よぉし、3周目突入。
秋の公園は走るのに最適だった。
暑くもなし寒くもなし、それに決まったコースがあって距離も分かりやすかった。
元々運動不足解消のために始めたんだけど、今では、何が目当てなんだか…。
あっ、あの子だ。
ベンチに座っている女の子を見つけると、ちょっとゆっくり目にそれでいて、かっこよく走り抜けた。
その間、ちらっと横目で彼女の方を何度か見る。
彼女は何日か前からずっとあそこで本を読んでいてとてもかわいかった。
はっきり言って一目惚れ……。
話し掛けたいんだけど、きっかけがなぁ。
そんなことばかり考えながら、ぐるぐると公園を回る。
もちろん彼女の前でかっこつけたり、ちらちら見たりすることは忘れなかった。
ちょうど終わろうとしていた頃、ちらっと彼女を見ると。――あっ、きっかけ。
見逃さず、彼女のところに走り寄る。
「あ、あの」
声に気づいたのか、彼女は顔をあげた。「はい?」
初めて聞く声はすごくきれいで鼓動が一段と早くなった。
「あの、髪に、落ち葉ついてますよ」
「え?や、やだ」
あせった様子で頭についた葉を手ではらう。ロングの髪の毛がかすかに揺れて輝いていた。
「あの、ありがとうございます」
彼女はこちらを見つめ、ちょっと首をかしげて微笑んだ。
「いえ、そんな、全然」
鼓動は最高潮、顔はかなり赤面してるだろう。
「じゃ、俺はこれで」
とにかく逃げ出したくて走り出そうとしていた。が、彼女の「待って下さい」の一言が俺を固まらせた。
ゆっくりと彼女の方を向く。
「お礼がしたいんですけど、これから時間あります?」
「いや、そんないいですよ」
「でも、お礼がしたいんです」
ごくっと唾を飲み込んだ。
「じゃあ、あのお願いがあるんですが……」
「はい、何でしょう?」
「一目惚れなんです。付き合ってくれませんか?」
彼女は驚いた顔をした。駄目か?
「はい。こちらこそ」
後で聞いてみると、あっちも俺のことが気になっていたらしい。
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