ある晩、学校の帰りに私は空を見上げていた。
辺りは田んぼだらけで私の住んでいるところが田舎だということを実感させた。
季節は秋。
が、その割に時間も遅いせいもあって寒かった。
ただその分、星がきれいに見えた。
その中で一番美しく青白く輝いている星に目がいった。
いつか親に教えてもらった星―シリウス。
その悲しいまでに青白い輝きを見て少し涙が出た。
そして、昨日の夜のやりとりを思い出す。
それは仲のいい女友達からの電話だった。
いきなりの電話に心臓が高鳴っているのが分かった。
私はその友達に密かに恋心を抱いていたのだ。
最初の間は他愛もない話だったが、相手の声のトーンがいきなり変わったのに気づいた。
そして、思い出される悪夢のような言葉が。
『あのね、これ、あなただから言うんだけど……』
ここで少し間が空いた。
『私ね。しんじ君が好きみたいなの。なんかさ―……』
そこから先の話は覚えていない。
というか聞いていなかった。
しんじというのは私の友達で高校で知り合った仲だった。
ちなみに私と女友達は中学校時代からの付き合いであった。
しんじと私が一緒に帰っているときに女友達が話し掛けてきて、それでしんじと女友達は互いに簡単な自己紹介をした。
それから、ちょくちょく女友達がしんじとも話すようになり、帰りも3人で帰ることが多くなった。
そんな関係が始まって1ヶ月くらいだった。
それが昨日の電話。
私はどうしたらいいだろう?
誰にとなく問いかけた。
無論、答えは返ってこない。
私の恋心は?
どこに向ければいい?
告白する前に楔を打ち込まれたような気分。
叶わないと分かっていてなぜ告白できようか?
そんなことするやつはばかだ。
でも、私は彼女への恋心を捨てられそうになかった。
行き場のない恋心。
「私にどうしろと?」
誰も答えてくれないのになぜか声に出てしまった。
ただ一つシリウスの青白い光だけが全てを見ていた。
(777字)
|