お土産はピアスにしてね 作:さくら



「お土産はピアスにしてね。」(どうして一人でいる時にそんなにあっさり私のこと忘れちゃうの?)
 時々そう言うと、彼は「僕があげたピアス付けてるところ、見たことないよ。」と言う。

私の強さを証明するピアスホール。一人で何でもできるし、どんな出来事にも動じない平常心を装うために必要なもの。そんなの錯覚だけど「そういう気がする」ってとても大切。

優しくて鈍感な彼は「大ぶりで目立つの」(自立した気分になるため)とか、「ゴールドで存在感のあるやつ」(幸福な気分になるため)とか、どんなリクエストをしても必ず買ってきてくれるけど、本当はそんな物が欲しいわけじゃない。
いつも開いてる心の穴を埋めるための言葉が欲しい。
好きとか愛してるとかそういうのじゃなくて、今まで聞いたことの無いような一瞬で打ちのめされるような言葉が欲しい。

「安いやつでいいから、キラキラして、私に似合いそうなのちゃんと選んでね。」(一人の時も心で私を置いていかないで。)

心の中には寂しい子どものままの私がまだ住んでいて、そこにいなくても大丈夫って言ってくれる人をずっと待っている。
外は怖いことだらけ。だから、小さな穴をあけて、そこからおそるおそる覗いているんだ。



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