再会 作:F−MON



「実はね……」ルヴィアが、なにか言っている。
「はあ?」周りがうるさくて、聞こえない。
 あたしはテーブルにあごをのせたまま、空のジョッキをかき分けた。
「ごめん、なんだって?」
 ルヴィアが、真っ赤な顔をぐいとこちらに寄せた。目が据わっている。
「結婚したのっ!!」
 今度は聞こえたが、意味がわかるまで、しばらくかかった。
「へえ」わかったって、別に楽しくもない。
「そお。…………で、相手は何?」
「何とは何よ、決まってんじゃない」
 ふん、と彼女が鼻を鳴らした。ムカついたので、その先は聞かなかった。
「ちょっとお! ゴブリ酒おかわり、まだ!?」
「その、彼なんだけどね……」聞いてないのに、話の続きが始まってしまった。
「…………なのよ。でも、すっごく優しくって……」
 店のおやじが、ジョッキを置いていった。それを一気にがぶ飲みして、あたしは言った。
「あのねえ……あんたが『仲直りしたい』って言うから来てやったのよ。のろけ聞かされに来たんじゃないのっ!!」
 立ち上がった拍子に、頭が何かにぶつかった。すると店が急に静かになって、ルヴィアだけが、手を叩いて笑い転げ始めた。
「なあにが、おかしいのよっ!!」
 あたしはキレて、テーブルを蹴飛ばした。一緒にルヴィアも蹴飛ばしたような気がしたが、よくわからなかった。また頭がぶつかって、それを……
天井を、突き破っていたからだ。
 彼女が、体当たりをかましてきた。あたしたちは店をぶち壊し、取っ組み合ったまま、そばの湖へと転げ落ちていった。
 ……また、やってしまった。
 ドラゴンが人に化身して暮らすというのは、本当に窮屈なものだ。おまけに結婚するなんて、ルヴィアの気が知れない。



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