怪盗キット 作:養老



 私のコレクションも随分と増えた。部屋を見渡せば、数多くの品。壮観だ。これだから収集はやめられない。私の集めた戦利品たちは、どこか誇らしげだ。
 今回のコレクションを手に入れるには、少々時間が必要だった。また、いくつかのパーツの集まりが一つの完成形となるので、すべてを集めなければならなかった。しかし、ついに最後のパーツを手に入れた。
 パチッ! という小気味良い音が耳に心地いい。間もなく完成する……。

 ところで、いきなり脈略のない話で恐縮だが、カタカナの表現というのは時に偉大だ。同じ意味を表す表現でも、漢字とカタカナでは随分違う。
 私はフィギュアコレクター。これを漢字で表すと『人形収集家』
 この表現だと、どこかオドロオドロしい人形を集めている人物と想像してしまうのは、私の偏見だろうか。私の彼女がそんな人だったらヤダな。ちなみに蛇足だが、私に彼女はいない。

 おっと、いかん。話が逸れた。私のコレクションの話をしていたのだった。
 完成間近の今回の品。年甲斐もなくドキドキと胸が高鳴る。まるで恋人と待ち合わせをしている時のような心境だ。そして、またまた蛇足だが、私に彼女はずっといない。

 ……いかんな、どうも。集中しなければ。
 少し深呼吸でもするか。まずは伸びでもして……。
 ――ゴキッ。
 ……。
 ……やっぱりやめておこう。最後の仕上げを急ぐことにする。

 私は残り一つとなったパーツを組み上げた。
 ――パチッ。
 完成した。素晴らしい。
 費やした時間を振り返ってみる。今回のコレクションは、今、流行の本に付いている物で、毎号購読してパーツを集め組み立ててゆくタイプの物だった。
 出来上がった人形、もとい、フィギュアは、本来は高校生だが、子供の姿となって難事件を解決してゆくという、某アニメに出てくるかっこいい怪盗。


 私は達成感に包まれながら、出来上がったコレクションを一番目立つところにそっと置いた。



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