連作4:彼氏 作:オンセンカメ



「え、彼氏と別れたって!?」
 こくっと彼女は頷いた。
 今、友達の家にきている最中だった。
「どうして、また。最初はいい感じだったじゃない?」
「なんか、いっしょにいるのがしんどくて」
「へぇ、あんたが珍しいね。そんな風に思うなんて」
「必死に会話をしようとしてくれるんだけど、なかなか返せなくて。それで、いつの間にか気の重い沈黙が続いちゃうの」
 彼女はタバコを取り出して火をつけた。
「あれ?たばこ吸ってたっけ?」
「最近吸うようになったの。これ吸うと気がまぎれるから」
「もしかして、デート中も吸ってんじゃないわよね?」
「吸ってるけど・・・。だめなの?」
 友達はあきれてしまった。
「あんたね。せっかく二人でいるんだからそういう時くらい吸わなかったらいいのに」
「だって、なんかそうしないと間が持たないんだもん」
「タバコ吸うくらいなら、なんとか言葉を探しなさいよ」
「う〜ん。今度からそうする」
 友達はまたまたずっこけた。
「そうじゃないでしょうが」
「でも、彼氏とはもう別れたんだよ」
「でも、嫌いになったわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだよ。会話が続かないのは私が悪いと思ってるし。でも、彼が私と会うの嫌そうにしてたから」
「じゃまだ、あんたは彼の事、好きなわけだ」
「そうだよ」
 なんだか顔が暖かくなってきた。
「おっけー。なら、私が元の鞘に戻るように手を貸してあげよう」
「ほんと!?」
「あったり前よ!まかしといて!」
 そう言って、自分のタンスをあさり始める。
「ねぇ、あんたの彼ってどういう女の子が好きなの?」
「分かんない」
「じゃあ、こっちのイメージでいくか・・・」
 後は独り言を言いながら服を出し始めた。
「よし、じゃあこの服に着替えて」
 言われる通りにする。
「これって地味じゃない?」
「いいのいいの。イメージが『出合った頃の二人』なんだから」
 数分後
「じゃあ、私の言った通りにしたらいけると思うから、がんばれ!」
「うん、がんばる!」




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