私はあの人に恋をしました。彼を初めて見たのは高校のグラウンド。彼はサッカー部のキャプテンでした。風になびくサラサラの髪、ボールを追う真剣な瞳、チームメイトに指示をする綺麗な声。どこをとっても完璧な、まさに理想の王子様でした。一目惚れでした。
その日から私は、毎日サッカー部の練習を見にグラウンドに通うようになります。毎日通いつめているうちに、私の想いはもう抑えきれないところまで膨らんでいました。いけない恋だとはわかっていました。私とあの人との間には恐ろしいほど高いカベがあるのです。それでもあの人に私の想いを伝えたい…。私は叶うはずのない願いを抱きはじめていました。
とうとうある日、私は決心して彼に告白する事にしました。駄目で元々、それでも私は彼にこの想いを伝えたかったのです。
サッカー部の練習が終わって彼が部室から出てきました。コッソリ後ろから彼のあとを追います。…ストーカーって言わないで。純愛です、純愛。
彼について行くこと数十分。ようやく辺りに人気がなくなりました。チャンス到来です。私は一回大きく深呼吸をしました。そしてついに、彼に声をかけることができたのです!
「ん?」
彼は振り返ります。あぁ、なんて甘いマスク。私はうっとりと彼に見とれてしまいました。おっと、いけない。今こそ私の想いの丈を伝えるとき。私はがんばって声を出しました。
「なんだ、どうしたお前?何か用か?」
あなたが好きです!!!!
「そーかそーか。ん〜?お前、可愛いな。」
そう言って彼は私の頭を撫でてくれました。なんて幸せ!!
「でも、ゴメンな。ウチ、マンションだからイヌ飼えないんだ。じゃあな。」
ガーン!!しょっく…。フラれてしまいました…。そうです、私はイヌなのです。やはり種族のカベを乗り越えることはできませんでした…。
ワオ〜ン!!!
…その日、町内には負け犬の遠吠えが空しく響きわたりました…。
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