肉まん奮闘記 作:養老



 チッ!また新入りが選ばれたのかよ。あんな奴のどこがいいってんだ。
 単に目新しいだけじゃねーか。まったく――
 おっと、すまねぇ。自己紹介が遅れちまったな。俺様の名は肉まん。これでもちったぁ名の知れたモンなんだぜ?豚まんって呼ぶ奴もいるがな。ま、アンタの好きに呼んでくれ。
 あぁ?機嫌が悪そうだって?
 まぁな。
 生意気な新入りが入って来たもんでな。確か名前は……そう、エビチリまんとかいったかな。今年から俺様の職場に入ったんだがよ。妙に女に人気がありやがる。おもしろくねぇ。
 だいたい、昔はこの職場には俺様とあんまんのじいさんの二人だけだったんだがな。ここ最近いろんな奴が入ってくるのよ。
 例えば俺様の上にいる奴がカレーまんっていうんだがよ。チャラチャラした派手なヤローでよ。見ろよ。黄色だぜ?俺様たちは白が規則だってぇのに、世の中変わっちまったねぇ。あんなもんでも世間様に通用するってんだからよ。
 で、俺様の下がピザまんの奴さ。こいつは西洋かぶれでよ。赤く染めちまいやがんの。俺様たちは紅白揃ったって、結婚式にゃ呼ばれねーっつーの!!
 ハァハァハァ……あ?あんまり興奮せずに気長に仲良くやれって?
 冗談じゃねぇ!俺様たちの仕事は長く続けらんねーんだよ!選手生命は短けーの!……そこで「なんの選手やねん!」ってツッコミ欲しかったんだがな……ま、いいや。
 専門用語で『賞味期限』っていうんだがな。刹那的な仕事なんだよ。
 おっと。客が来たみてぇだな。すまねぇ、仕事に戻らせてもらうぜ。
 ……フン。貧乏そうな客だぜ。ぜってぇ一個しか買わねぇだろうな。こいつぁ、勝負どころだぜ!負けられねぇ!
 おい!ジロジロ見てねぇでさっさと選びやがれ!どうせ一個しか買わねぇんだろ!だったらこの俺様、肉まんしかねーだろ!店員呼んで、俺様の名前を言いやがれ!!

「あのー、すいませ〜ん」
「はーい!」
「こっちのナゲットください」

 から揚げかよ!!



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