ピーピーピー。
いきなりの携帯の着信音に跳ね起きた。
ボーとしてたらそのまま寝ていたみたいだ。
針が知らぬ間に15度ほど進んでいた。
ちなみに着信音はブザーにしてある。
実際こっちの方が他人と区別できるからだ。
手を伸ばし、携帯の着信ボタンをを押す。
「はい、もしもし?」
「こ、こんにちは」
彼女?
「どうしたの?」
「え、あ、あの。一昨日別れてって言ったばかりなんだけど、今から会えませんか?」
「今から?かまわないけど、どういう風の吹き回し?」
「え?えっと・・・。」
声が受話器から離れ後ろで話をしているようだ。
友達とでも一緒にいるのだろうか。
ぼそぼそと声が聞こえてくる。
「その、何の話もしないで別れたので・・・」
『この続きなんだっけ』と受話器の奥から聞こえてくる。
友達のため息でも聞こえてきそうだ。
「もう一度話し合いませんか?」
微妙な棒読みだった。
が、俺の答えなど最初から決まっている。
それこそ、こっちからかけようとしていたくらいなのに。
だが、もう少しからかってやりたかった。
「う〜ん。どうしようかなぁ。今日これから仕事もあるし、いい女の子も見つけたんだけどなぁ」
「え!?・・・・・」
またまた後ろの友達と話しているらしく声が遠くなった。
かなりのあせりようで『どうしよう』を連発しているように聞こえる。
さすがの友達もかなり悩んでいるらしく、なかなか声は返ってこなかった。
少しして・・・。
「分かった。それでもいいから会いましょう。待ち合わせはいつもの喫茶店で。今から1時間後に」
今度は完全に棒読みだった。
たぶん、紙か何かに書いてもらったのだろう。
口下手にも程があるだろう・・・。
「はい、分かりました。1時間後にいつもの場所で。言っとくけど、さっき言ったのは嘘だから。ばいばい」
ピッ。
電話を切った。
それにしても、彼女との会話が楽しいって感じたの久しぶりだな。
(767字)
|