その暗闇に、耐え切れなかったのだ。
じっと待っていれば、いずれ朝が来ることは知っていた。
知識として。経験としてではない。
だから、本当に朝が来るのかどうか疑問だったし、それまでがとても長く感じられたのも確かだった。特に、私にしてみれば。
ホスにとっての1は、イオスにしてみれば2である。
イオスにとっての2は、ソウにしてみれば4であり、ソウが4と言えばヴァスは8と感じるだろう。めぐり巡って、この私にとっての1秒は、まさに永遠だった。世界を創り、管理するというのはそういう事なのだ。
世界というのは誰かのイマジネーションが1から10まで産み出すものではない。全ては初めから定められているのだ。私はそれに従って、ただ世界を形づくっていくだけ。
だから、それは孤独で、単調な作業だった。
そして……私はその暗闇に、孤独に耐える事が出来なかった。
真っ暗な大地を見つめ、照らし出す光があればいいと願った。
そこで私は思い出したのだ。この世界が織り成す、天体の構造を。
ソルはクシィを巡り、ソルをキュリア、ヴァイナ、イェス、マズル、プィスが巡り……。空を見上げれば、マズルの赤い光がぽつんと見える。だがマズルは自ら光る天体ではない。そう、その光は……。
それを知ってしまった私は、おのれを制御する事が出来なかった。
意識が、虚空に集中する。そこに私が思い描いたものが、姿を作っていく。
ソルはクシィを巡り、イェスはソルを巡る。
そのイェスを、ルナーが巡るのだ。
……。
私は自分がした事に、一瞬後悔を覚えた。
ルナーは虚空にその丸々とした姿を浮かべていた。彼方のソルの輝きを反射し、この地上を照らし出している。淡い青白い輝きに、大地の美しい輪郭が浮かび上がる。
その美しさに、私はすべてを忘れて見入っていた。
『夜』という名の、もうひとつの世界がそこに生まれた。
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