、慌てて葉っぱを落とす。
「あの、ありがとうございます」
 お礼。お礼しなきゃ。
「いえ、そんな、全然」照れてる?
「じゃ、俺はこれで」
 あ、彼が行ってしまう。
 ちょっと、「待って下さい」
 自分でも驚くほど自然に声が出た。
「お礼がしたいんですけど、これから時間あります?」
「いや、そんないいですよ」
「でも、お礼がしたいんです」
「じゃあ、あのお願いがあるんですが……」
「はい、何でしょう?」お願い?
「一目惚れなんです。付き合ってくれませんか?」
 え?ほんとに?返事は、もちろん―
「はい、こちらこそ」



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