連作3:彼女 作:オンセンカメ



「なぁ、ひどいとは思わないか?」
 今、彼女を紹介してくれた友達の家に遊びにきていた。
 そして、この間のことなど全て話したのだった。
「まぁ、確かにひどいけど、お前もふるつもりだったんだろ?だったらよかったんじゃないの?変にもつれたりしなくて」
「それはそうだけど、まかりなりにも半年間付き合ってきたわけだぜ。それを、あれだけで終わらすってのは、なぁ」
「お前、まだやっぱり、あの子に気があるんじゃないの?じゃなきゃそんなに気にならないよ」
「誰が!あいつは俺のこと嫌ってるんだよ。」
「なんで、そんなこと分かるんだよ?」
「だって、最初の頃は口下手ながらも必死にしゃべってくれてたのに、今ではタバコ吸いながら、無口なんだぜ。大体、俺はタバコ嫌いなのに。それに、格好も最初の頃はよかったのに、今では厚底靴とか履いてコギャル気取りなんだぜ。大学生なのに」
「なんだよ、嫌なら嫌って言えばよかったのに」
「だって、それは個人の自由だろうが。いくら、彼氏だからってそこまで言う必要ないって」
「結局、お前は嫌われるのが怖かったんだろ?で、嫌われたくないって思ううちにだんだん考えるのに疲れてきた。そして、いつの間にか俺は嫌われてるっていう極論に行き着いたんだと思うぜ。まぁ、会うのが憂鬱に思えたのも考えるのがしんどくなってきたからだと考えればつじつまも合う」
「なんか、難しいな」
「簡単に言うと、嫌われてるっていうのはお前の被害妄想だよ。だから、彼女のことが全て悪く見えるんだ。絶対、心の中では彼女に未練が残ってると思うし」
「まさか。そんなわけないって」
「それにもっと彼女に言うべきだぜ。タバコは吸わないでくれとか。あの子なら絶対分かってくれるさ」
「そうかもな」
 俺は素っ気無く答え、天井を見上げた。
 こいつの言うことはあんまり分からなかったが、なぜか急に彼女に会いたくなった。



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