僕の彼女は不思議な力を持っていた。
悪いことをすれば百発百中で気づいたし、あんまり笑わない僕を心の底から笑わせてくれた。
眠る前には丁寧に足のマッサージをしてくれた。
それから、予知能力があった。
ぼくが破った先月のカレンダー。
彼女はその裏に大きなクリスマスツリーと僕たち二人の絵を描いた。
「うまいじゃん。」
僕はその絵がとても気に入ったから、部屋の壁の真ん中に貼ることにした。
また別の月に僕が破った先月のカレンダー。
彼女はその裏に、海と水着の僕たちを描いた。
「君、絵が上手いよね。」
僕はその絵がとても気に入ったから、前の絵の隣に張ることにした。
絵の中の彼女は実際よりも髪が長くて、水玉のビキニを着ていた。
僕のお腹は、ちょっとたるんでいた。
ぼくたちは、その後の月日を仲良く過ごし、気がついたら絵の中のことは全部叶えられていた。
彼女の髪の毛が大分のびて、僕のお腹もそろそろ真剣に引き締めなくちゃいけないと思った頃、彼女が突然、いなくなったんだ。
真っ赤な高級車に轢かれてあっけなく僕を一人残して逝ってしまった。
彼女がいなくなった次の月、僕はカレンダーを破った。
もう、彼女が絵を描くことはない。
破りたてのカレンダーの裏には、真っ赤な車に乗った彼女の絵が描いてあった。
いつの間に書いたんだろう。
その絵の中に、僕はいない。
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