非日常 作:尾瀬駆



 今日、久しぶりに遠出をしてみた。
 少し受験勉強に嫌気がさしたのかもしれない。
 ただどこかに行きたかった。
 バスを乗り継ぎ、どこかの町営の公園に着いた。
 公園というにはあまりにも広かった。
 言うなれば簡易レジャー施設かな。
 広場があって、アスレチックがあって、名産品の売り場まであった。
 売り場を適当に見た後、足はいつの間にか公園内の池に向かっていた。
 何かに引きつけられるように。
 その池には遠くから見る限り、鴨やアヒルなどがいた。
 その他にもいたが、名前は分からない。
 ただ、黒いやつと茶色のやつ。
 それだけしか分からなかった。
 段々、近づいていって池の中を見ると鯉がうじゃうじゃいた。
 赤いのや黄色、白や黒。
 錦鯉みたいに斑点のあるものもいた。
 池のへりに近寄ると鴨や鯉が集まってきた。
 えさを持っているとでも思ったのだろうか。
 その光景をただじっと見つめた。
 その内、アヒルがぐわぁぐわぁぐわぁっと鳴き始めた。
 いきなりの声に驚いて池に落ちそうになったが何とか堪えた。
 少し離れようと思って後を向くとあてつけのように
 「鯉・水鳥の餌」の自動販売機があった。
 値段は100円。高くはない。
 だから、買ってやろうと思った。
 財布から100円玉を出し、自販機に入れるとガタンと餌が出てきた。
 それはもなか状になっていて、もなかの生地の中に餌が入っていた。
 箱も食べられるように配慮してあるのだろう。
 餌を与え始めると鯉より鳥の方が早かった。
 長い首を伸ばしてさっと取ってしまう。
 鯉も負けじと群がってきて少し気持ち悪いような気がした。
 餌を与え終わると元来た道を戻り始めた。
 空はすでにオレンジがかってきていた。
 ここまでかかった時間を考えるとそろそろ帰らないとやばいだろう。
 そうして、バスに乗り込んだ。
 これが日常であればいいのに。
 そしたら、いくらか人生楽しくなるだろう。
 そう願いつつ、本当の日常の方へ帰っていった。



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